この先は君だけだと言われましても

能登原あめ

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「そこまで節操なしじゃない。何でそう考えたかわからなくもないけど」

 一瞬ムッとした様子を見せたけど、林は指をゆっくりと抜き差しし始める。
 なみの眉間にシワがよったのを見て、脚の間に頭を寄せた。

「はやし!」

 何をしようとしているかわかって止めようとしたけれど、林がクリトリスを口に含むほうが早かった。
 熱さと初めての経験に甘くしびれ、足に力が入る。
 指を動かされると、どろりと愛液がしたたるのがわかった。

「素直だね」

 馬鹿にしてるわけでもなく、ただ見たことをそのまま伝えている感じ。

「可愛い、こんなに楽しいの初めてかも」

 林はそう言ってから敏感になっているクリトリスに舌を這わせる。

「んっ、はや、し……っ、もう、いいから」
「名前で呼んでくれたら、やめるか考えてもいい」
「名前……?」

 そんなのわかってる。
 なのに内側の指が同じところばかり撫でてすぐに頭が真っ白になって言葉にならない。

「五年のつき合いがあるのにまさか知らない? 入社の時に何度も挨拶させられたのに」
「ん、知ってる……ッはやし、あっ、指、止めてよッ」

 答えようとすると指と舌が同時に動く。
 熱がたまって、すぐにもイきそう。

「なみちゃんいって」

 口を開いても漏れるのは吐息ばかりで、答えるより先にあっけなくイった。

「あ、はぁ、はぁ、はぁ……はやし、ひどい」
「ひどいのは俺の名前を覚えてないなみちゃんのほうだよ」

「覚えてる! 覚えているよ! はやし、さとる」

 みんな『はやしさとし』だと思っているし、先輩たちがわざとそう呼んでいたから、新人たちもそう思い込んでいる。
 林はにっこり笑って私を見下ろした。

「正解、でも時間切れだからもう一度ね」
「待って、だって、当てたのに! あッ、はやし!」

 いつの間にか増やされた指が、器用に動く。
 外側と違ってじわじわと快楽がたまっていって――もっと欲しくなる。
 こんな感じは初めてで、早く終わらせて欲しくなった。

「指は、もういいから……ッ、お願い」

 なみだけが何も着ていなくて、林は上半身しか脱いでいない。彼の肩を押して身体を起こすとベルトに手を伸ばした。
 室内にカチャカチャとベルトを外す音とファスナーを下ろす音が響く。
 
 それから下着の中で窮屈そうにしているペニスを表に出した。
 林はじっと見ているだけ。
 大きく反り返ったソレを両手でつかんだ。

 熱くて硬くて血管がはっきり浮かんでいる。
 ごくりと唾を飲んでしまったけど、先端にキスしてから竿に舌をのばす。

「なみちゃん、無理しなくていいよ」

 そう言われたけど目線だけ上に向けて嫌だと思ってないのを確認してから思い切って大きく咥えた。

「…………」

 林の気持ちよさそうな低いため息に気をよくして、咥えながらしごく。
 途中林の手が優しく髪を撫でた後、髪をつかんできたから視線だけ上げた。

「やばい」

 ペニスが膨らんだのを感じると同時に、林にぐっと後ろに押された。
 口から抜けた瞬間に白い液体が飛んでくるのが見えてぎゅっと目をつぶる。

「……ッ、ごめん! 拭くから目をつぶってて」

 頬と唇についた精液をティッシュで拭う。

「林もひさしぶりだった?」
「…………そうかもしれない。いつもはこんなに早くない。なみちゃんが上手いのも腹立つ」
「そう……?」
 
 女慣れした林が言い訳しているのがちょっとおかしくて、でもセンシティブなことだから。

「お互いひさしぶりだから身体が敏感になってたのかな。あのね、林……気持ちよかったよ。シャワー、先に浴びる?」

 その先も今まで通りの同僚として過ごすならこれ以上先に進まないほうがいいのかも。

「まだ終わらない。いや、こんな中途半端に終われない」
「でも出しちゃったし」
「もう元気だから」
「ほんとだ」

 林のペニスは何事もなかったみたいに元気に上向いていた。

「えっと、絶倫の人?」
「そうじゃないけど、早漏じゃないことはわかってほしい」
「うん? 早くてもすぐ休めていいと思うけど……」
「なみちゃんの元カレ、ヘタクソだったんだな」

 薄々そうかもしれないって思い始めていた。

「林が上手すぎるのかも」
「最後までそう思ってもらいたいな」

 林がゴムのパッケージを開けて、スルッと片手で装着した。
 肩を押されて後ろに倒れたなみの脚を抱えてペニスを押し当てる。
 流れるようにスムーズな動き。

「いい?」
「うん」

 限界まで拡げられるような圧迫感を感じながら林のペニスを受け入れる。
 少し苦しい。

 前戯がていねいだったのも、なみがひさしぶりだったからという理由以外に、大きいのもあるかもしれない。

「……あっ」

 ずりゅ、とさっきまで指で触れていたところに当たって声が漏れた。

「痛い?」
「……大丈夫。はやし、おっきい……こんなの持ってたんだ」

 顔もよくて性格も悪くない。女癖が悪いけど、こんなふうに抱いてくれたらハマる気持ちもわかるかも。

「全部挿れていい?」
「まだ入ってないの? 入るなら」
「じゃあ、遠慮なく」
「……あっ」

 誰も触れたことのない奥深くまで存在している。少し怖くなった。

「まだ、動かないで。私の内臓大丈夫かな」

 林の肩が震えて、震動が体内にまで伝わる。

「笑ってるの? 本気なのに」
「うん、ごめん。なみちゃんの発言も可愛くて……本当に可愛い。馴染むまでキスしてよう」
「……んっ」

 軽く唇をとがらせて、ついばむキスに心が落ち着いてきた。
 林って本当に女の子の扱いが上手だと思う。

「少し動いてみていい?」
「うん」

 すきまなんてないくらいピッタリだったのに、揺らすような動きもなめらかで、濡れやすいのも悪くないと思えた。
 とはいえ声を抑えている今、水音が響いて恥ずかしい。

「なみちゃん、指じゃ届かないところでも気持ちよくなろうか」
「イヤ。必要ないよ。大きい人とすることなんてこの先ないと思う」

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