女神様は異世界でめあわせたい!

能登原あめ

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46 ソシャゲが毎日楽しい私は、その世界に飛び込むことになった⁉︎

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* 先月周年祭のあったソーシャルゲームをイメージしています。六周年でした。ゲームはほどほどに楽しむのがいいですね(反省をこめて)








******


 私の朝のルーティンの一つ、通勤電車の中でこっそり宣戦布告する。
 ソシャゲの世界の話だ。
 宣戦布告と言っても城を奪い合う戦いで、いたって平和。

「……!」

 今日はうまくいった。
 心の中でガッツポーズ。

 宣戦布告は早い者勝ちだから静かに連打しなくちゃいけないし、周りから不審に思われないように涼しい顔で打つのは中々難しい。
 もう慣れたけど。
 
 可愛い女の子たちを鍛えて闘わせるのだけど、昼間は放置、夜に開戦。
 チャットでマスターからありがとうって可愛いスタンプが送られてきて、頬が緩んだ。
 
 今の私の癒し。

 画面の向こうにどんな人がいるかよくわからない。
 いつも敬語だけど柔軟で、頼りになって、26の私より年上じゃないかと思う。
 定時で帰れる人なのかな?

 結構年齢の幅が広いゲームらしいし、対応が大人だから。
 でもマスターをしているくらいだから、時間に余裕があるだろうし、自営業かリモートで仕事しているか、フリーター?

 かなり課金してるから無職や引きこもりってことはないと思う。
 学生ならバイト代すべてつぎ込んでいるだろうけど、ないよね。
 ないと信じたい!

 戦って負けた後も殺伐とすることなく癒し系で、バブみあふれる発言の多いマスターだから、心の中でバブマスと呼んでいる。

 バブマス、どんな人なんだろう。
 可愛い女の子アイコンだから、つい女の子を想像してしまうのだけど、華奢で繊細な男性をイメージしちゃう。

 このゲームのおかげで私は薄い本をあほみたいに買うのを止めることができた。
 眠る前にお気に入りを読むだけで満足している。

 読書にあてていた時間は女の子の育成と、クランのメンバーとチャットをしながら城攻めをするようになった。
 なんとなく広告で見かけて始めたけれど、正直男キャラがいないのにハマるとは思わなくてびっくりしてる。

 私は雑食オタクだったらしい。
 BLが好きなのは変わらないし、GLは……うん、無理!
 可愛い女の子たちだけじゃなくて、男キャラも欲しいなって思ったことはある。

 でも私にとってBLは特別枠だからこのままでいい。
 ちょうどバランスとれてると思う。

「自分の恋愛まで手が回らないけど……」

 もう何年彼氏がいないんだろう。
 高校の時にちょっとつき合っただけで、恋愛もよくわからないし、結婚できる気がしない。

 リアルにバブマスみたいな彼氏が欲しいなぁ。
 でもいるはずないよね、癒し系のバブみあふれる男子なんて。

「そんなことないわよ♡ 一歩踏み出せばあなたの世界は広がるのよ♡」
 
 誰?
 もしかしてあのゲームのレイヤーさんかな?
 ボンキュッボンでお姉さん系のキャラっぽい。露出も多めだし、視線が胸元に吸い寄せられるのを我慢した。

 あぁ、本当に画面から抜け出してきた少女みたい。声まで可愛いし。

「違うわよ♡ わたしは剣も弓も扱えないし、戦いは向いてないもの♡ 扇ならいいかな♡ あのね、あなたには出会いが必要よ」

「出会い……」

 会社と家の往復しかしてないし、今のままじゃ出会いなんてない。
 どうやったら出会うことができるんだろう。

「だからね、飛び込んでみようか♡ 絶対気にいるから♡ 後のことは任せてちょうだい♡」

 絶対気にいる?
 バブマスみたいな頼りになって癒し系のほっこりする相手?

