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10 おまけ ※微?
しおりを挟む*ミケル視点
ある朝、目が覚めた時何がなんだかわからないことが起こった。
学園に入学するはずだったのに体が痛くて起き上がれなくて、いつの間にか21歳になって妻がいるなんて聞いたから。
女性には近づかないようにしていた。
俺を見てどうしてドレスを着ていないのかと訊かれて、男だからだと答えると笑って信じてくれなかったから。
そんな出来事が何度か続けて起きて、女性と話すことが億劫になってしまった。
そんな自分に結婚相手が見つかったとは信じられない。
だが信じるしかない。
鏡を見て驚いた。
記憶にある頃より体が鍛えられているし、俺は多少筋肉をつけることに成功したようだ。21歳だということも信じられる。
両親から恋愛結婚をしたと聞いた時は信じられなかったし、妻だというモニカと会った時は、包帯を巻いていて痛々しかったけれど、好ましく感じた。
いや、一目で気に入った。
というより一目惚れだった。
以前の俺も同じように思ったに違いない。
俺が侯爵家の嫡男だから、きっとこの縁談を断れなかったのだと思う。
それならば大切にしよう。
なるべくなら愛人は作ってほしくないのだが……。
「夜会が久しぶりすぎて、あんなにワルツが流行っているなんて思わなかったわ」
一緒に風呂に浸かりながら、モニカが漏らす。これは毎日の日課でたわいのないことを話したり、マッサージしたり……まぁ、色々。
ノエルの予言の通りに息子が生まれて1年が経ち、2人で夜会に出かけた。
子どもを産んでさらに美しく、女性としての色気も増したモニカに男どもがわんさか寄ってきた。
今思い出しても色目を使ってきて腹が立つ。
「ハイエナのような男どもは相手にしなくていいんだ」
「……まぁ、ミケルったら」
後ろから妻を抱きしめながら、首筋に軽く口づけする。
「わかっている、嫉妬だって。妻がモテるのは夫にとって鼻が高い、のかもしれないが、変な男が近寄ってこないか心配だ」
「私はミケルしか見ていないから大丈夫」
「わかっているよ。モニカを信頼してるし愛しているから。世の中には物陰に強引に連れ込む男がいるから……」
モニカが振り向いて、俺の頬にキスした。
「それならこれからもずっとそばにいて。それにミケルになら物陰に連れ込まれてもいい……学生時代みたいじゃない?」
悪戯っぽく笑う顔を見て、思い出す。
お互いに気持ちが通じ合って、少しでもそばにいたくてこっそり空き教室に引っ張り込んだこともあった。
していたことは手をつないでおしゃべり、たまにキス。
本当に過去を思い出せて良かった。
俺のほうが先に思い出したのは、想いの強さかもしれない。
絶対俺のほうがモニカを好きだ。
思い出したのは記憶をなくしてから初めて愛を交わした翌朝のこと。
いや、夜中には少しずつ思い出していたかもしれないが、そのあたりは曖昧。
とにかくすっきり目覚めた。
隠している間は言いたい気持ちもあったけど、初々しいモニカと過ごすのは新鮮だったから、ゆっくり妻が思い出すのを待った。
結婚式の翌朝、俺が張り切りすぎたせいで足元のおぼつかないモニカを抱っこしたまま朝食をとってから、それが日課になっていたっけ。
記憶がなくて恥ずかしがるモニカを膝に乗せての朝食はなんだか幸せに満たされた。使用人たちもなぜかうなずき合っていたのも忘れない。
いつもの光景だもんね。
「ミケル?」
「あぁ、ごめん。色々と思い出していた。いいね、夜会を抜け出して2人きりで過ごすのも楽しそうだ」
「……えっと、冗談のつもりだったの」
「それは残念。ね、モニカ」
名前を呼んでキスをする。
ただ重ねるものから、意味を持った深いものへ。
空気が変わった。
「ミケル……部屋へ」
「少しだけここで」
後ろから抱えたまま、こぼれ落ちそうなほど大きくなった胸を手のひらで包み込む。
指先で先端を弄れば、モニカが甘えるように声を漏らした。
「ん……」
片手で脚をひらかせて、彼女に触れる。湯とは違うとろみを感じて指を中に忍ばせた。
「ミケル……ッ」
「……なに?」
内側の指はそのままに、親指で硬くなった陰核を愛撫しながら耳たぶを口に含む。
