仲良し夫婦、記憶喪失。

能登原あめ

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 キスを続けながら、いつの間にかドレスを脱がされて、下着姿の私を抱き上げる。

「ごめん、待てそうもない」
「でも……っ、お風呂に……」
「一緒に入ろう」

 手際がよくて驚いている間にどんどん先へと進む。
 私は彼の首に腕を回してしがみつくと、唇が深く合わさった。

「可愛い。もっとモニカに触れたい」
 
 記憶はなくても体は覚えている。
 口内に忍び込んだ舌が器用に動いて私から反応を引き出した。
 気がつけば浴室にいて、ミケルが慣れた手つきで私の下着を床に落とす。

「ミケル……思い出したの?」
「いや、まだ……だけど、俺の体が覚えているみたいだ」

 それだけ仲良く夜を過ごしてきたのかもしれない。
 嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちでミケルにすり寄る。
 浴室の灯りはひとつだけ、普段より暗いとはいえすべてをさらすほど大胆にはなれなかった。

「モニカ、つかまって」

 ミケルの体温をじかに感じて、とくとくと胸が早鐘を打った。
 たっぷりとためられた大きな浴槽は2人でゆったり入れる広さがあって、きっと何度も一緒に入ってきたのだと思う。

「髪はあとでね」

 ミケルが湯温を確かめてから、私にかけてくれる。そのまま当然のように石けんを泡立てて私の背中に塗り広げた。

「あの……っ、自分で……」
「じゃあ、モニカが俺の背中を洗って? お互い届かないから」
「うん」

 その通りだと思って、石けんを手にとり彼の背に手を伸ばす。
 ミケルは細身だけど、女性とは全然違って筋肉がついている。さっきだって私を軽々抱えて歩いたくらいだから……。

 そんなことをぼんやり思いながら背中を撫でていると、ミケルが私のあちこちに触れてくる。

「ん……っ」
「モニカ、背中洗って」
「うん」

 くっつかないと全部洗えなくて、でもミケルが全身に触れてくるから、変な声が出そうで身をよじってしまう。

「逃げないで」
「……ん、だって……くすぐったくて……」
「いや?」
「……やじゃない……恥ずかしいけど」

 お互いの体でつるつるすべって、くすぐったい以外の感覚に襲われた。
 時々、ミケルがキスをしかけてくるから、ますます頭の中がぼんやりしてしまう。

「あ、待って……!」

 脚のあわいに触れられて、体がはねた。
 夫婦だからきっと全部知っているのだと思うけど、今の私には記憶がないから……。

「ここを洗ったらおしまい。すぐ終わるから」
「おしまい?」
「うん」

 そう言うから目をつぶって恥ずかしさと、突然訪れた強い疼きに耐える。
 ただ体を洗っているだけなのに……。
 声は漏れそうになるし、体が勝手に動いてしまった。

「ミケル、早く」
「…………うん、もう流すよ」

 温かい湯をかけられてほんの少しほっとする。
 でも、脚のあわいはじんじんと熱を持っていて困った。
 
 ミケルの体には女性にないものがついていて、さっきから私のお腹に当たっている。時々震えるように動いて気になるのだけど、じっと見つめることもできない。

 お湯をかける前にミケルが泡で洗ったのをちらっと見たけれど、脚の間にあったら邪魔になるんじゃないかと思うくらいに存在感がある。
 アレを受け入れるのだと、体がわかっているみたいで、さっきから気になって仕方がなかった。

「少し、温まろう」

 私が返事をする前に抱っこしたまま湯船に浸かる。彼の肩に頬を寄せ、意識して力を抜いた。
 まだ完全に緊張がとけないから、手をどこに置いていいかも戸惑って、中途半端に彼の腕を握る。

「ミケル、私たち……前からこうして一緒に入っていたのかな」
「多分そうだと思う。2人でゆったり入れるし、こうしているのが自然に思えるよ」
「……私も」

 ミケルが浴槽に寄りかかって息を吐く。
 そうしたらなぜか脚のあわいにミケルの存在感のあるアレが当たった。

「……あ、……っ」

 思わず声を漏らした私に、ミケルがほんの少し腰を浮かす。
 私は逃れようとしたのにがっちり腰を抑えられていて脚のあわいが甘く疼いた。

「ミケル、動かないで」
「モニカ、キスしよう」
「うん」

 唇を合わせて、お互いに啄んでいる間は何もしなかったのに、舌を絡ませるようになってから脚のあわいにアレが当たる。

「んう、……ミケルッ、あっ」
「モニカ、ごめん。我慢できないかも」

 ミケルは私を抱えたまま勢いよく立ち上がって、歩き出した。タオルを掴み、広げて私を包みこむ。
 ほっとした私は彼の耳元でささやいた。

「我慢しなくていいよ。私の体も覚えているみたい」

 存在感のあるアレがピクリと動く。
 ミケルの代わりに返事をしたみたいで可愛く思えて。

「好き。ミケルのすべてが好き……っあ!」

 一緒にベッドに倒れ込んだ衝撃で、一瞬息が止まった。

「そんなこと言われたら、今夜はもう止まれないよ」
 
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