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10 長い一日 ※
しおりを挟む無言のままベッドに座り、シルヴェーヌはガウンをゆっくり脱いだ。
「寝衣は脱がなくてもできるでしょ?」
明るい中で初恋の相手にすべてをさらすのは恥ずかしい。
小さくて可愛らしかったらもう少し自信が持てたかもしれないけど。
「……手短にする。横になってくれ」
ため息をついたセヴランがベッドの横に置いてあった小瓶を手に取った。
それから自身のガウンを床に落としてベッドに上がる。
かすかに揺れて身体が傾きそうになってシーツをつかんだ。それだけで動揺していることに気づかれたくない。
シルヴェーヌは顔を背けた。
「…………」
セヴランは寝衣をめくりシルヴェーヌの脚の間に身体を置く。
小瓶の蓋を開けて匂いを確かめると手のひらにとってからシルヴェーヌの脚のつけ根に塗り込んだ。
人が触れるのは初めてで太ももに力が入る。
香りの良いオイルのようで、よくすべって変な気分。
くすぐったいというのも違って、セヴランの細い指が動くたびに腰が揺れて逃げてしまいたくなった。
「……もう少し足すよ」
小瓶を傾けてさらにオイルを足すから、聞いたことのない音がする。
寝衣の裾は太ももにかかりセヴランは最低限しか露わにしていないのに、シルヴェーヌが動くからどんどんお腹の方へ生地がたまった。
「……あ」
そんなことに気を取られていたら密口に触れていた指が中に押し入る。
内側にも塗りこめて広げるような動きが、内臓を押されているようだった。
彼の細い指でも違和感を感じるなら、身のうちに彼自身を受け入れたらどうなってしまうのだろう。
未知の怖さを感じるし、彼が望んでなくても初めてがセヴランで嬉しい気持ちが勝った。これまで誰とも結婚しなくてよかった。
「このまま濡れないかと思ったけど」
セヴランが指を増やして慣らしていく。
違和感は消えないものの、時々外側の心地よく感じるところに指があたって、いやではないかもしれない。恥ずかしさは消えないけれど。
シルヴェーヌの口から吐息が漏れる。
指を引き抜き、セヴランは自分の下着を脱いだ。
勇ましく持ち上がった彼自身に怖気づく。
ぶら下がっているのも、大きくなったモノも見たことはあるけれど、体内に収まる大きさ、長さに思えない。
「嫌なら目を閉じていたらいい」
シルヴェーヌのこわばった表情を、セヴランは嫌悪感のようなものだと思ったのかもしれない。否定したいのに、口を開いたら怖いだとかやめてほしいだとか言ってしまいそうで唇を噛んだ。
「力は抜いていたほうが楽だ」
その言葉と同時にセヴランが動いた。
熱い杭が打ち込まれたみたいで、口を開いても声にならない息が漏れる。
セヴランが腰を引いてほっとした瞬間、奥深くまで一息に貫かれた。
身体を拓かれる衝撃に呼吸が一瞬止まる。
「…………!」
魔獣と戦って怪我をした時とも、崖から滑り落ちた時とも違う身体の中の熱い痛みに涙がこぼれた。
泣いてる姿なんて見られたくないのに次から次へとあふれてくる。
これはもしかしたら約束を破ったシルヴェーヌへの罰かもしれない。
それなら黙って受け入れるしかないのだろう。
「シルヴィ……?」
苦しそうな顔をしたセヴランに懐かしい呼び方で呼ばれて視線を上げる。
「まさか」
「……っ、ぅ」
セヴランが腰を引いて二人のつながる場所へと視線を向ける。
焼けるような痛み、わずかな出血。
「初めてだったのか」
セヴランの硬い声に視線をそらす。
王都に広がるシルヴェーヌの噂はたくさんあるけど、美形に目がない男好きだというのが根本にあるのだと思う。
生娘でなくても女侯爵との婚姻は権力や財力を天秤にかけても悪くないものだと思われていて、婚約者役がいるのに時々釣り書が届いていたから彼が噂を信じてもおかしくなかった。
討伐隊の面々もおもしろがっていたし、放置していたシルヴェーヌも悪い。
王都でどれだけ悪く言われてもシルヴェーヌの心に響かなかった。今までは。
言い訳をしたい気持ちがわきあがったものの、彼の見たすべてが真実。
今さら何も言うことはなかった。
「気づかなくてすまない」
セヴランがシルヴェーヌの下腹に手を当てた。
温かく、やわらかい熱がじわじわ伝わってくる。
治癒の力で傷を治してくれているのだろう。
痛みが消えると、入ったままのセヴラン自身の存在が気になってきた。
彼が吐精しないと終われないのだと思う。
「ありがとう。もう大丈夫だから、続きを」
「していい?」
「どうぞ」
痛みを感じないですむなら、目を閉じて終わるのを待とう。
「シルヴィ、キスしていい?」
「……どうぞ」
夫婦だからキスくらいは慣れたほうがいいと思ってうなずくと、セヴラン自身を奥深くまで収めながら身体を倒す。
柔らかく触れるだけのキスは幼い頃憧れていた通りで胸が熱くなる。
何度も口づけ、時々シルヴェーヌの唇を喰んだ。
まるで恋人同士みたいなキス。
濡れた口内に触れられるうちに、自然と唇が開いてしまう。
「噛まないで」
すきまをこじ開けるようにセヴランの舌が侵入してきた。熱くて生き物みたいに口内で動くから、頭の中がもやがかかったようにぼんやりしてくる。
彼の舌を噛もうなんて気は少しも起きないし、ただされるがままこの行為に圧倒された。
ゆっくりと唇が離れてセヴランに見つめられる中、シルヴェーヌは足りない空気を補充するように大きく呼吸する。
「シルヴィ、もしかしてキスも」
「…………」
「ごめん」
何で謝るのかわからなかった。
たくさん謝りたいのはこっちなのに。
「セヴ、謝らないで」
「シルヴィ、初めてなのに手短にすませるなんてできない」
そう言ってシルヴェーヌの返事を待たずに深いキスをした。舌が上顎を何度も撫でるからムズムズするような感覚に腰が震える。
お腹の中も受け入れた時とは違って重くて熱くて初めての感覚に戸惑ってセヴランの腰を太ももでぎゅっとはさんだ。
口内も体内も彼に奪われているのに少しも嫌じゃない。すがりつきたくなってしまう。
「シルヴィ……」
苦しげなセヴランの声。
何か言いかけたものの、再び唇を重ねてゆっくりと試すように腰をひく。
もう痛みもないし初恋の人に抱きしめられている今、安心感と幸福感、心地よいとさえ思った。
でもゆったりしていたのはそれまでで、セヴランの指が二人のつながる場所に触れ――。
「……ん」
セヴランが見つけた隠れていた秘核は、指によって刺激を受けてじわじわと甘い熱を内壁まで伝える。
このまま続けたら……。
「とけてしまいそう」
声に出したつもりはないのに、セヴランの耳に届いてしまった。彼はシルヴェーヌをとかすつもりで揺さぶり続けることにしたらしい。
「セヴ、……セヴッ、もう……あぁっ‼︎」
目の前が白んでチカチカ光る。
全身の力が抜けたのに、セヴランを受け入れている内壁だけが収縮して彼をもっと奥に誘うように動く。
短く息を吐いたセヴランの体がこわばって、それから身体の中に温かさが広がった。
多分彼も吐精したのだろう、これで終わり。そう思って安心したシルヴェーヌは目を閉じた。
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