お前はクズヒーローのはずだよな?[改稿版]

能登原あめ

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8 俺が攻めで、お前が受けで? ※微

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「恋人だろ?」
「コイビトぉ――⁉︎」

 当たり前のように言われて、思わず叫んだ。

「俺はお前が好きで、お前は俺のもので、あんなことして……違うのか?」

 待て。待て。
 俺の気持ちはどこ行った。

 あんなことされても、嫌じゃなかった。
 気持ちよかったし、まぁ、またしてもいいかな。
 俺を好きだと言うジェラルドはちょっと可愛く、みえなくもない。
 
 こうして膝の上に座って、ガッチリ腕を回されていても嫌じゃない。
 ジェラルドの匂いはいい匂いだし、うん。

 さっき先生に耳元で囁かれて、ぞわぞわしたのは気持ち悪かったから。
 先生に噛まれるとか無理ッて思ったしね。

 ジェラルドとは話も合うし、趣味も合う。
 食べ物の好みというか、お互いタンパク質とろうぜって感じだし悪くないんじゃない?
 
 あれ?
 相性いい?
 もしかして俺達結構、うまくやれる⁇
 なんかもう原作と全然違うし、オリジナル始まっちゃっているのかも。

 あー、ここに姉ちゃん来て欲しい。
 俺に教えて。
 実はここ薄い本の世界だから、俺からガンガン攻めていいんだって!
 (多分姉ちゃんならそう言うはずだよね? 下克上って俺から攻めるバージョンだよね!)

「ウィルフレッド」

 ジェラルドにしては戸惑っているような、自信なさそうな声。
 一人、長く考え込みすぎた。

「ジェラルド、俺、付き合ってもいいよ! まだ友達を超えた好きくらいの気持ちだから、その、アイシテルまではいってないけど、それでもいいなら」
「いい。俺の気持ちに追いつくくらい、いっぱい満たしてやる」

 ん?
 言い方、おかしくない?

「えーと、それは。愛で、ってことでいいんだよね?」
「それももちろん」
「それも?」
「それもだ」
「それ以外って……ナニ?」
「ふ、……」

 怖っ。
 
「あの、俺さ。男だから」
「わかってる。俺もだ」
「いや、だからさ。……役割的に、俺、ケツ使いたくないから」
「アァ、ナルほど?」

 ん?
 今、アナルってダジャレ言った?
 あ、違ったこっちじゃアヌスだった。 
 
「わかった。その時にどうするか試してみたらいいんじゃないか? 今すぐ決めなくても」
「うーん。嫌なことしないって、約束してくれるなら」
「約束したら、俺の恋人になるか?」
「…………なる」

 覚悟を決めて答えると、優しい声で名前を呼ばれた。

「ウィルフレッド」

 振り返った俺の唇にそれが触れる。
 
 あれ。
 もしかして今の、初めてのキス?
 やっぱり、嫌じゃない。

「ジェラルド、もう一度」

 体を向けて俺から唇を重ねると、わずかに目を見開いた。
 
 驚いてる。
 うん、攻める方が楽しいな。
 だって俺、男の子だもん。
 ほら、やっぱりここは薄い本の世界だ!

 固まっているジェラルドの頬を両手のひらで包み、思い切って唇を啄んでみた。
 
 意外と柔らかい。
 唇ではむはむするの、楽しいな。
 ジェラルドとならその先も大丈夫な気がしてきた。
 もちろん、俺が攻めるほうで。
 もう一度言うけど、俺が攻めるほうで。

「…………ジェラルド」

 キスの合間にそう囁くと、後頭部をがっちり押さえつけられた。

「ん――! んっ、ふぅ……」

 そのベロ生きてんの⁉︎
 なんか、変な気分になってきたッ!
 
