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14 過去と再会①
しおりを挟むレーンの穏やかな声と、焦ったような女の声が聞こえてきた。
クレーム?
なんとか見れる姿に整えて、店に顔を出す。
若い貴族の女性とその護衛と思われる男がレーンに詰め寄っていた。
「いらっしゃいませ」
レーンが眉間にしわを寄せて対応していて、立ち位置を変わるように入り込むと、援護するとでも言うように腰を抱かれた。
「ウィロウ!ウィロウねっ?……私のこと覚えている?助けてほしいのっ!」
鈴が転がるような高い声。
私と作りが同じ顔。
彼女の方が当たり前だけど、貴族として洗練されているし、肌も髪もすべて手入れされている。
私の妹だった少女。
「イモージェン……こんなところまでどうしたの?」
あの家とのつながりを絶ち、これまで一度も連絡を取り合ったことはなかった。
「ずっと、ずっと探してた!……だって、私達双子よ?……魔女の家までは簡単にたどり着いたけど、ここを見つけるのに、かなりの小遣いを使っちゃったわ」
昔のまま、無邪気なところは変わっていないらしい。
「両親には内緒でずっと探していたの。だからここはバレていないわ……。あのね、私、望まぬ結婚をして死に別れた後、彼と本物の愛を知ったの。でも、父から再婚するように話を勝手にまとめられてね。……だからしばらく匿ってもらえないかしら?一週間、いえ、数日でいいの。……二人で逃げるのに準備を整える間だけ」
イモージェンは隣に立つ恋人の手を握り、二人で頭を下げる。
いきなり訪ねて来られて困惑もしているけど、二度と会わないと思っていた妹に対し、何かしてあげたいと思う。
「……この家は見ての通り、小さくて、ゆっくり休める部屋を用意してあげられないの。……この街の宿屋に協力してもらって……」
「いえ、私、こうみえて体は丈夫なの。庭に、幌のかかった荷車があったでしょう?……彼と二人、あそこで休ませてもらうわ。彼はずっと私の護衛だし、万一の時は逃げやすいと思うから……」
簡素だけど、明らかに町娘とは違うドレスを着た彼女に、荷車で寝るなんて耐えられるか疑問に思う。
「……あまり、目立ちたくないの。迷惑はかけないわ。……お姉さん」
「…………必要そうなものを探してくるから、この部屋で待っていて。今日は店が休みだから、誰も来ないはず」
あなた達は来たけど、と思って少しおかしくなった。
「お茶は……」
「あぁ、大丈夫よ。必要なものはいくらか持ってきたの。ありがとう、とっても助かるわ。来て早々悪いけど……しばらくここで仮眠をとってもいいかしら?」
無邪気に笑う彼女がソファを指差したから頷くと、厳しい顔つきの護衛が彼女にマントを渡した。
「特に何もいらないわ。あなたたちの楽しい休日を邪魔しちゃったわね。……どうぞ好きに過ごして。また夜にでも」
「レーン……」
私とレーンは台所をさっと片づけ、寝室へと移動した。
彼は妹達が来てからずっと眉間にしわを寄せている。
さっきまで私達はベッドにいて、邪魔をされたし彼はものすごく中途半端だろうと思う。
だけど、彼が口に出したのは別のことだった。
「ウィロウと、彼女のこと、教えて?」
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