「うんうん♡ 絶対気にいるわ♡ よーし、いってらっしゃーい♡」










「…………なにここ。畑だ」

 私はポツンと畑の真ん中に立っている。
 もしかしてきつねかたぬきにだまされた?

「あの~! どうされました?」

 後ろから声をかけられて振り向くと、大きな馬に乗った男。
 がっちりした体つきだけど、笑顔がさわやかで優しげな目元の癒し系。

 癒し系だ!
 突然の出会い。
 運命でしかない。

「今からそこに向かうから、そのままでいてくださいね」

 私が何も答えないでいたから、彼がゆっくり向かってきた。
 
 イケメンだ。
 イケメンゴリラだ。
 さわやかなイケメンゴリラ。

「……話は後で聞きますから、よければ馬に乗りませんか? もうすぐ日が暮れますから」

「はい、ありがとうございます」

 ひょいっと軽々持ち上げられて彼の前に座らされた。
 子犬を持ち上げるくらい軽々とした動作にキュン。

「ひとまず屋敷に向かいますね。私以外に女性もいますから怖がらないで」
「はい」

 畑のうねを壊さないように馬が小道をやや駆け足に走る。

「早く家に帰らないといけないんです。今夜は城取り合戦があって、相手はとても強いから備えないといけないので」

 時間はわからないけど、そういえばそろそろ私の遊んでいるソシャゲのショップのアイテムが入れ替わる時間。

 タイマーかけて毎日のぞくのは大半の人たちみんなやってると思ってる。
 だよね?

 彼がもし同じゲームだったら笑ってしまう。
 でも同じ趣味の人と運命の出会いかも⁉︎

 ゲームよね?
 本物の城取りじゃないよね?
 鎧とかカブトとかかぶってないし。

「なんてゲームですか?」

 私の質問に彼は照れ臭そうに笑った。
 あ、これきっと同じだ!
 女の子いっぱい出てくるソシャゲだから、言うの恥ずかしいよね!

 ご主人様って呼ばれるし。
 でも、私は大丈夫‼︎
 すこしも気にしないから!

「私もゲームが大好きなんです。結構いろいろ遊んでますよ。もしかして隠れた人気のあるゲームですか?」
「……そう、ですね。人気、ありますね」

 やっぱり!

「ゲームって楽しいですよね」
「そうですね。……サバゲーが一番好きです。友人たちとチームを組んで夜の山を走り回るんです、今夜も」

「サバ、ゲー……」
「あぁ、サバイバルゲームというやつで、銃で撃ち合って……えーと、タマはペイント弾と言ってカプセルに塗料が入っているものなのであまり痛くないです。汚れますが。山の中もある程度整地していて、小屋とテントが城代わりなので、城取り合戦と呼んでいます。楽しいですよ」

 あれ?
 戦闘民族……?
 そういえば馬に乗ってるもんね。
 へぇ……?

「今夜は妹が彼氏と参加するので、あなたも一緒に戦いましょう! 初心者大歓迎ですし、出入り自由、無言でもOKのチームなので! ほかにも女性はご近所さんがいるんですよ、息子さんと参加されます」

 サバゲーで無言……? 
 会話が楽しいのに大丈夫⁇
 闇の中を走り回るから金城迷惑にならないように?

 へぇ。
 なんかそれって隠密っぽくてかっこいいかも!

「危なくないようにちゃんと通信機器は全員持ちますし、私が指令を出しますから安心して楽しんでください」

 ふぁ~⁉︎

「やります! やりたいです!」
「わかりました。一緒に戦いましょう。私がリーダーなので心配ありませんよ。やれる人がやれる時にやればいいので。でも勝つとお酒が美味しいですよ」

 リアルバブマスが目の前に!
 ほんわかする笑顔に癒される。
 サバゲーだなんてワイルドなのにバブみある~。

 もしもこの後オラオラしてても許せちゃいそう。
 これって完ッ全に運命の出会いだわ。

 現代日本とそっくりなパラレルの世界で、私は農業を営むリアルバブマスとサバゲーを極めることになるのだった!







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