上 下
14 / 28

14 過去と再会①

しおりを挟む




 レーンの穏やかな声と、焦ったような女の声が聞こえてきた。

 クレーム?
 なんとか見れる姿に整えて、店に顔を出す。
 若い貴族の女性とその護衛と思われる男がレーンに詰め寄っていた。

「いらっしゃいませ」

 レーンが眉間にしわを寄せて対応していて、立ち位置を変わるように入り込むと、援護するとでも言うように腰を抱かれた。
 
「ウィロウ!ウィロウねっ?……私のこと覚えている?助けてほしいのっ!」

 鈴が転がるような高い声。
 私と作りが同じ顔。
 彼女の方が当たり前だけど、貴族として洗練されているし、肌も髪もすべて手入れされている。
 私の妹だった少女。
 
「イモージェン……こんなところまでどうしたの?」

 あの家とのつながりを絶ち、これまで一度も連絡を取り合ったことはなかった。

「ずっと、ずっと探してた!……だって、私達双子よ?……魔女の家までは簡単にたどり着いたけど、ここを見つけるのに、かなりの小遣いを使っちゃったわ」

 昔のまま、無邪気なところは変わっていないらしい。

「両親には内緒でずっと探していたの。だからここはバレていないわ……。あのね、私、望まぬ結婚をして死に別れた後、彼と本物の愛を知ったの。でも、父から再婚するように話を勝手にまとめられてね。……だからしばらく匿ってもらえないかしら?一週間、いえ、数日でいいの。……二人で逃げるのに準備を整える間だけ」

 イモージェンは隣に立つ恋人の手を握り、二人で頭を下げる。
 いきなり訪ねて来られて困惑もしているけど、二度と会わないと思っていた妹に対し、何かしてあげたいと思う。

「……この家は見ての通り、小さくて、ゆっくり休める部屋を用意してあげられないの。……この街の宿屋に協力してもらって……」
「いえ、私、こうみえて体は丈夫なの。庭に、幌のかかった荷車があったでしょう?……彼と二人、あそこで休ませてもらうわ。彼はずっと私の護衛だし、万一の時は逃げやすいと思うから……」

 簡素だけど、明らかに町娘とは違うドレスを着た彼女に、荷車で寝るなんて耐えられるか疑問に思う。

「……あまり、目立ちたくないの。迷惑はかけないわ。……お姉さん」
「…………必要そうなものを探してくるから、この部屋で待っていて。今日は店が休みだから、誰も来ないはず」

 あなた達は来たけど、と思って少しおかしくなった。
 
「お茶は……」
「あぁ、大丈夫よ。必要なものはいくらか持ってきたの。ありがとう、とっても助かるわ。来て早々悪いけど……しばらくここで仮眠をとってもいいかしら?」

 無邪気に笑う彼女がソファを指差したから頷くと、厳しい顔つきの護衛が彼女にマントを渡した。

「特に何もいらないわ。あなたたちの楽しい休日を邪魔しちゃったわね。……どうぞ好きに過ごして。また夜にでも」

 








「レーン……」

 私とレーンは台所をさっと片づけ、寝室へと移動した。
 彼は妹達が来てからずっと眉間にしわを寄せている。

 さっきまで私達はベッドにいて、邪魔をされたし彼はものすごく中途半端だろうと思う。
 だけど、彼が口に出したのは別のことだった。
 
「ウィロウと、彼女のこと、教えて?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

騎士様に甘いお仕置きをされました~聖女の姉君は媚薬の調合がお得意~

二階堂まや
恋愛
聖女エルネの姉であるイエヴァは、悩める婦人達のために媚薬の調合と受け渡しを行っていた。それは、妹に対して劣等感を抱いてきた彼女の心の支えとなっていた。 しかしある日、生真面目で仕事人間な夫のアルヴィスにそのことを知られてしまう。 離婚を覚悟したイエヴァだが、アルヴィスは媚薬を使った''仕置き''が必要だと言い出して……? +ムーンライトノベルズにも掲載しております。 +2/16小話追加しました。

【本編完結/R18】獣騎士様!私を食べてくださいっ!

