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3 修羅場になるかと思いきや

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「……どういうことだ? 出会ったのは今日じゃなかったのか? まさか、お互いに名乗りもせず出会って、か、関係を持ったのか⁉︎ そんなっ、そんなっ……!」

 リーズはお父さん似だな。

「あのですね、実は……」
「赤ちゃんは、ジャノ先生の子じゃないの! でも、先生のところに行って一人で育てるって言ったらプロポーズしてくださったの! 先生は悪くないっ」

 ややこしいことになった。
 早く医者として説明しないと……。
 
「あのですね、実は」
「俺の可愛いリーズがぁ‼︎ 小さかったリーズがそんなっ、そんな……」
「私だってもう成人なんだから!」

 お父さんが泣き出してしまい、リーズと言い合いを始めてしまったので、お母さんに向けて言う。

「彼女は僕の番なんです。それに、どうやらお姉さんの影響で想像妊娠のようで……本気で妊娠していると思っているので違うと言いづらくて……すみません」
「ああ、なるほど……。そう言うことなの。ごめんなさいね、思い込みの激しい親子で」

 そう小声で言ってから、お母さんが大声を出す。

「ジャノ先生はリーズの番なのね! 素晴らしいわ。番が見つかったなんておめでたい、お祝いをしましょう」

 リーズ達がばっと振り向く。

「番……?」
「そうなの、ジャノ先生は番だって言うの。すっごく優しくて私も好きになっちゃった!」

 お父さんがふう、と息を吐く。

「……番ならしかたない」

 え? お父さん⁉︎

「でしょ! さぁ、さぁ、明日にも結婚してしまいなさいな」
「ありがとう、お母さん!」

 急展開にびっくりしているうちに、いろんなことがあっさり決まった。
 お父さんは人間とムササビ獣人の間に生まれたらしく、番の感覚があったんだって。

 だからちゃんと認めてくれて、本当に翌日お姉さん夫婦も呼んで食事会をすることになった。
 そのまま結婚していいんだって。
 一緒に住むのは、引っ越しの準備をしたいから一週間後になったけれど。
 くすん。

「ありがとうございます! リーズさんを一生大切にします」
「わかってる……よろしく頼む」

 おとーさーん……!
 大号泣させてごめんなさいッ。
 その分ほんとにほんとに大事にします‼︎







「結婚おめでとう!」
「ありがとうございます」

 出会った翌日にみんなに祝福されて胸がジーンとする。
 リーズのお姉さんは人間の旦那さんとやって来て俺にそっと耳打ちした。

「リーズ、想像妊娠しているんだって? 早く本当にしてね。この子と年の近いいとこができたら嬉しい」
「……はい、ご期待に添えるようがんばります!」
「ふふっ、よろしくね」

 お姉さん達ともうまくやっていけそう! 
 うちの両親には昨日のうちに番と結婚するって手紙を出したから、落ち着いたら二人で会いに行こうと思う。 
 あ、本当に三人になってるかもしれないけどね。

「ジャノ先生? お姉ちゃんと何を話していたの?」

 リーズが俺のそばにやって来た。

「まさかお姉ちゃん……私の秘密をばらしたとか⁉︎」
「……」

 何それ聞きたい。

「やっぱり……、私が五歳までおねしょしていたこと? それともお母さんのシュミーズ一枚で学校行こうとしたこと? それとも、お姉ちゃんの脱毛剤で全身つるつるにしちゃったこと……?」

 全身つるつる?
 いつの話? 最近? 今もだったらいいな!

「え? こほん。いや、お姉さんにリーズのこと大切にするようにって言われたんだよ」
「……え! そんな……」

 真っ赤になったリーズが可愛くてギュッと抱きしめる。

「私の恥ずかしい話もあとで教えるよ。それならおあいこだね」

 俺は七歳までおもらししてたし!
 まぁ、リーズが笑ってくれるなら全身つるつるにしてもいいな。
 いや、つるつるのリス獣人ってシュールか……?
 チャームポイントの尻尾だけ脱毛しなければいいだろう! いい案だな。

「うん。……ジャノ先生、笑わないの?」
「だって、そんなリーズも可愛いから」

 シュミーズ姿を外で見られていたら男どもに殺意がわくけどね。
 それは全然笑えないんだ!

「ジャノ先生、好き」

 好き、いただきましたー‼︎

「お、私も好きだよ」

 抱きしめて幸せ満喫中。
 やばい、離さないと、離さないとこれ以上は……。

「あらあや、そろそろお開きにしましょうか。ジャノさん、六日後に娘を迎えに来てくださいね」

 お母さんがそう言って笑い、お父さんは時々娘に会わせろよって小声で言った。
 もちろん、一部のリス獣人の雄みたいに部屋に閉じ込めたり、すべての男と会わせないようにしたりなんてしない!

 あれは発情期にむらむらしちゃう一部のリス獣人の雌が誰彼かまわず雄を求めて外に出ちゃうから問題なんだ。
 リーズは人間だし……そんな風にならないよね?

 リーズがよそ見しない限り大丈夫。
 閉じ込めたいけど、閉じ込めないから!

 お姉さん、ピッカピカに磨くとか可愛い下着用意しなきゃねとかつぶやいていたけど、まずは体調を優先してほしい。
 それ……俺に聞こえるように言ったのかな。

 楽しみ、楽しみすぎて大爆発しそう!

「リーズ、六日後一緒に暮らせるのを楽しみにしているよ。幸せになろう!」
「はい! よろしくお願いします」

 たくさん俺の子供産んでね。
 
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