リス獣人のお医者さまは番の子どもの父になりたい!

能登原あめ

文字の大きさ
上 下
4 / 4

4 幸せな新婚生活 (終)

しおりを挟む


 そわそわしながら妻が心地よく暮らせるように部屋を整えた。
 医者として働く仕事スペースと俺達の愛の巣はきっちりはっきり分けている。

 引っ越してきた時、ちょっと大きすぎる家かなって思ったけどちょうどよかった。

 ベッドも大きなものに新しく買い替え、仕事の合間に大掃除もしたのは大正解。
 六日は長かったけど、十分な準備ができたかな。
 細々としたものはリーズの好みでこれから揃えていけばいいね!

「ジャノ先生……会えなくて寂しかったです」

 きゅうぅん。
 
「私もだよ。これからよろしくね」

 はぁ。可愛い。
 彼女の家族に挨拶すると、お父さんがたびたび顔を見せるようにって言う。

「もう~お父さんたら。私はもう人妻よ? でも、ちゃんと顔を出すから! 可愛い赤ちゃん抱かせてあげるからね!」

 みんなの視線が妻のお腹に集まる。
 これは早々に頑張らなくては!






 家の中をぐるりと案内して、リーズの持って来た荷物をしまう。
 思ったよりも荷物が少なくて驚いたけど、おしゃべりしながらのんびり片づけたら終わったのは夕方だった。

 リーズがお金はすぐ使っちゃうって言っていたから相当荷物があるかと思ったけど、人にプレゼントするのが好きなんだって。
 お世話になった人とか、迷惑かけた人とか。
 迷惑かけた人が八割らしいけど……喜ぶ顔が見たいらしい。
 じゃあ、これから俺も何かもらえる可能性が⁇
 よし、おこづかいは多めに渡そう……!

「お腹空いたね」
「あの……私も一緒に作ったんだけど……たくさんお惣菜を持たせてもらったから、これを食べましょう!」

 大きなカゴから次々と料理が出てくる。
 リーズの両親はいろいろな野菜を作っているようで、サラダから蒸し物、煮物、揚げ物までたくさん準備してくれていた。
 素材の味を活かしていてどれもおいしい。
 リーズの料理が格別に美味。

「ごめんなさい。ちょっとお塩入れすぎちゃったみたい」
「いや、疲れた時には塩分の濃いものが欲しくなる。おいしいよ。さらにこうして食べれば……」

 パンに挟めばちょうどいい。 
 夜に疲れが残るのは困るしね!
 
「よかった……これからはもっと上手に作るから」
「うん、楽しみだな」

 その後は順番にお風呂に入って寝支度を整えた。

「おやすみなさい」
「おやすみ」

 そして二人で同じベッドに横になる。

「………」

 そんなに可愛いネグリジェを着て寝ちゃうつもり⁉︎
 もしかして、何も知らないままここへ⁉︎
 どうする俺、どうしたらいい!

「ジャノ先生……」
「なんだい、リーズ」
「私、幸せだなって思って。ありがとう、ジャノ先生」
「こちらこそ、リーズと結婚できて嬉しい」
「…………」
「…………」

 あ~、あ~、タイミング逃してしまった! 

「ジャノ先生、眠れませんか?」

 悶える俺に気づいた妻が俺の方を向く。
 今だ!

「リーズ」

 そっと頬にキスしてから唇を押しつけた。

「せん、せ……?」
「リーズ、体に触れていい?」
「はい……触診ですか?」

 ショクシン……。
 触診か、触診ね。
 ムードとか雰囲気作りはどうしたらよかったんだろう。

「あの……読んだ本に書いてあったので」
「…………調べていい?」
「はい」

 俺は彼女を騙しているのか?
 いや、これは夫婦のコミュニケーションだ!
 ストレートに言うしかない。

「医師としてだけじゃなくて、夫としてリーズに触れたい」
「いいですよ」

 やった!

「大好きだよ、リーズ。私と結婚したことを後悔してほしくないから、全力で君に尽くす!」

 全力で! 全力で‼︎

「ジャノ先生……」

 先生って呼ばれるのも好きだっ。
 腰がきゅうぅんとする。

「全部僕に任せてほしい」
「はい!」










 リーズの想像妊娠が本物の妊娠になったのは結婚してすぐで、お姉さんの出産から半年も経たずに双子が生まれた。
 
「神様の子とジャノ先生の子だわ……」
「……どっちが、神様の子かわかる?」

 あれ? まだ信じていたのか。
 いや、俺も説明していなかったのがいけなかったのか。

「わからないわ! どっちもそっくりだし、どっちも可愛い」

 一卵性の双子の女の子、今はほっとんど見分けがつかない。

「二人とも僕達の子供だよ。大切に育てよう」
「はい! 考えてみたら、どちらも神様が授けてくれたんだわ。だから……どちらも私達の子供よね……?」
「そうだよ、二人とも私達の愛し子、いやもっと良い言い方があるはず……そうだな、私達の」
「愛の結晶?」