天羽
恋愛
閲覧ありがとうございます。 天羽(ソラハネ)です。宜しくお願い致します。 【本編20話完結】 獣騎士団団長(狼獣人)×赤い瞳を持つ娘(人間) 「おおかみさんはあたしをたべるの?」 赤い瞳は魔女の瞳。 その噂のせいで、物心つく前から孤児院で生活する少女……レイラはいつも1人ぼっちだった。 そんなレイラに手を差し伸べてくれたたった1人の存在は……狼獣人で王国獣騎士団のグラン・ジークスだった。 ーー年月が経ち成長したレイラはいつの間にかグランに特別な感情を抱いていた。 「いつになったら私を食べてくれるの?」 直球に思いを伝えてもはぐらかされる毎日……それなのに変わらずグランは優しくレイラを甘やかし、恋心は大きく募っていくばかりーーー。 そんなある日、グランに関する噂を耳にしてーーー。 レイラ(18歳) ・ルビー色の瞳、白い肌 ・胸まである長いブラウンの髪 ・身長は小さく華奢だが、大きめな胸 ・グランが大好きで(性的に)食べて欲しいと思っている グラン・ジークス(35歳) ・狼獣人(獣耳と尻尾が特徴) ・ダークグレーの髪と瞳、屈強な体躯 ・獣騎士団団長 剣術と体術で右に出る者はいない ・強面で冷たい口調だがレイラには優しい ・レイラを溺愛し、自覚は無いがかなりの過保護 ※R18作品です ※2月22日22:00 更新20話で完結致しました。 ※その後のお話を不定期で更新致します。是非お気に入り登録お願い致します! ▷▶▷誤字脱字ありましたら教えて頂けますと幸いです。 ▷▶▷話の流れや登場人物の行動に対しての批判的なコメントはお控え下さい。(かなり落ち込むので……)

落ちこぼれ魔法少女が敵対する悪魔の溺愛エッチで処女喪失する話

あらら
恋愛
魔法使いと悪魔が対立する世界で、 落ちこぼれの魔法少女が敵側の王子様に絆されて甘々えっちする話。 露出表現、人前でのプレイあり

ヘビは意外と怖がりの臆病者でした~ヤンデレ神官は聖女の愛を信じない~

石河 翠
恋愛
「運命の恋」とやらを見つけた第二王子のせいで、婚約を解消されてしまった主人公。当て馬はもう勘弁と、新しい婚約者候補の紹介を断り、教会で余生を過ごすことに決める。ところが突然聖女っぽい力に目覚めてしまい、再び注目を浴びることになってしまった。しかも教会のお偉方は、金の亡者で聖女を都合良く使う始末。 不本意に過ごしていたある日、教会は暴徒の襲撃を受ける。作物が不作で村人たちが飢えに苦しんでいるにもかかわらず、いつも通り贅沢に過ごす、教会上層部の姿勢が怒りを買ったのだ。 もはやここまでと覚悟を決めたのもつかの間、今度は側仕えの神官にさらわれてしまう。実は彼の正体は、ヘビ族の王子さまで長年彼女に恋い焦がれていたのだという。実は聖女自身も彼のことを憎からず思っていて……。口が悪く気が強い聖女さまと、乱暴なようでいて自己評価が低い臆病者でヤンデレなヘビのおはなし。 この作品は、小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は、あっきコタロウさんが配布されているフリーイラストを使用しています。

絶倫獣人は溺愛幼なじみを懐柔したい

なかな悠桃
恋愛
前作、“静かな獣は柔い幼なじみに熱情を注ぐ”のヒーロー視点になってます。そちらも読んで頂けるとわかりやすいかもしれません。 ※誤字脱字等確認しておりますが見落としなどあると思います。ご了承ください。

聖女が醜くて臭いのは王子がクズだからです~隣国で善人イケメンに拾われたら美貌と良い匂いを取り戻しました~

サイコちゃん
恋愛
汚物――そう呼ばれるのはこの国の聖女ルシアナだ。彼女はネガティブなものを体に取り込んで国を守る聖女である。しかし悪臭に耐えきれなくなった王子がルシアナを森へ捨ててしまう。捨てられたルシアナは隣国の美しき薬師に拾われ、助かる。彼に甲斐甲斐しく世話をされているうちに元々の美貌が戻ってきて――

処理中です...