「ウィルフレッド、覚悟はいいのか?」

 口の中を蹂躙されて腰が震えた。
 もうね、蹂躙って言葉はここで使うしかないよ。
 口内をぐるりと舐められ奥深くまで口を合わせるから、なんかもう食べられてる、そんな気がする。
 抗えない、この感じ。

 これって、キス?
 キスって頭爆発しそうになるんだっけ?

「ジェ、ラルドぉ、……っ、ん。……は」

 唇を重ねながら、ジェラルドがシャツを上に引っ張り上げ、ヘソに触れる。
 それからベルトを引き、ファスナーを下げてパンツの中に滑り込み、俺の硬くなったファルスの根元をグッと握った。

「だめっ……」
「こする前にイったら恥ずかしいよな」

 力の入らない俺に、少し笑いを含んだ言葉責めヤメテ!
 いつも早いわけじゃない(多分)!

「まだ我慢してろよ」

 俺を膝から下ろして椅子に座らせ、目の前にジェラルドがしゃがみこんでファルスに口づけた。

「ふぁっ⁉︎ ちょ! じぇあるどおぉ~!」

 次、ファルスに触れられたら、弾ける確率千パーセント。
 ジェラルドはクスッと色っぽく笑って、

「いつ出してもいいぞ。受け止めてやる」

 ナニ、言っちゃってんのー⁉︎ 
 そのキレイな顔に跪かれて、視覚情報ヤバイ!

 無遠慮に俺のファルスを咥えて舐め、じゅるじゅると吸いあげられた。
 あったかい口内で舌がぬるぬる動くし、俺、瞬殺。
 
 こんなの、しかたないって!

「……ぁっっ……!」

 そのままきれいに舐めとられて、意識がぼんやりした。

「今夜、俺の部屋で過ごそう。……明日、休みだろ。何度だってしてやる」
「……うん」

 今、何言われてるんだ?
 俺、快楽弱くない⁉︎

「よかった……ウィルフレッド、可愛いな」
 
 覆いかぶさるように抱きしめられて、お互い荒く息を吐いた。
 ジェラルドにもお返しにナニかした方がいいの、か?
 賢者タイム&困惑中。
 
「……何か気を紛らわすこと、話せよ」
「えっと。……今度行きたい、ところ、とか」
「……わからねぇ。今すぐイきたい」
「今すぐ? 校内デートして帰るとか? 薄暗くなってきたから肝試しにしかならないけど」
「…………本気で言ってるのか?」

 ジェラルドが俺に腰を押しつけてきて、ようやく勘違いに気づいた。

 荒ぶるジェラルドのファルス!
 俺だけスッキリしちゃって、気遣い足りなくてゴメン!

「ゴメン……カ、カンチガイ、シチャッテ。……ソノ…………ムカシ、昔さぁ! ジェラルドがよく内緒でおやつ分けてくれたでしょ? 果物を固めたジェリーみたいなの! あれ、本当、大好きだった! ばあやが作ってくれたんだっけ?」
「あぁ……アレか。……もう二度と食べれないな」

 ばあや、亡くなっちゃった⁉︎
 またしても、話題を間違えた!

 そんな俺を見て、ジェラルドがくすりと笑う。

「引退して、娘さん夫婦のもとにいるよ」
「そっか……残念だけど、しかたないね」
「多分、うちにレシピがあると思う……長期休みに俺と一緒に来い。他にも気に入ってたおやつ、あっただろ? マフィンとか、クッキーとか」
「いいの⁉︎ 本当においしかったんだよね! お腹痛くならなかったし、また食べたいなぁ……」

 今思えばバターも砂糖も控えめで、あっさりしてたんだ。
 サイズもちょっと小さめで。

「休みの間、好きなだけ食わせてやる。もちろん毎朝、乳酸菌飲料が飲めるぞ」
「行く! 絶対行くよ!」

 あれ?
 俺、餌づけされてる?

「さて、と。寮に戻るか」

 ジェラルドの穏やかな声が心地良くて顔をのぞき込んだ。
 あんまりにも優しい顔で笑っているから、ずきゅんと心臓を撃ち抜かれた。







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