 そう言って照れるリーズが可愛い!
 久しく聞かない言葉だけど、俺達の子供にピッタリだ。

「いいね。リーズは言葉選びのセンスも最高だ! 大好きだよ!」
「私も大好き! ジャノ先生」

 俺のリーズ、最高に最高に可愛い。
 こうして俺は番の子供達の父親になった。









             終






******


 お読みくださりありがとうございました。
 
しおりを挟む
感想 17

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(17件)

ツクヨミ
2023.11.30 ツクヨミ

タイトルと表紙に惹かれて読ませてもらいました!
ほのぼのほんわかな世界観に癒されました♪

2023.11.30 能登原あめ

そう言っていただけて嬉しいです!
(୨୧•͈ᴗ•͈)◞︎ᵗʱᵃᵑᵏઽ*♡︎
ほのぼのとかほっこりする話っていいですよね(クセの強いのも書いてますが)
ツクヨミさま、コメントありがとうございました🤗

解除
せち
2022.09.09 せち

なんだか癒されたぁ🥰✨

2022.09.09 能登原あめ

わ〜✨(ღˇ◡︎ˇღ)♡︎
こちらにも嬉しいです♪

獣人の番ものは基本的に幸せなお話多めです!
せちさま、コメントありがとうございました🤗

解除
柚木ゆず
2022.05.01 柚木ゆず

今日は久しぶりに、こちらの世界にもお邪魔をしております。

ほのぼので、ほんわかしていて。やっぱりこの世界(みなさんのことが)、好きです……!
顔も、心も。
にこにこに、なりました……っ。

2022.05.01 能登原あめ

このお話、ほのぼので癒し系(?)だなーと思っています( ˘͈ ᵕ ˘͈ )♡

ヒロインが、危なっかしくて目が離せないタイプですけど!
このヒーローじゃないとだめですね♪
柚木ゆずさま、コメントありがとうございました🤗

解除

あなたにおすすめの小説

憎しみあう番、その先は…

アズやっこ
恋愛
私は獣人が嫌いだ。好き嫌いの話じゃない、憎むべき相手…。 俺は人族が嫌いだ。嫌、憎んでる…。 そんな二人が番だった…。 憎しみか番の本能か、二人はどちらを選択するのか…。 * 残忍な表現があります。

私の上司は竜人で私はその番でした。

銀牙狼
恋愛
2021年4月、私は仙台HBG(星川バンクグループ)銀行に就職。優しい先輩にイケメン上司、頑張るぞと張り切っていたのにまさかこんなことになるなんて。

精霊王だが、人間界の番が虐げられているので助けたい!

七辻ゆゆ
恋愛
あんなに可愛いものをいじめるなんてどうかしている! 助けたい。でも彼女が16になるまで迎えに行けない。人間界にいる精霊たちよ、助けてくれ!

おいしいご飯をいただいたので~虐げられて育ったわたしですが魔法使いの番に選ばれ大切にされています~

通木遼平
恋愛
 この国には魔法使いと呼ばれる種族がいる。この世界にある魔力を糧に生きる彼らは魔力と魔法以外には基本的に無関心だが、特別な魔力を持つ人間が傍にいるとより強い力を得ることができるため、特に相性のいい相手を番として迎え共に暮らしていた。  家族から虐げられて育ったシルファはそんな魔法使いの番に選ばれたことで魔法使いルガディアークと穏やかでしあわせな日々を送っていた。ところがある日、二人の元に魔法使いと番の交流を目的とした夜会の招待状が届き……。 ※他のサイトにも掲載しています

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

触れても伝わらない

河原巽
恋愛
王都から離れた地方で暮らしていた猫の獣人マグラは支部長自らの勧誘を受け、王立警護団第四支部に入団する。 入団初日、支部の詰所で甘い香りを放つエレノアと出会うが、同時に男の匂いをべったりと付けている彼女に苛立ちを覚えるマグラ。 後日、再会した彼女にはやはり不要な匂いが纏わり付いている。心地よい彼女の香りを自分だけのものだと主張することを決意するが、全く意図は通じない。 そんなある日の出来事。 拙作「痛みは教えてくれない」のマグラ(男性)視点です。 同一場面で会話を足したり引いたりしているので、先に上記短編(エレノア視点)をお読みいただいた方が流れがわかりやすいかと思います。 別サイトにも掲載しております。

白猫は異世界に獣人転生して、番に愛される

メリー
恋愛
何か大きい物体に轢かれたと思った。 『わん、わん、』と言う大きい音にびっくりして道路に思わず飛び込んでしまって…。 それなのにここはどこ? それに、なんで私は人の手をしているの? ガサガサ 音が聞こえてその方向を見るととても綺麗な男の人が立っていた。 【ようやく見つけた。俺の番…】

番認定された王女は愛さない

青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。 人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。 けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。 竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。 番を否定する意図はありません。 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。