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16 過去と再会③
しおりを挟む「……、まぁ、これならイけるんじゃない?」
「……そうですね、このまま連れていきましょう。……フードを深くかぶって、顔を見られないようにして下さい」
身体が揺れる。
頭が朦朧とする。
どうやら、男に背負われているらしい。
「目覚めたのね……もっと飲ませればよかった」
「あれには痺れ薬も入れましたから、しばらく大丈夫でしょう。ここは、国境ですしあっという間にあなたの婚約者のもとへ連れて行けますよ」
「いやぁね。あったこともない年寄りの元へ嫁ぐなんて。……タイミングよく彼女を捕まえられてよかった。……本当は、前回の結婚の前に代わってもらいたかったけど……あの男はあっさり病死してくれてよかったわ」
「…………今後はそっくりな彼女が身代わりになってくれるでしょう」
一体、何を、言ってるの?
「お姉さん、聞こえてる?あんたは私の代わりに伯爵家に嫁ぐの。貴族だから贅沢できるわよ。魔女になったかと思ったら結局ただの平民じゃない。あんなあばら家で暮らすより幸せになれるわ。相手はおじいちゃんだけど。……あんたの男は睡眠薬入りの酒で眠ったところを縛ったから、追いかけては来れないわよ……ふふっ」
最低。
妹も、私の状態も。
これでは、魔法が使えない。
レーンも目が覚めれば魔法が使えるはずだから、まずは自分のことを考える。
あの時扉を開けなければよかった。
こんな厄介ごとに……巻き込まれなかったかはわからないけど、心残りを残したままうっかり知らないおじいちゃんに処女を捧げるとか悲劇。
もちろん何もしないでいるつもりはないけど。
「これまであなたは自由に生きてきたんだから、私と立場を交換してもいいと思うの」
意味がわからない。
私は家を追い出されて、自由を手にしたわけじゃない。
体の中が怒りでいっぱいなのに、口から漏れるのは空気だけ、身体も動かなくてもどかしい。
「愛のない結婚から解放されたのに、どうして私だけ縛りつけられなきゃいけないのかしら。両親が事業に失敗して、尻拭いが私っておかしいのよね……もし、あんただってバレても私はこのまま国を出るし、両親もろともこの世から消えてしまえばいいわ」
そこで区切り、私をじっとみつめる。
「だから、あんたは今からイモージェンよ。きっと、人形のように大切に愛でてくれるわよ。だって、お屋敷にはたくさんの剥製があるんですって……さすがに人間はいないらしいけど、あんたが最初にそうならないことを祈っているわね」
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