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31 ナイトマーケット ※

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 湖の山小屋でのんびり過ごした後、私たちは屋敷に戻りました。
 そわそわしてしまうのは、夏の陽気のせいでしょうか。

「準備はいい?」
「はい、ブレンダン様」

 今夜は領地で一番栄えている街に向かいました。
 日も長く過ごしやすいので、夜遅くまでお店が開いています。

 人も多く、お酒を飲んだり食事をしたり、まるでお祭りのように賑やかでした。

 最近は移民の方々のお店が増えています。
 新しく商業組合の会長さんが変わってから、色々なことに取り組んでいるようでした。

 夕方になると新しい屋台が並び、見たことのない色や形の食べ物や飲み物、変わった置き物や装身具、とても興味深くて刺激的で面白いです。

 自警団の見回りもありますから、大きな揉め事も起こりませんし、日付けが変わる頃まで街は明るいままでした。

 私たちも領民に紛れ込んで楽しむことにしたのです。
 昼間の街とは違う様子に興奮してしまいました。

「あれは一体なんでしょう? 半分ずつに分けて食べてみませんか?」
「いいね」

 興味を持ったのは、細かな具材を入れて小さく丸く焼かれたもの。
 異国の言葉で書かれていて名前がわかりませんが、香ばしく焼かれてブラウンソースのようなものがかかっています。

「飲み物は……あれは飲み物でしょうか?」
「うん? 多分。試してみる?」
「はい!」

 近づいてみたら、南国の果物の中身をくり抜いて器にしたフルーツジュースでした。
 ゴツゴツした見た目で、直接飲むことはできませんのであしを乾燥させて管状にしたもので吸うのだそうです。
 ブレンダン様が持ってくださいました。
 
 他にもお米の上に変わった調味料で味付けしたお肉を焼いてのせたものだとか、ポテトを螺旋状にむいて串に刺して揚げたものだとか、たくさんあって一晩ではすべて楽しむことはできません。

「これは想像したより柔らかいな。中に魚貝が入っているよ。アリソン、熱いから気をつけて食べたほうがいい」

 ブレンダン様が先にひとつ口にしました。よくわからない食べ物なので味見してくださったのです。
 過保護だと思うのですが、他国で涙が出るほど辛かったり、塩っぱかったりする料理を食べたのだとか。
 私がフォークで半分に切ると、とろりとして頼りないかたちになりました。
 すくって口に運びます。

「グラタンのような食感ですね。ソースが異国風で、……おいしいです。丸く焼けるってすごいですね」
「あぁ、くるっとひっくり返すところは見ていておもしろい。このサイズも摘みやすくていいね」

 ブレンダン様も楽しそうに笑っています。
 南国の果物のジュースも甘くてびっくりしました。
 美味しいのですが、強く吸わないといけませんし、想像と違って舌がピリピリしましたので不思議と笑ってしまいます。

