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8 オメガバースが好きだからって、ベータで参戦すんの? ええ〜、地味……。
しおりを挟む* 一応オメガバースの世界観です。主役は女の子です。
ざっくりとですが、男女の性別以外に
アルファ α(優秀な遺伝子を持つ、エリート、女性も相手を妊娠させることができる)
ベータ β(一番人口が多い、普通の人々)
オメガ Ω(発情期があり、男性も妊娠可能、社会的地位が低い)
******
家に帰るなり風呂に向かった夫のカバンから、ペロンと出ていたのは、離婚届。
まぁ、そうだよね。
結婚して五年、私達は顔を合わせるたび喧嘩していた。
もう、無理。
私はサインしてテーブルの真ん中に置いた。
私達は性格だけじゃなくて、趣味も食の好みも合わなかった。
インドア最高。
休みは家の中でゴロゴロしていたい。
毎週末、キャンプだ、釣りだ、山登りだってついて行けない。
最初はお互い趣味が二倍になるねって言えてたけど、やっぱ無理だ。
合わないものは合わない。
BLが好きだっていいじゃない!
クローゼットに隠してこそこそ読んでいたけど、これからは隠さない!
オメガバース最高。
二次元なら身分差も、階級差もごちそうでしかない。
「さて、荷物をまとめようかな」
「あら、ちょうどいいわ♡ あなたをオメガバースの世界へ送るわね。そこで素敵な夫と趣味を満喫するといいわ♡」
趣味を満喫?
「そう♡ ピッタリの相手がいるの。今よりも幸せになれるわよ! ここは私に任せて! ここにあるものはまとめて送ってあげるわ♡」
それならいい! だってここには宝が眠っているから。
「お幸せに♡」
えっと、今の誰?
「……ベータか。つまらないな」
よくわからない世界で、私は移民としていきなり判定を受けた。
いやだって!
ここは、アルファになって、オメガを手に入れて番になるのが、最高の楽しみ方だと思うんだ!
発情期きて、つらくて悶えている男子を囲ってだね。
あれやこれやしちゃうわけ!
それも、平均的日本人らしく、ベータということで妄想だけで終わったけど。
「チヨコさん、こちらへどうぞ」
これから、住民票やら住まいや仕事を御世話してくれるらしい。
あれは悪魔の囁きだった!
素敵な旦那様なんて現れるとも思えない。
でも、まぁ、日本にいてもあの終わった結婚生活を精算する日々はストレスたまるだろうし、こっちは新生活だし。
それに、いつのまにか身につけていたポシェットに手を突っ込むと、私の愛読書やら何やらが現れるんだから、それが心の支えになっている。
月に一人くらい、異世界から飛ばされてきて私のように役所で説明を受けるらしい。
先月は男の子で、オメガだったから本人も受け入れるまで大変だったみたいだし、すぐに発情期がきちゃって大変だったって。
はぁ。
そんなの近くで見ていたかった。
「聞いていますか、チヨコさん」
「はい、しっかり聞いてますよ!」
その男の子が、アルファと番になって今は幸せに暮らしているって話ね。
いいわぁ。
なんかドラマティック!
「じゃあ、移動しますよ」
そう言われて、目の前の役人が立ち上がり、そこでようやく彼をじっくりみた。
中肉中背、きっちり七三で分けられた黒髪に眼鏡のレンズが厚くてわかりづらいけど、やや茶色がかった黒目。 あっさりした顔。
あれ? 日本人?
首を傾げる私に少し口角を上げて、私の腕を取った。
「ほら、このままじゃ話が進まないですよ」
そのまま隣の部屋へ連れて行かれてサインをするように求められた。
「これ、なんの書類ですか?」
「これは、来週から役所で働いてもらうための契約書。チヨコさんには、異世界からやって来た人の相談窓口になってもらうつもりです」
「あぁ、その仕事ならやりたいです!」
今は私の方が来たばかりだけど、同じ世界の人と交流が持てるのはいいよね。
「はい、じゃあそこにサインお願いします。……ちなみに、平日十時から三時まで、週五日で、給料はこれくらい……です」
どうやら、この働きで日本の時給の三倍らしい。
もしかして物価が高いか、住まいが高い?
それとも実は激務とか?
「住居は、ここ……役人用の宿舎があって、部屋で料理もできるが、食堂もあるから作らなくても過ごせる。食事代は給料から差し引かれるが、外で食べるより割安だ」
「買い物は……」
「市場があるし、休みの日に案内しよう。それにもサインしてくれ」
言われるまま名前を書いていく。
「今更ですけど、日本語でよかったんですか、これ?」
「ああ、大丈夫だ」
気づいたらいつのまにか彼が砕けた言葉で話している。
「あの、市場の場所を教えてもらえれば、一人で行けますよ?」
多分。
なんだか、さっきからちょっと彼の雰囲気が変わった。
「いや、迷子になったりスリに遭ったり、闇市場に売られたら大変だろう? 俺はこれから、チヨコさんの同僚だし、夫だ。よろしくな」
「夫?」
「あぁ、今サインしたやつだ。女神様から聞いていたけど、俺達合うと思うよ」
悪魔の囁きは女神様だった⁉︎
素敵な夫と趣味を満喫って、この人と?
第一印象は悪くなかったよ?
でも。
「名前も知らない、です」
「俺はサブロー。日本からアクシデントに巻き込まれて半年前にやって来たんだ。俺もベータ、腐男子なんだ」
なるほど。しかしお互いの好みが合わないと戰が起きるぞ。
「サブローさんは何系が好きですか? ハーレムはOKの人? リバは? それから……」
笑いながら答えてくれたことは、私と方向性が一緒だった!
「よろしく、サブローさん!」
夫婦で趣味の話ができるなんてサイコー‼︎
でもさっそくその髪型はやめようか!
「じゃあ、俺達の家に案内するよ。……こっちの世界の薄い本、集めたんだ」
「はい! 楽しみです! 私もコレクション見せますね」
それから私達は異世界の相談窓口で数々のリアルな物語に遭遇することとなって、夫婦仲良く語り合った。
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