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34 詐欺に遭ったなんて信じられない私の前にまた詐欺師?
しおりを挟むSNSで知り合った恋人は、海外在住で世界を飛び回っていた。
最初の頃は毎日のように連絡を取り合っていたけど、4ヶ月経った今は安定期というか、お互い信頼しあっていたと思う。
一度も会ったことなかったけど。
先月、新しい支社を作るのにお金が足りないっていうから4百万貸したし、返しに行きたいけど日本の貸金庫に債券とか有価証券があるからチケット代も貸してほしいと言われた。
結婚するんだし、会いたいしビジネスクラスのチケット代を用意したよ。
新婚旅行はファーストクラスで彼が全部出してくれるって話し合っていたから。
だけど振り込んだ後から連絡がない。
「騙されてんじゃん」
友人はそう言って鼻で笑った。
「でも! きっと今は忙しいんだ……日程の調整してるのよ、きっと!」
被害届出しなよって言われたけど……まだ出してない!
信じたくない。
「ろまんす詐欺になんて、私が引っかかるわけないのよー。彼は忙しくて連絡とれないだけ! 私のこと迎えにくるんだからー!」
あと2ヶ月後に結婚する予定だったんだよ?
2人でリゾートウェディング。
私を驚かせたいからすべて任せてくれって、ドレスは知り合いにデザイナーがいるから好きなものを式の前に選んだらいいって。
信じたんだ。
私、信じちゃったんだよー!
「結婚して、幸せになりたかっただけなのにー!」
一人きりの今、枕に顔を埋めて叫んだ。
信じたくない。けど、きっと友人が言ったとおり私は騙されたのかな。
トータルで5百万くらい消えてしまった。
なんでこんなことになっちゃったんだろう……。
「うんうん……つらかったね。だけどね! あなたの運命の相手は別にいるのよ~♡」
え? 誰?
「私は縁結びの女神♡ あなたに本当のロマンスを教えてあげるわ♡」
夢? それなら本物のロマンスを味わいたいよ~。
恋愛しないまま三十路になっちゃったんだよ。
「それはね♡ あなたの運命の相手はこの世界にいなかったからなの♡ さぁ、行きましょう♡」
これは完全に夢だわ。
「会わせてください! ロマンスに飢えているんです!」
「もちろん♡ もう戻れないけど、必ず幸せになれるから♡」
一生夢の中にいてもいい~!
「よかった♡ お幸せに♡」
昨日はよく眠れた。
多分思い切り泣いてわめいてすっきりしたんだと思う。
なんかいい夢見ちゃった。
体を起こそうとして温もりを感じた。
実家の雑種犬、ゴンが布団に潜り込んできたみたいな温かさ。
でも、それよりもっと大きい感じ。
そもそもここは実家じゃない……っていうか、ここどこ⁉︎
「おはよう、僕の眠り姫」
金髪碧眼。眉目秀麗。
完成度高い男が私に言った。
元恋人よりイケメンだし、あれ?
またろまんす詐欺?
ないないない、こんな完璧な男が実在していて、私の隣に寝ていたとか。
まだ夢見てる?
夢の中で夢を見ているのかも。
……そんなことってある⁇
いや、あの女神ってもしや実在してて、詐欺グループの一員かもしれない!
一度騙されるとまた狙われるの?
どこかで情報漏れてるんだ……。
自分のベッドじゃないし、部屋だって違う。これって……誘拐?
混乱する私の頭をそっと撫でながら男が言った。
「よく眠れたみたいだね。僕は君が隣にいるせいで少しも眠れなかった。でも、すごく幸せだ」
私の手をとり、指先にキス。
イケメン、絵になる。
でも……夢にしては現実みたいな感覚。
どっちなんだろう?
リアルだったら身を守るものもないし、怒らせないようになんとか逃げなきゃ。
「……私お金持ってないんです。実家も貧乏で、頼れません。前回のボーナスは30%カットで(貢いだから)残ってないですし、給料も安くて……見ての通りもう30歳だし、若くないです」
貯金はほとんど底。
家賃の引き落としされたら、悲しいくらいしか残らない。
このところずーっとオタ活してなかったのにな。
高額取引されてる薄い本を持っていだけど、今は現金化してもうない。
私って本当にからっぽ。
なんかちょっと自分が可哀想になってきた。
「金の心配はしなくてもいい。すべて僕にまかせて。それにまだ30歳? 子どもだな」
そう言って笑う彼は余裕があって、信じてしまいそう。
私より年上みたいだからかな。
正直キュンとした。弱った心にしみるよー。
でも眩しすぎる! 格好良すぎるんだ!
「あの……女神、さんと会えますか?」
トラブルに巻き込みやがって!
人選間違ってるって文句言いたいわー。
「女神はこの先姿を表すことはないだろうけど、きっとどこかから見ているよ。……君とめあわせてくれたことに感謝している」
あの人、もしかして人身売買の女ボス⁉︎
いや、悪徳結婚斡旋業者?
なんかよくわからないけど、この人は金持ちで趣味が特殊なのかな。
高額払って私を買ったってこと……?
「難しい顔をしているが……何も不安に思うことはない。ただ僕の隣にいて、甘えてくれればいいんだ。……そろそろ名前を教えてくれる?」
「みさをです」
「ミサ・ウォデス?」
「みさ」
「ミサ、いい名だ。僕はロマン・ディ・ラザノ。ロマンと呼んで」
「浪漫」
「そうだ、いいね。ミサに呼ばれると自分の名が特別に感じられるよ」
浪漫……ロマンとはまた。女ボスはある意味間違ってない。
信じても……いいのかな?
だってこれはやっぱり夢を見ているんだよね。
「ミサ、君のためにこの屋敷を用意していたんだ。これから一緒に暮らしやすいように、改装してもいい。まだベッドしかまともな家具はないからね。どんなのが好き? 教えてくれる? あぁ、僕はいくつか事業を起こしていてね、今は半分引退して、ほかの奴にまかせているんだ。70年がむしゃらに働いてきたから、これからはミサと楽しい時間を過ごしたいんだ」
70年……?
「僕は長命なゾウガメ族の血を引いている。残りはちょうどミサと同じくらいのはずだ。……信じられないのかい?」
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やっぱり夢かもしれない。いや、夢よね?
「信じられないけど……信じてみたい」
「ミサ、僕と幸せな毎日を過ごそう。君が本当に信じてくれるように守るし尽くすよ。してみたいことはある? なんでも叶えてあげる」
わーぉ!
この夢、2度と冷めたくない!
「このベッドも気に入らなければ、買い直してもいい。5百万なんて指先一つで稼げるからね」
わーぉ!
5百万のベッド?
失ったお金のことはすっぱり忘れる。
私ここで幸せになるわー!
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