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番外編

ルルの恋のお話

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* おまけから、さらに二年後くらいのお話です。全四話、Rは最終話です。








******


 ララが十九歳になった時、住み込みで仕立て屋さんへ修業に行くことになって、パパと二人暮らしになった。
 昔から成人したら修業したいって言っていたけど、マミーに赤ちゃんが産まれてすごく小さくてかわいくて。

 でもどうしたらいいかみんなで悩んで協力してたら日々があっという間に過ぎたのと、私が十六歳になって留守番もできるねってことでララが笑って家を出て行った。
  いつまでも子供扱いで少し拗ねたのは内緒。

 最初はちょっとさみしいかなぁと思ったけど、昼間はよくマミーのところで二人に増えた子どもたちの様子を見ながら、マミーのお手伝いをしたり、雑貨屋に卸すハンカチに刺繍をしたりもする。

 この頃のマミーは、途中で止めやすいからと編み物専門で、ベビー小物から帽子や靴下を育児の合間に作るのが息抜きになるって言う。

 そんなふうに過ごして、夕方になるとパパが迎えにきてくれるか、一人で大丈夫だよって言ってもシロくんがおうちまで送ってくれる。
 パパが仕事で泊まりになる時はマミーたちのおうちに泊まらせてもらうのだけど、二人がとっても仲がいいから私も早く番が現れないかなって、毎日お祈りしてる。
 
 みんなが言うには、番が近くにいると甘くていい匂いがするって。
 町に行くといい匂いがするから、きっとどこかにいるんだって私が言ったらパパは屋台のお菓子の匂いとは違うんだぞって言った。

 ほんのちょっと寂しそうな顔するからぎゅっと抱きついて、絶対、近くに住んでくれる番をみつけるから安心してって笑った。
 パパもぎゅっとしてくれて、大好きだなって思う。
 番が特別好きってどんな気持ちなんだろう。
 好きの種類が違うのかな。

 それに、番って一人じゃないんだって。
 もしも同時に二人みつかったらどうなるか聞いたら、みんなが聞いたことないなぁって言う中、何人と結婚してもいい国があるんだよってなんともいえない表情でシロくんが言った。
 そんな国があることに驚くけど、みんなが幸せになれるならいいのかな。

 私も早く番と出会いたい。
 マミーとシロくんみたいになりたい。
 ララはパパがママという番を亡くしてものすごく悲しんだのを見てきたから、番が現れなくてもいいんだって言う。

 ママが亡くなったのは私が六歳の頃で、どうしてもう会えないのか分からなくてしばらく涙が止まらなかったけど、パパがいっぱい抱きしめてくれたしララもいてくれた。

 幼かったからララと見てきたものが違うのだと思う。
 仕事で一人前になることがまず一つ目の目標なんだって言うから、それがララの幸せなら私は精いっぱい応援したい。
 







「あ~いい匂いっ! ここに来るといつも幸せな気分になるんだよね~」

 屋台の並ぶ公園へと続く大通り、今日は一人でララの修業しているお店までお届け物。
 昨日はお休みでおうちに戻ってきたララだったけど、お気に入りのストールを忘れて帰ったから、ささっと渡しに行った。

 今日はシロくんもお休みだから、マミーのところにはお邪魔しないことにして、久しぶりのショッピングを楽しむ。
 明るい時間だし、慣れ親しんだ街だから危ないこともない。

 今夜は何か甘いものを買って帰ろうかな。
 夕食の準備もしてきたし、パパと二人きりだから、旬のタイタンがのったタマゴヤキを二切れ買おうかな。

 ここ数年流行っているお菓子で、甘く煮た果物が小麦粉と油と塩と水だけで作ったサクサクの生地の上にのっていて、おいしいのだけど、作るのにちょっと手間がかかる。

 いつもだとみんなが好きなイモノニッコロガシの店で買うけど、今日は冒険するつもり。
 だって、すごく甘くて美味しい匂いがするもの。

「あっ……!」
「みつけた」

 私は甘い匂いのする屋台の前で立ち止まった。
 一瞬でわかるってほんとなんだ。
 驚いた声を上げた相手に私は訊いた。

「あなた、私の番でしょ?」
「……そう、だ。…………こっちにきて」

 お店の内側に呼ばれて私は近づく。
 パパほどは大きくないけど、なぜか彼も熊獣人だと思う。

「兄さん、番が現れたからしばらく店を任せていい?」
「今日はもういいよ。こっちも売り切ったら早めに終わるから。あとで紹介してくれ」

 隣にお兄さんがいたことにも気づかず見つめていたから、慌てて頭を下げた。

「こんにちは」
「こんにちは、お嬢ちゃんかわいいな」

 大柄でいかついお兄さんにそう言って笑いかけられて、ぽかんとしていたら私は番の男の人にひょいっと縦に抱き上げられた。

「……悪い。兄さん、よろしく」

 歩き出した彼にぎゅっとしがみつく。
 気づいてもらえてよかったなって、お兄さんの呟きが聞こえた気がした。

「……ここなら邪魔されないから」

 歩いて五分ほどのところにある公園のベンチに下された私は彼を見つめた。
 くっついているのがすごく自然に感じていたから、今ちょっとさみしい。
 そしたら大きな手で私の頭を撫でた後、隣に座って手を握ってくれた。

「俺はノア。二十四歳だ。君は?」
「私はルル、十六歳……ノアさんとは八つ歳が違うんだね」
「……ルル。名前もかわいいな…………あと、二年もあるのか……」

 そう言われて首を傾げると、ノアさんは私の手をぎゅっと握った。

「あと二年結婚できないってこと。……結婚してくれるか?」
「うん、もちろん」
「今、抱きしめていい?」
「うん」

 私の脇の下に手を入れて膝に乗せてくれる。
 ノアさんは大きくていい匂いで腕の中にいると安心する。 
 私からもぎゅっと抱きついた。

 
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