 とにかく新しい経験が楽しくてたまりません。

 フルーツに飴がかかっているものや、ごく薄く焼いたパンケーキにクリームやチョコレート、または果物を挟んで巻いたものもありました。

「一日じゃ回りきれないな。また来なくてはいけないね」
「はい、また来たいです。……次は夕食抜きのほうがいいかもしれません」
「全制覇するには、そのほうがいいね」

 ブレンダン様が笑って言います。
 本気でしょうか。
 炊いたお米に具材を乗せて黒いもので包んだものは、少し奇抜で手が出しにくいです。
 
 買っていく人々もちらほらいるので、食べ物だとはわかっているのですが……。
 興味はあります、でも。

「アリソンが苦手なものは全部私が責任を持つよ」
「ブレンダン様は苦手なものはないのですか?」
「ないね」

 元々軍隊に所属していたからでしょうか。なんでもたくさん食べますし、見ていて気持ちがいいくらいです。

「だからね、遠慮せずに頼んだらいい」
「では次の時に。今日はもうお腹いっぱいですもの」
 
 私たちは喧騒の中、ナイトマーケットを後にしました。






 部屋に戻っても、気分は高揚したままです。
 私たちの住む領地も、少しずつ変わっているのだと実感しました。
 どんどん住みやすくなっているのだと思います。

 ブレンダン様は領民の話を気さくに聞く方ですし、良いと考えたら柔軟に取り入れますから。
 
「アリソン、貸してごらん」

 湯浴みを終えて鏡台の前で髪の手入れをしていましたら、ブレンダン様に浴布を奪われました。
 最近では私よりも手早くていねいに髪を扱うように思います。

「ありがとう、ブレンダン様」
「私の楽しみでもあるからね」

 その間に私が肌の手入れをしていますと、髪にオイルを塗り終えたブレンダン様がうなじに口づけを落としました。

 私が平静を装っていますと、髪を耳にかけて耳たぶを食みます。
 鏡越しを視線が合いました。

「ブレンダン様、あと少しで終わりますから」
「好きに触れているから、ゆっくりでいいよ」
「でも……んっ」

 息がかかってくすぐったいですし、体が震えてしまいます。

「私も手伝おうか」

 ブレンダン様がオイルを手にたっぷりとりました。両手で伸ばして私の腕に塗り込みます。
 大きな手のひらですべらせて、伸ばしました。
 普段の私のやり方を覚えてしまったみたいで、押したり撫でたりなかなか上手です。

 だから油断してしまいました。
 ガウンの下にするりと入り込み、胸にも塗り込みます。

「あ……っ、私が」
「たまには私にまかせて」

 オイルのせいで、つるりとすべりいつもと違う感覚に胸のとがりがブレンダン様の指にひっかかります。
 気づいた夫が時々指の腹でつまんで刺激するので、声を抑えるのが難しくなりました。

「ブレンダン様、……もう、大丈夫ですから」

 お腹にもオイルを塗り込まれ、指先が下へと向かいます。
 ガウンの下は何も身につけていませんから、なんの障害もなく脚のあわいに触れました。

 思わず脚を閉じてしまい、ブレンダン様は微かに笑い声を漏らして――。

「アリソン、もっと濡らしたい」

 もう片手でそっと腿を押し開いて手を引き抜き、私はくるりと向きを変えることとなりました。
 鏡台に背を預け、ブレンダン様が目の前にひざまずきます。

 ゆっくりとガウンの裾を開いて、脚の間に顔を寄せました。
 魅入られたように、私は動くことも声を上げることもできません。

「楽にしていて」

 下から見上げられて一気に鼓動が速くなります。
 はっとして声を上げました。

「……っ、ブレンダン様……!」

 脚の間に潤みを感じて恥ずかしいのに、閉じることはできません。
 
「まだ何もしていないのに……あなたは本当にきれいで可愛い」
「何もって……」

 さっきから私をあおるように触れていましたのに。
 体がカッと赤くなるのを感じました。

「まだまだ、足りないよ」

 潤みを広げるように指で触れ、ブレンダン様の舌が粒をとらえました。

「あ……っ」

 こんなふうにひざまずいて触れられることはありませんでしたから、恥ずかしくてたまりません。
 なのに私の体は悦んで、夫の指を濡らしてしまいます。

 いつのまにか、私はブレンダン様の肩に脚をかけていました。
 下そうにも脚が震えて、椅子をぎゅっと握って力を入れるのですが、夫はますます翻弄してくるのです。

「ブレンダン、さまっ」

 ちらりと視線だけ上げて、指を良いところにあてながら粒に強く吸いつきました。

「あぁ……っ」

 目の前が白くかすみ、ふわりと浮くような感覚をブレンダン様が引き伸ばします。
 それも震える体が椅子から落ちないように腰を支えながら。

「アリソン、ベッドに行こう」
 
 立ち上がったブレンダン様が私を抱き上げて歩き出しました。
 力の抜けた私は、夫が上に乗り上げて来るのをじっと見つめます。
 すごく楽しそうで……。

「ブレンダン様、いじわるしないで」
「しないよ。一緒に気持ち良くなるだけだ」

 本当でしょうか。
 そう言う前にブレンダン様の昂まりが、私の中へ深く――。

「んっ、あ……っ」

 内壁がうねり、昂まりを締めつけ、私の体は再び頂きへと駆け昇りました。
 
「アリソン……ッ」

 少し苦しげな顔でブレンダン様が息を吐きます。
 それから、ゆっくり腰を引き、浅いところばかり攻め始めました。

「ん、どう、して……ブレンダン、さま?」
「すぐに終わりたくない。もう少し、一緒に楽しんでからにしよう」

 これでは私ばかり気持ちがいいのではないでしょうか。
 ブレンダン様は私に考えることも話すこともできないくらい巧みに揺さぶりました。

「アリソン、愛しているよ」

 そうして一度目の吐精の後、私は抱きしめられたまま目を閉じてしまったのです。



 






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 お読みくださりありがとうございます。
 モデルにした国でのナイトマーケットは、アジア料理(身近な屋台メニュー)が多いと聞いて取り入れてみました。
 
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