上 下
9 / 21

8   クラウス 2

しおりを挟む




 今日は二人で過ごす五回目のデート。
 街歩き以外に美術館や音楽会、演劇も観た。

 それから、夜はこっちの文字を習って、簡単な絵本ならだいたいわかるようになってきた。
 クラウスは教師なだけあって、教え上手。
 
 昼間外で動き回って、夜に言葉の勉強したら疲れてぐっすり眠る。
 同じベッドで眠っているけど、触れ合うこともなく。
 あれ?
 セックスレスの夫婦みたいになってる?
 
 居心地がいいからってこれじゃダメか。
 だって、私からOK出さないといけないんだよね。

 そんなわけで、ちょっと雰囲気が必要かなと思うんだけど、そんなイベントはなく。

 今回は、学校運営のための子供たちによるコンサートを見学して、その後行われるクッキーの販売を手伝うことになった。
 ちゃんと先生しているところをみるのは初めて。
 子どもたちに好かれているのは街を歩けば明るく声をかけられることでわかっていたけど。
 同僚の先生たちとイチャ……じゃなくて和気あいあいとしてる姿がまぶしい。
 こういうのが見たかった。
 和む~。

「スズ、ありがとうございます。こっちはもう大丈夫なので、休憩にしましょう」

 クラウスに促されて私は控え室へと向かう。
 
「本当にたくさんお客さん来るんだね。試食のクッキー、私も食べたの。変わってるけどおいしかった」
「本当ですか! 私が作ったんです……なので売れないかと思ったのですが、スズが立ったらあっという間でした」
「そうなの? 役に立ててよかった」

 大袈裟だけど、褒められて悪い気はしない。

「いつも売れ残るのですが。……おいしかったとは……よかったです……ふふっ……」
「……なんか、甘塩っぱくて、スパイシーで、このあたりの主流なのかな?」
「ああ! 私のオリジナルです! 今年はガラムマサラやターメリック、クミンにコリアンダーを入れてスパイシーな辛口のクッキーを目指しました」

 カレーだったら正解だったかも、と思って私は脱力する。
 得意げに言うクラウスはかわいいけど、料理下手な人あるあるだな。
 基本押さえないでアレンジしちゃうんだよね、基本大事!
 
「クラウスが作ったら普通のクッキーだっておいしいと思うけど」
「うーん……。配合通りに作るのってつまらないんですよね……みんなにも言われますけど」

 言うと思った。
 つまらないんじゃなくて美味しく作れるように考えられてるのにな。

「ちなみに……具合が悪い時は何食べてるの?」
「食べません。食べないのが一番早く治るんです。動物もそうしてますから」

 そう言う答えが来るとは思わなかったけど、栄養価のいい、相性の悪い食材をかけ合わせるとかなくてよかった。
 
「そっか……具合が悪くならないのが一番だよね」

 クッキーは私が売った時のまま残ってしまったから、みんなで痛み分け……で分けて持ち帰った。
 
「手、繋いで帰ろう?」

 クラウスの指と私の指を絡ませて家まで歩く。

「今年はクッキーが無くなるまで一か月くらい毎朝食べないですみます。ありがとうございます、スズ」
「それは……よかったね。これ、多分ぶどう酒と一緒に食べたら美味しいと思う。どうかな?」
「スズがそういうならそうしましょう」






 今夜は勉強はしないで二人でクッキーをつまみにお酒をいただく。

「スズ……今日も私と過ごして下さってありがとうございます。幸せです」
「私もクラウスのおかげで文字が読めるようになってきたし、この世界のこともたくさん教えてもらって、毎日が楽しくなってきたよ……ありがとう」
「よかった……スズのことが好きです」

 あ、ここで言わなきゃ。

「私も、クラウスのこと、好き」
「スズ……」

 思わず立ち上がったクラウスの固く握り締める拳を両手で包んだ。

「あの、ね……今夜はベッドで私に、優しく触れてくれる?」
「スズ、いいんですね……?」
「あの……一度だけだからね?」
「わかりました。抱きしめていいですか?」

 頷いた私に回りこんできてそっと包む。

「大好きです……キスしても?」
「うん」

 私の頬に手を添えて唇を寄せる。

「ちゅっ」

 初めにやることやっちゃったけど、私たちの初キスだ。

「柔らかいですね。もう一度しても?」

 あれ、もしかして、やっちゃった?
 
「いちいち聞かなくてもいいよ。嫌だったら言うから、ちゃんと止めてね?」
「……そういうわけにはいきません。反省しているので……二度目のキス、しますね」

 唇が触れた。

「舌、入れていいですか?」
「~~っ!」

 私から舌を突っ込んでやる。
 絶対に私が恥ずかしいとわかっていてやってる!

「……積極的ですね。嬉しいです。脱がせてもいいですか?」
「自分で脱ぐから、クラウスも自分で脱いでよ!」

 ちょっとキレ気味に私は言った。

「スズ……そんな様子もかわいいです。あなたの身体に触れさせてください」
「どうぞ!」

 こんな羞恥プレイは求めてない!

「スズ。濡れてますね……舐めていいですか?」
「いや!」

 私はクラウスに馬乗りになって、剛直を握った。
 
 早く受け入れてしまおう。
 
「クラウス……我慢してね」

 蜜口に当てて少しずつ受け入れていく。
 ちょっときついけど、彼とのやりとりはそれなりに刺激になっていたようで。
 認めたくないけど。

「嬉しいです。気持ち、いいですね……」
「うん。私も……」
「……動いて、いいですか……?」
「もうちょっと、待って……馴染むまで」

 苦しそうな表情を見せて耐える様子に、愛おしい気持ちが湧いてきた。
 単純なのは承知だ。

 腰をゆっくりと上下させて彼のすべてを受け入れる。
 私の中でピクンと震えた。
 身体を逸らして気持ちいいところに当たるように調整すると、ぬちゃぬちゃと音がしてもっと濡れてくる。
 私は息を細く吐いた。

「動いていいよ……だけど、止めてって言ったら止めてね。かわりに、イイ時はイイって、言うように、するから」

 ものすごく恥ずかしいけど。
 赤くなった私に柔らかな笑みを見せる。

「先に……口づけだけお願いします。スズ……あなたがかわいくて」

 私は身体を倒して唇を重ねた。
 甘い雰囲気にきゅんとする。

「動きますね……」

 私の中を味わうように腰を押しつけられて、私も前後に揺らす。

「んっ……あっ……」
「あなたの声は甘い、ですね……」
「くら、うす、いいっ……」

 欲を孕んだ瞳に見つめられて身体が熱くなる。

「気持ち、いい」
「あなたの中で、イかせてください」
「んあぁぁっ……」

 彼に下から打ちつけて目の前が白む。
 険しい顔をした彼が、私の中で欲望を吐き出した。




 




「あの時はあなたに本当にひどいことをしてごめんなさい。今なら違いがすごくわかります……抱きしめても?」

 震える手をのばすクラウスに私は身を寄せた。
 心から反省してる彼の頭を抱きしめる。
 もともと相性はよかったはず。
 女神様がそう言ってたから間違いない。

「これから積み重ねていこうよ、クラウス。そういうところ、好きだよ」



 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...