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22 新しく結ぶ②

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 夕食はレーンが用意してくれた。
 座っていていいよって、ちょっと魔法でズルをしながら肉と付け合わせの野菜を焼き、温めたパンとスープをテーブルに並べる。
 前世の彼氏だってこんなにマメじゃなかった。
 もしかして、結婚したら時々こうやって作ってくれるってこと?
 それとも今だけポイント稼ぎ?

「どうした?……食べさせようか?」
「大丈夫。ねぇ、ちょっと、甘過ぎない?」
「このスープは玉ねぎとかぼちゃが入っているから甘くなっているけど、砂糖は使っていない」

 そうじゃない。

「好みじゃないか?」
「いえ、おいしい、です」
「そうか……なら、よかった」

 私、ちょっとおかしい。
 なんだろう、恋愛のホルモンが活発に働いているのかも?
 きっと、そう。
 レーンがちょっと笑っただけでときめくとか、なんなの、これ。









 今夜もレーンが風呂の準備をしてくれた。
 薪でお湯を温めるのも慣れた作業だけど、彼がやってくれることに慣れるとあとが困るかも。
 
 スパダリ。
 そんな単語が頭に浮かぶ。

「ウィロウ……抱きしめさせて」

 レーンがお風呂上がりの体温の高い身体を抱き締めて匂いを嗅いでくる。

「くすぐったい」

 それに恥ずかしい。
 細身だけど筋肉もそこそこついているし、包まれていると守られているって、安心感がある。

 最初は鼻をこすりつけていたレーンだったけど、いつのまにか唇が私の肌をなぞり、時折甘噛みする。
 これって親愛のスキンシップ? 

 確かめるように触れられて、ますます体温が上がる。
 いやじゃない。嬉しい。
 こんなふうに感じているのがいいのかどうか、ふわふわした頭がどうしたら正常に戻るのかわからない。

「次の休みって、いつ?」
「……あさって」

 そこまで繁盛店じゃないというのもあって、週末と客のほとんどこない平日の中日に休みを取っている。
 
「じゃあ、明日の夜は、あの日を初めからやり直そう」

 そう言われて顔がボンッと赤くなる。
 レーンはそれを見てははっと笑った。
 
「逆転してる……いつも赤くなるのはレーンだったのに……どうして……?」
「わからない。多分、ウィロウが俺よりも、俺のことを意識してくれてるから?……少しは好きになってくれた?」

 自信。
 私に好かれてるって、わかって自信がついたとか?
 もしかしたら、私の戸惑う様子を楽しんでいるのかもしれない。
 そう思ったら、悔しくて。

「好き」

 ヤケになって、私は言った。

「好き。…………何か言ってよ」

 レーンの顔が赤くなる。
 久しぶりに見れてなんだか嬉しくなる。

「……ウィロウ、嬉しい……俺も大好きだ。……嬉しいんだけど、……明日の夜は覚悟して」

 

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