もう片手は胸への刺激を続けた。
腕の中で身悶える妻が可愛くて仕方ない。
「可愛い。俺の、モニカ」
「ん……ッ、あっ」
「大好き」
「……わ、たしもっ」
「うん、好きだよ」
好きだと伝えると、モニカの体も反応する。それが可愛くて愛しくてたまらない。
張り詰めた陰茎が妻の腰でこすれ、ピクリと動いた。
「ミケル、お願い……」
モニカをたくさん甘やかしてぐずぐすに蕩けさせてから愛したいと思うのに、いつもせっかちになってしまう。
「ここでは少しだけだよ、モニカ?」
「んんッ」
妻の腰を持ち上げて蜜口に陰茎を押し当てる。
お互いに馴染んだ体は、少しの抵抗もなくなめらかにひとつになった。
バスタブをぎゅっと握るモニカは、果てが近いのだろう。
しっかり腰を引き寄せた。
「気持ちいいね、気持ちいいよモニカ」
陰核に触れながら、下からゆるく突き上げる。
きゅうっと内壁がうねるのを感じて、絞られる気持ちよさに俺は唸った。
「ミケル……ッ、あ――ッ!」
腕の中でガクガクと震え、甘い声をもらす。
その声にぞくりとして、射精感が高まった。
けれど――。
「モニカ、のぼせそうだ。ベッドへ行こう」
一旦引き抜いて、足元のおぼつかない妻を支えながら立ち上がった。
向かい合い、膝の裏に手を入れて俺の腰に絡ませるようにして穿つ。
「あんっ! ミケル……?」
「ごめん、我慢できなくて。首に腕を回して、このまま移動するから」
「え、あ……ッ」
モニカの腕が首に回った後、もう片脚も持ち上げてそのまま歩き出した。
ベッドまで待てないなんて、今日の俺はやっぱり嫉妬している。
モニカの気持ちは疑っていないけど、自分の妻だって実感して、体温を感じたい。
しがみついてくるモニカをしっかり抱きしめて、ゆっくりベッドに下ろして深く口づけした。
同時に揺さぶってモニカが達するのを感じてから俺も果てる。
そのままぎゅっと抱きしめて荒く息を吐いた。
「ミケル……大好きよ」
「俺も、大好き。ごめん、大好きだ」
「なぜ、謝るの?」
「大好きすぎて、もしかして重いかなって」
「そんなことない。嬉しい……」
包み込むような優しさでみつめてくるから、俺は再び心と体で愛を伝えた。
明日の朝はシーツが目も当てられないことになっているかも。
それにポエムの連作ができたかもしれない。
そんなことを思いながら、先に眠ってしまったモニカを胸の中に引き寄せて目を閉じた。
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いちゃいちゃ夫婦にも子どもたちが産まれて、ますます賑やかになりました!
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柚木ゆずさま、コメントありがとうございました🤗
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中学生くらいの深夜のテンションがないとなかなか浮かばず💦
甘々ポエムエンド、ぜひやってみたい気はします♪
さすがズブロッカnicoさま✨
ブランデーはお菓子に使いたい派ですが、甘いものとなら相性いいですね🎂
言われてみれば私も水割り飲まないです。コーラで割ってしまうかもしれません(ノ≧︎ڡ≦︎)
nicoさま、コメントありがとうございました🤗
あめ様
完結✨💐₍₍ ⸜(* ˊ꒳ ˋ* ⸜≡⸝ *ˊ ꒳ˋ* )⸝ ⁾⁾🎂✨
甘くて可愛いお話、素敵でした。
モニカ……意外と巨乳ちゃん~❤︎゛
色香ダダ漏れでモテモテ。
ミケルは心配ですねꉂ(ˊฅˋ*)フフフッ
kan((*ᵔᗢᵔ)๗🍻๒(˃̶̤́ꇴ ˂̶̤̀ *)paaaaaai
わ〜嬉しいです✨
🍺( ′~‵)🎂ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”
モニカは2人産まれてお胸が豊かに。
前に何かの記事で1人産むごとに3.5kg太るって読みましたけど、個人差あると周りを見て思います♪
ミケルは妻大好きなので心配でしょうね(ღˇ◡︎ˇღ)
きっとそれもスパイスとして楽しむかもしれません♪
鍋さま、コメントありがとうございました🤗