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義兄の結婚編

1 突然届いた手紙

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「お兄様が結婚⁉︎」

 珍しくアンジーが大きな声を上げて、僕のところへ駆け寄った。
 義兄のジェイコブはアンジーより二つ年上で、この間会った時はお見合いの話すらでなかったのに急展開だ! 

「最近代替わりした伯爵家の娘で、ハリエットさんという方……家の事情でご苦労されたみたい」

 手紙には、婚約者としてすでに伯爵家に迎え入れていて、三ヶ月後の彼女の誕生日に結婚式をしたいからアンジーに手伝って欲しいということ。
 
 伯爵家には女性がいないから一生に一度の結婚パーティを、新婦本人に当日まで任せるなんて、大変な思いはさせたくないし、うるさい叔母達に口出しされたくないと。
 そういうわけで、社交シーズンもまだ始まらないし、僕達は協力させてもらうことになった。

 なんてったって、アンジーは侯爵家の厳しい教育をしっかり受けてきたからねッ!
 素敵なパーティになるはず。
 キリッとしたアンジーを見ることができるなんて夫としても誇りに思う。

 ジェイコブに、気を遣わないよう部屋はアンジーと一緒でいいと伝えたし。
 夫婦だしね。
 部屋は結婚前にアンジーが使っていた部屋がいいと伝えたし!
 これすっごく大事~。

 領地の屋敷というのも、小さい頃のアンジーを感じることができるだろうから僕も、僕の俺も楽しみなんだ!
 僕の夢がもう一つ叶いそう!
 しっかり、アンジーをサポートするよ!








 初めて会ったジェイコブの婚約者ハリエットは、ふくよかで優しそうな女の子だった。
 なんだかちょっと、昔のアンジーを思い出してしまう雰囲気で。

「はじめまして。これからよろしくお願いいたします」

 おっとりして、いい子そうだ。
 それに、おいしそうによく食べる。
 ちょっとどころか、似てるかも!
 お義兄さん、意外とシスコンだったのかな⁉︎

 もちろん僕にとって、アンジーが最愛の妻で唯一だから一瞬たりとも心が揺れることはない。
 かわいい妻と将来の義姉のおしゃべりしている姿は見ていて癒される。

 ジェイコブもそう思っているみたいで、なんだか柔らかい雰囲気になった気がする。
 政略結婚らしいけど、仲が良さそうだ。
 僕達ほどじゃないだろうけどね?

 今もみんなでお茶をしながら、ジェイコブが彼女に食べさせている。
 僕も負けじとアンジーに食べさせた。
 なんだろう、ここはとっても幸せな空間だ~!

 そんな中、ちょこっと打ち合わせ。
 ドレスは急いで準備していると聞いたし、これから招待客選びや招待状書き、料理などの順番に決めていくこととなった。
 
 






「ヴァル……私、もう少し太った方がいい?」

 念願のアンジーの部屋で二人きりになった時、突然そんなことを言いだした。

「アンジーはそのままがものすごくかわいいよ。僕はもっと太ってもいいと思うし……どっちもかわいいと思うんだ!」

 領地でおいしい料理を食べてちょっとふっくらして、今がとってもかわいいと思っている。 
 抱きしめるとふわふわで柔らかくて癒されるんだ。
 かわいい。大好き。

 でもアンジーがそんなことを言うのは、ジェイコブのふくよかな婚約者を見たからかな。
 
「アンジー、あのお義兄さんが婚約者に食べさせるとは思わなくてつい見過ぎちゃったね……アンジーが一番かわいいよ」
「……ありがとう。兄は私が小さい頃もあんな感じだったから……二人の仲が良さそうでよかった。私もヴァルが好きだし、今の私が好きだって思ってくれるならこのままがいいかな」

 なるほど。初めて会った時、無邪気に口を開けたのはそのせいか。
 ちょっと悔しいけど、今は置いておこう。 
 だって、未来の義姉をじっと見ただけで、ちょっぴりやきもち妬いてくれたから。

「僕の妻、かわいい!」

 僕がアンジー以外を好きになることなんて、ないんだけどなぁ!
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