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14 クリスマス①

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* クリスマス編6話+おまけ1話です。






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 雪が深く積もって、ぐっと気温が落ちた頃。
 屋敷の者達だけでなく、領民達もそわそわしているように感じました。
 クリスマスまで二ヶ月をきり、商店街が賑わいを見せます。
 ここへ来た時もそうでしたが、寒くて長い冬をみな上手に過ごしていました。

 私達も屋敷に飾るモミの木を選びに使用人達と森の中へ入りました。
 ブレンダン様が木を切る姿はとても素敵で、一緒に行くことにしてよかったと思います。

 街の商会を営む者達も商店街を目立たせるモミの木を選んで切り、好みに飾り付けをするようでした。だから街が賑やかに感じたのかもしれません。
 子供達がキラキラした目でモミの木を見上げるように、大人達にとっても特別な季節なのだと心がわき立つのを感じます。

 それから、クリスマス当日に食べるプラムプディング――ブランデーに長期間漬けた干した果物やナッツ、香辛料をたっぷり加えたケーキ生地を数時間蒸して、天井に吊るしてその日まで熟成させるのでした。

 作るのに手間がかかるので屋敷にはいくつもそうしてぶら下がっているのですが、街のパン屋やケーキ屋にもそれぞれクリスマスのための特別なプディングが売られています。

 クリスマスまで特別な屋台が集まり始め、アップルパイやブルーベリーパイも人気のようでした。折を見てブレンダン様と見て回ろうと考えています。
 毎日が充実して楽しくて仕方ありません。


「アリソン、今年はこれをあなたと楽しもうと思う」

 クリスマスの一ヶ月前。
 人形のための家のような造りで、それよりももっと細かく区切られており、一つずつ小さな包みが入っています。

 ブレンダン様が言うには、一日一つ小さなプレゼントを日付けの通りに開けて、クリスマスまで楽しく待つというものでした。
 よく見ると、数字が彫られています。

「とても素敵ですね」
「まず一つ開けてごらん」

 大きさや包みが異なるのですが、一番端の小さな包みを手に取りました。中にはころんとしたキャラメルが三つ。
 高価なものが入っているのだとしたら、こちらも気になってしまいますが、棚の一つ一つにお菓子が入っているのなら気兼ねなく受け取れて、毎回わくわくしてしまいそうです。

 さっそく一つをブレンダン様の口元へ。すると、指ごとぱくっと食べられてしまいました。
 びっくりする私の口の中に、ブレンダン様が包みを開けてキャラメルを押し込みます。
 バターと塩のきいたそれの甘さを味わって、しばらく黙っていますと、

「残りはアリソンが食べて」

「……はい、あとでいただきます。おいしいですね。飾っても可愛いですし、とても嬉しいです。楽しみが増えました……けど」
「けど?」
「……早く開けたくなってしまいそうです」

 ほかに何が入っているのか気になって、手にとってしまいそうですから。
 そう言うと、ブレンダン様が笑って私のこめかみに口づけを落とします。

「いいよ。もし開けてしまっても、日数に合うように私が補充すればいいから」
「……我慢します」

 もし今私が全て開けてしまっても、ブレンダン様は怒らないように思いました。
 彼はわずかに眉を上げてから笑みを深めます。

「今、全部開けたっていいのに」
「ブレンダン様!」

 まるで私の心を読んだかのように言うので。
 思わず頬を膨らめそうになって、彼の背中に腕を回しました。

「ありがとうございます。嬉しい」

 ブレンダン様も嬉しそうに抱きしめてくださいます。
 私もクリスマスに渡すプレゼントに、もっともっと力を入れようと思いました。

 ブレンダン様は私が何かを作っていると気づいているようですが、なるべく見つからないように準備しています。
 寒さが厳しいので、この地独特の毛糸の編み方があり、動物をモチーフにするのが定番なのだと聞きました。
 お義母様からその家それぞれのシンボルがあるそうなので教えてもらうこととなったのです。

 コーツ伯爵家は、犬鷲いぬわしで、熊や鯨などという大きな動物の場合もあるらしく、よかったかもしれません。
 編み込むというよりも編み包むようにしっかり目の詰まったセーターができそうです。
 これを外套の下に着たらかなり暖かくなると思いました。

 あと少しです。
 ブレンダン様が着て下さるところを想像すると、編み目を数え間違いそうになっても、目が疲れて何度も瞬きするようになっても、挫けず頑張れるのでした。







 四日ほど続けて甘いお菓子でしたが、五日目に茶葉が、またお菓子が数日続いた後リボンが入っていました。
 ずっとお菓子でも私は嬉しく思ったでしょう。でもブレンダン様は飽きさせないように考えてくれたみたいです。

「今日はそのリボンをつけてほしい」

 髪を結う時にリボンを髪に編み込んでもらうと、ブレンダン様は嬉しそうに髪にも口づけを落としました。

「あなたは何を贈っても似合うね」
「……ブレンダン様が選んでくださるものが素敵だからです」

 ブレンダン様がたくさん褒めて下さるので嬉しいですが、まだ完全に慣れなくて少し恥ずかしいです。

「アリソン自身が素敵だからね」
「そう思っていただけるのは、すべてブレンダン様のおかげです」

 とうとうブレンダン様が笑い出しました。

「このままでは一日中お互いを褒め合うことになりそうだ。さあ、出かけよう」

 
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