お前はクズヒーローのはずだよな？［改稿版］

⑵

4 夏休みの過ごしかた ※

　
　夏休みに入り、自宅に戻って三日後にジェラルドの家から迎えの馬車が来た。
　予定より四日も早く、本人付きで。

　目の下にクマを作ったジェラルドが物憂げに降りてきて、俺の家族に丁寧に挨拶した後すぐに旅立つことになった。

　かわりに休みの終わる三日前に実家に戻って、そのまま一緒に学園へ行くことに。
　







「会いたかった……」

　馬車に乗るなり、ぎゅうぅっと抱きしめられる。
　ううぅ。
　筋肉が軋む。あ、骨かな？

「眠れないほど？」
「あぁ……だって、ずっと一緒に寝てたのに、独りは寂しい」

　そんなことをストレートに言われるとキュンときちゃう！

「そっか……よしよし」

　ぽんぽんと頭を撫でてみる。
　すると、俺の肩のあたりに頭をのせた。
　ちょっと、ナニコレ！
　甘えてくるとか、可愛いんだけど――！

「ウィルフレッドは？」
「……う、うん。そうだね、寂しかった……かな……」

　久しぶりの実家で家族とおしゃべりしたり、近くの友達とご飯食べたり筋トレしたり、ぐっすり眠ったり忙しくてそうでもなかった……とは言えない。

「俺は、すごく、寂しかった」

　ぺろっと首筋を舐められてくすぐったくて体をよじる。
　代わりにジェラルドの顔中にキスを落としてから、唇にちょんと触れた。

「犬みたいだな」

　すこし元気を取り戻したジェラルドに、にやりと笑われて。
　いや、俺もすこし思ったけどね？
　いやでも、顔中舐めてないし。

「拗ねるなよ、そんな顔可愛いだけだ」

　今日のジェラルドのほうが可愛いって思ったけど、言ったら酷い目に遭いそうだから黙ってもう一度、今度は舌を絡めるキスをした。

「会いたかった」

　ジェラルドとのキスは時を忘れる。
　気づいた時にはなぜかジェラルドの膝の上でお互いにズボンを下げていて。

「声、気をつけろよ」

　何で馬車にクリームなんて置いてあるのかな。
　これって、馬油？　まさかね。
　でも多方面に使えるから万能だけど。
　え？　本当に馬油なのかな……？

　それにしたって俺のアヌス、すごく従順。
　ジェラルドは一度も無理やり押し挿れたことなんてなくて、ぬちぬち音をたてながら、指で十分拡げてからファルスをゆっくり収める。

「どうしよう……ジェラルド、気持ち良すぎる」

　馬車の振動と、今にもバレるんじゃないかというスリル。
　対面座位になるのかな、これ。
　それと、ひさしぶりだからかも。
　まぁ、三日だけど。

「あぁ。俺も。……着くまでしばらく時間があるし、ゆっくり楽しもう」

　馬車の揺れに任せ、ゆったりと口づけを楽しみながら体を重ねた。
　いつもみたいな、頭が真っ白になるような行為じゃないけど、お互いを大事に思っているって、体から感じるってなんかスゴイ。

　なんか……今胸がキュンとした。
　なんか、たまんない。

「ジェラルド、大好きだ」
「……ウィルフレッド、愛してる」

　なんか、もう。俺って、めちゃくちゃ幸せじゃない？