8 / 21
7 スズ 2 &キーラン
しおりを挟むこの世界に来て、本当に一人の夜を迎えた。
嬉しいはずなのに心細い。
疲れてるはずなのに眠くない。
覗かなきゃいいのに窓の外は真っ暗闇で。
無駄に大きいベッドに一人横になる。
やることがない。
とにかく、ここで過ごすのに暇つぶしが必要と思う。
こっちの文字の勉強して本を読んでみたいかも。
そんなこと考えたらわくわくしてきた。
楽しい気分になってきたし、今夜はなんとか眠れる……かな。
灯りを消すために立ち上がってランプに手を伸ばした。
何かの木の実から絞られたオイルは近づくとほんのり甘い匂いがする。
贅沢な使い方なんだろうなぁと思いながら消した。
でもって振り返ろうとしたらぎゅっと抱きしめられて心臓が跳ねた。
声が出ない。
だけど、こんな登場の仕方で、細身の筋肉質な身体は彼しか心当たりがない。
「…………キーラン?」
いまだ心臓はばくばくといっているけど、それよりも心細かった私のもとにやってきてくれたことが嬉しくて。
腰に回された腕に手を重ねた。
「……勝手に来た俺を怒らないのか?」
「そりゃ! ものすごくびっくりした!……声が出なかったし」
だけど嬉しかったのもあって。
「何もしないで朝まで添い寝してくれたら今回のこと……怒らない」
「……わかった。ありがとう」
下着姿になったキーランが私とベッドに潜り込む。
「実は、ちょっと寂しかった」
「それなら……リボンを用意するから、寂しい時はこの部屋の窓に見えるように結んでくれるか? それをみて俺が行くから」
「ほんと? ありがとう……仕事で忙しい時は無理しないでね」
血塗れでやって来られても困るから。
ふぅ、とキーランがため息をついて、私をきつく抱きしめた。
「…………わかった」
「約束ね」
キーランの胸に顔をこすりつけた。
「スズ……」
「今日はしないから」
「わかってる……キスだけ」
「約束だよ?」
「わかった」
私が顔を上げると額、まぶた、頬へと口づけが落とされる。
「愛してる」
そう言って唇を何度か啄んだ。
「おやすみ、スズ」
「おやすみ……キーラン」
「本当に何もしないから…力抜いて」
六つも年下の男の子に宥められる。
キーランの胸に顔をつけて安堵した。
「うん……ありがと」
いやだってね。
あの初めての夜で。
「次、俺ね」
そう言ったキーランは、絶頂の余韻の残る私の中に一気に押し挿った。
「ああぁーーっっ」
「……もう、イった? スズかわいい」
ビクビクと震える私の腰を押さえて、絶頂を引き延ばすように何度も抽挿する。
「待って……! あっ、やっ、ん……」
「すごい、締めつけ。一回出すからその後はゆっくり楽しもう」
ゆっくりって何?
「……っ!……はっ…………気持ち、いい」
キーランの動きが遅くなってじわじわと温かいものが私の中に広がる。
私を抱きしめてねっとりとした口づけを受けた。
「初めてなんだ……中で出したのも。俺の手で乱れるのが楽しくて、嬉しいと思うのも」
キーランが笑うのを感じて私は頬に触れた。
「笑ってるの?」
「……わからない」
「笑ってる……かっこいいよ、キーラン」
「そんなこと言うのスズだけだ」
そう言って私を見つめたまま、ぐりぐりと腰を押しつけてからゆっくりと腰を振る。
私の中でむくむくと膨張して、内壁を擦るたびにぐちょぐちょと粘着音が鳴った。
「…感じてくれてよかった…スズに気持ちよくなってもらいたい」
「なってる!…もう、十分、なってるよ!」
「……じゃあ、この一回で終わる」
「わかった、約束だよ」
太ももに手をかけ大きく持ち上げられる。
目の前に二人の繋がりが迫り、私は恥ずかしさに慌てふためいた。
「キー、ランっ、無理っ……」
「……本当?じゃ、少しやってみて嫌なら止める」
私をみつめて真上から打ち込む。
私の愛液とキーランの精液が混ざって溢れてきた。
ぬぷぬぷと鳴る音も恥ずかしい。
「えろいっ……やっぱり、だめっ……」
「……わかった……上に乗るのは?」
「そっちのが……まだいい、かも」
驚いた。
意外にも強引じゃない。
「ほら」
私を膝に乗せて抱っこの状態で繋がる。
キーランの、性欲に負けない精神力は職業柄なのかな。
したいことも私を優先してくれるから大事にされてるなって思う。
そう思ったら好きって気持ちが溢れてぎゅっと抱きついた。
「キーラン、好き」
「…………嬉しい。俺も」
こんなに早くそう言ってもらえると思わなかったと呟いた。
うん、確かに。
私だってそう思う。
だけど、そんな優しさ見せつけられたら好きになっちゃうよ!
「キス、しよ」
お互いに密着したまま唇を合わせて舌を絡める。
キーランが仰向けに倒れるから、私が彼を押し倒すような形で上に乗った。
細い指が背中をなぞり、そのまま腰に手を当ててくる。
「起きてみて」
「……うん」
キーランの胸に手をついてゆっくりと起き上がった。
冷静な顔で見つめられて恥ずかしい。
「俺の上で踊ってみて?」
え。やだ、なに。
そんなの恥ずかしい。
「キーラン……それは……恥ずかしい」
「わかった、いいよ。……来て」
ぺたりと上に寝そべって、唇を重ねた。
「こうやってくっついたままなのも気持ちいい」
「キーラン……」
ほんとに、優しい……。
がっちりとお尻を押さえられて私の様子を見ながら下からゆっくり突き上げられる。
「んんっ……」
うなじから髪の中へ分け入るように指が這い上がってきて、ぞくぞくしているうちに後頭部を掴まれた。
上も下も繋がってめまいがしそう。
「一緒に……気持ち、よくなって……終わろう」
キスの合間にキーランが言う。
私の腰にぐっと手を押し当てて下から突き上げる。
角度が変わって痺れるような感覚に私は喘いだ。
「そのまま、イって……俺も、追うから」
キーランの言葉に私はただ快楽を求める。
「いいっ……きもち、いいよぉ……」
「……スズ!」
私が達するのを見届けてから、キーランも果てた。
あの日のことを思い出したら、もやもやしてきた。
気になってしかたない。
「キーラン?……寝ちゃった?」
「……どうした?」
「キーランは仕事柄、閨事も学んだの?」
「…………」
「あの、私だって初めてじゃないから、こんなこと言うのどうかと思うけど、キーランはすごく……慣れてたから……」
「……一通り学んだけど。……スズが気にすることは何も……」
なんとなく歯切れが悪い。
「……その……相手はたいてい、男だし……」
ああ、そうか。
男の方が多い世界だった。
それはそれで何が行われたか気になるけど。
「言いづらいこと言わせてごめん。ちょっとやきもち焼いちゃった」
「スズ、……キスだけ、させて」
立っていたら腰が抜けるようなキスを永遠とされて、私は気を失うように眠りに落ちた。
12
お気に入りに追加
1,636
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる