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すべてを失った私を助けたのは奴隷商人だった ⑤ 終
しおりを挟む「ようやく……お前をまるごと抱きしめられる」
その言葉にライリーは首を傾げる。
「ずっと、そうしてたじゃないですか。それに、私の気持ちなんてわかっていると思いました」
鈍いとか、俺のこと好きだろって言われてきましたから、と続ける。
「鈍いのは本当だろ。それに、好きの度合いまではわからない。お前は顔を隠すから。これからはすべて見せてほしい」
「はい」
「もう、いつでもブレインって呼べよ」
「はい、ブレイン」
優しく見つめてくるから小さく名を呼ぶだけで恥ずかしくなって俯いた。
それなのに顎をつまんで唇を啄んでくる。
「まだ実感がわきません」
「少しずつ慣れてくれればいい。腹、空いてるか?」
首を横に振ると、ライリーを抱き上げて彼が部屋を移動する。
ブレインの首にそっとしがみついて身を寄せた。
「この半月、抱かずによく我慢したと思うよ。……お前は?」
顔を上げるとブレインの強い視線に囚われて心臓が跳ねた。
もう何も隠さなくてもいいとわかっていても、恥ずかしい。
「寂しかったです」
「そうか、その分も可愛がらないとな」
「え、あの……」
戸惑うライリーを寝台に下ろして腕の中に閉じ込める。
「今すぐ抱きたい」
「はい……どうぞ」
ライリーの言葉にブレインが笑った。
「どうぞって……そうかよ」
すとんとしたワンピースに着替えていたから、ブレインはためらわず裾からまくり上げて一気に脱がした。
薄暗い部屋でよかったとライリーが小さく息を吐いた。
「ブレイン。抱きしめてくれませんか?」
「いくらでも」
ブレインの腕の中にしっかり抱きこまれて馴染みのある匂いを吸い込む。
彼の胸に耳を押し当てて深く息を吐いた。
愛おしむように髪を撫でてからさらにきつく抱きしめてくる。
「少し、安心しました」
「…………」
「本当に、ブレインなんですね」
「鈍いな」
でもそこが可愛い、と漏らしたブレインに息を奪うような激しい口づけをしかけられた。
「んっ、は、んふぅ……ブレ、インっ」
キスだけでくったりと力の抜ける。
この数ヶ月は知らないところがないくらい体中を触れられてきた。
この先を、彼を求めて脚の間が潤んでいるのがわかる。
遠慮なく触れるブレインの指を簡単に濡らしてしまう。
「今すぐ挿れたい」
驚いて一瞬目を見開いたライリーだったけど、こくりと頷いておずおずと脚を開いた。
「ライリー」
かすれた声で呟いたブレインが目を瞑った。
それから欲望にけぶる瞳を向けてから、ライリーの脚の間に膝立ちなって勃ち上がった剛直を蜜口にこすりつける。
それからためらいなく一気に押し入った。
「ああぁっ……!」
身体をつなぐことをおぼえて初めて、中を解さぬまま挿入されライリーの腰が跳ねた。
痛みはないけれど、ブレインのモノが大きく感じてじんじんする。
でも心が喜んでいた。
体の内側が彼を歓迎してしっとりと包み、ぎゅっと締めつけてしまう。
ブレインが何度か苦しそうに呼吸した後で、ライリーの反応を見ながら揺さぶり始める。
「ひぁっ! あっ、ん、ブレ、イン!」
何度も彼の名前を呼ぶ。
体が彼を求めて満たされたくてたまらない。
これまでとは違う。
未来をともに過ごせるという明るい希望と、愛しい人にすべてを委ねることのできる交わりに心も揺さぶられる。
「……ブレインっ!」
好き。
もう心に嘘はつかない。
「ライリー、好きだ」
どちらからともなく唇を重ね、舌を絡ませる。
何も考えられない。
頭の中が真っ白になって身体がびくびくと震えた。
「……っ!」
ブレインが思いきり揺さぶり、ライリーの絶頂を引き延ばす。
「もぅ、むりっ、です! ん、はぁ、ブレインもっ、中で……出して、くださいっ……」
ブレインが一瞬止まりびくんと震えた。
「ライリー、はぁ。……もう、イっちまった。責任とれよ」
上から覆いかぶさって抱きしめられる。
「はい、わかりました」
ライリーが笑ってそう言うと顔中に口づけられる。
「お前は最初から可愛いかった」
「…………」
「きっと……これからもお前は可愛いだろう」
ブレインの言葉に瞬きして固まる。
ライリーは一度目を閉じてゆっくり息を吐いた。
「ブレイン、好きです。……どうか、これからもよろしくお願いします」
「俺の最愛の妻になってくれるのか」
「はい」
これからはあなたを信じてずっとそばにいます。
ライリーがそう囁くと、しばらく黙ったままぎゅっと抱きしめた。
「愛してる。ずっとそばにいろよ」
誓いのキスのように優しく唇を触れ合わせた。
それからの日々は穏やかで。
最初の頃は家の裏側の離れに住む老夫婦にここでの生活に必要なことを教わりながら過ごした。
彼らはブレインの両親の代から家の管理をしてくれていたらしい。
彼と家で食べる分の畑を耕し、その姿がものすごく似合わなくていつも笑ってしまいそうになって、ギロリと睨まれる。
ライリーも種を撒いたり、言われた通りに苗を植えたりして植物が育つのを見守った。
最初はちょっと小振りで不格好な野菜ができたけど、新鮮な野菜は味が濃くておいしい。
二人で台所に立つのが当たり前の毎日で。
おかげでライリーの料理の腕も日々上がったし、ブレインの作る料理も豪快で意外と美味しい。
いつの間にかブレインは真っ黒に日焼けして身体が一回りほど大きくなった。
もう農作業が似合わないなんて思わない。
ある時ライリーの実家を取り戻そうか? とブレインに言われたこともあったけれど首を横に振った。
ブレインが調べたところ、すでに叔父夫婦は屋敷を手放して下町で借金取りに見つからないよう怯えて暮らしているらしい。
家の中は空っぽにしてしまったし、手元には両親からもらったネックレスがあって、好きな人と一緒にいられて満たされている。
きっと今幸せを噛みしめているから過去のことだと割り切れるのだと思う。
それと。
今はそれほど目立たないけれど、お腹の中には命が宿っている。
わずかな胎動はまだライリーにしかわからない。
「今、動いてるのか?」
「はい、ここに」
ブレインの手を取り、押し当てるがなぜかピタリと動かなくなる。
お互い探りあっているみたいでおかしい。
「中に入りましょうか」
「お前は歩かなくていい」
「運動したほうがいいんですって」
そう言うのに抱き上げようとするから腕を突っ張った。
「かわりにキスしてくれませんか?」
「そんなことでいいのか」
見慣れた歪んだ笑顔をみせてからライリーに口づけた。
毎日思う。
今日が一番幸せ、と。
***
(ブレイン視点)
こじれてしまったのは、すべて始まりを間違えたからだ。
あの時、お前が女の子だとわかってる、ここから出してあげるからついておいでって言えばよかった。
契約して従者にするなんて言わなければ、気持ちを誤解されたりすることもなく……あんなにややこしくならないですんだはずなのに。
瑞々しい少女がなぜ少年男娼しかいない娼館にいるのか不思議で声をかけた。
長くこの世界に身を置くから、男女の見分けくらい簡単につく。
むしろ、あの娼館のオーナーは節穴だ。
部屋に入ったら念のため性別の確認をしようと思ったけれど、近くで見たライリーがあまりにも無垢で可愛かったから、頭に血が上ってしまった……と後から思う。
少女から女に変わる成長期で、初々しさの中に色気を感じた。
あの唇がとても美味しそうだったから、ちょっと脅して娼館はお前がいる場所じゃないと教えたかっただけだった。
あそこまでするつもりはなかったのに。
やってしまったことを埋め合わせるのに何倍もの努力と、時間が必要なのはこれまでの経験からわかっている。
どんなに忍耐力が試されようと、五年の間に自分を見てもらい、好きになってもらおうと……そこまで考えて。
一目惚れだったと気づく。
それから従者としてそばにおいて成長を見守ることにした。
船は男ばかりで危険だし、仕事柄連れ歩ける。
しばらくは男装させておこうとジェームズに事情を話して準備を頼んだ。
「部屋も一緒ですか? 馬鹿ですか?」
「あいつを一人部屋にしたら危険だろ? ここは男だらけだぞ」
「弟にも伝えておきます」
ジェームズが顔には出さないが呆れた声音で言った。
双子は同じ名前だから、人前では統一してジェームズと呼ぶが、兄をジェイ、弟をジェムとわけて呼んでいる。
「自分好みに育てるおつもりですか? 気色悪いですね。今後は背後に気をつけてくださいよ」
年下のジェームズたちとは兄弟のように育ったから、ブレインに向けてずけずけ言う。
彼らは本来明るく笑い上戸なのだが、若いし舐められないよう無愛想で通している。
十歳も年下のライリーのことを、まともな感覚の持ち主なら囲わないだろう。
ブレインだって今までにない行動をとっていることに気づいていた。
それに奴隷商人なんて敵ばかりだから、彼女を近くに置くことは犯罪に巻き込まれないよう気をつけないといけない。
「わかってる」
「初恋ですか? せいぜい嫌われないように頑張って下さい」
ジェームズたちの協力のもと、ライリーに男を近づけない生活が始まった。
彼女の気持ちがこっちに向くまで抱かない。
そう決めて、いつ見ても飽きない彼女の前で表情が緩みそうになるのを引き締める。
彼女は人馴れしていない子猫みたいだと思う。
爪は立ててこないけれど、おどおどしてこちらの様子を伺ってくる。
そっと抱き上げて緊張する体が落ち着くまでなだめる。
それからそっと唇を重ねた。
「ブレイン」
慣れないながらも口づけに応えてくれるライリーに欲が高まる。
想いは募るばかりだ。
そんな生活が三年ほど続いた頃から、ライリーの態度が軟化してきたように感じた。
夜にジェームズと出かけた後、ライリーの眠る寝台にそっと滑り込むと、寝ぼけながら擦り寄ってくるようになった。
昼間はすました顔で控えている。
寝台の上では口づけるだけでとろけるのに。
いつだって彼女に惹きつけられる。
同業者がわざとライリーを子猫ちゃんと呼ぶのも、一度ムッとした顔を見せてしまったからだが、あの男も自らの手で花開らかせてみたいのだと思う。
ライリーが一瞬でもなびいたらあっさり奪われていたことだろう。
そんな日がくる前に、妬いたライリーが可愛くてとうとう彼女を抱いた。
彼女の中で果てて、このまま子供ができて欲しいと願い、それから何度も抱いた。
そううまく子供はできなかったが、彼女が離れていこうとしているのを感じて、仕事の引き継ぎを早めることに。
ブレインは七歳の頃両親を亡くし、離れに住む家政婦とその夫に助けられながらひっそり暮らしていた。
一年ほどして、父の死を知った親友だったというジェームズの両親に引き取られて彼らの息子たちと一緒に育てててくれた。
奴隷を売買するという特殊な環境ではあったけれど、学校にも通わせてもらい、彼らとの生活は楽しく充実していた。
成人した後、ひとつの収容所の責任者を任されていたが、彼らの父が病に倒れた時、二人が成長するまでという約束であの立場を継いだ。
もう十分彼らならできる、そう思ってライリーとの新しい生活を思い描いた。
一人、勝手に。
「普通にプロポーズしたらいいじゃないですか?」
「それは断られる」
「…………」
そんな会話をジェームズとして、田舎に連れ帰ることを想定してライリーに選択肢を与えた。
どれを選んでも離れることはない。
予想通り田舎を選んだ彼女の気持ちがどこにあるのか、だんだんわからなくなる。
どのくらい好きなのか?
離れても平気なのか?
ただの刷り込みだったのか?
キスより先へ進めなくなった。
それでも。
一足先に田舎の家に向かい、彼女を迎え入れた。
今から始められたら、と。
彼女がここでの生活も自分も受け入れてくれるまで待とうと思った。
そんな心配もお互いの気持ちを伝え合うことで気持ちが通じ合い、彼女とつながりたくてたまらなくなった。
「今すぐ抱きたい」
一瞬目を見開いたライリーだったが、こくりと頷いておずおずと脚を開いた。
「ライリー」
素直に従う彼女にめまいがしそうだ。
彼女の脚の間に、膝立ちなると勃ち上がった剛直を蜜口にこすりつけた。
これ以上待てなくて、そのまま一気に腰を突き出した。
「ああぁっ……」
ライリーの腰が跳ねて、剛直をぎゅっと咥え込んだ。
もともときつい隘路がぴたりと吸いついて射精感を煽る。
ブレインは息を吐いてなんとかやり過ごした後、彼女を絶頂へ追い上げるべく一定のリズムで揺さぶり始めた。
「ブレイン!」
名前を呼ばれてますます欲が高まる。
内壁がしごくように剛直を締めつけ、引き抜こうとすると追いすがって早く吐き出せと蠢く。
たった半月でこれほどの忍耐力を試されるとは思わなかった。
「……ブレインッ!」
彼女に対してこんなに飢餓感に襲われることになるとは。
「ライリー、好きだ」
唇を重ね、舌を絡ませる。
また、彼女の体がびくびくと震えて絶頂を迎えた。
「……っ!」
誘われるまま剛直を子宮に打ちつける。
彼女の絶頂を引き延ばし、ギリギリのところで耐えた。
なのに、まさかのおねだりに一瞬で気が抜ける。
こんな失敗はしたことがない。恥ずかしい。
上から覆いかぶさって抱きしめた。
もう二度と離さない。絶対に。
可愛くてたまらない。
これからは従順な彼女がわがままを言えるくらいたっぷり甘やかそう。
できることは何でも叶えるから。
***
(その後の二人)
「お父さんのどこが好きかって?」
父親に似たアイスブルーの瞳をキラキラさせた愛娘が、ライリーを見上げた。
幼い顔が何か言いたそうにうずうずしている。
「ルーシー。今度、お父さんにも聞いてごらん?」
「あのね、おとうさんに、きいたらぜんぶすきだって! だからねっ、おかあさんは?」
「…………」
「おとうさんは、おかあさんにきいてもはずかしがっておしえてくれないよっていったけど、ほんとだね!」
夜明けに生まれたかわいい娘ルーシー。
二人の子どもとは思えないくらいおしゃべりで、まだ五歳だというのにひどくおませだ。
子ども相手に顔を赤くすることになるなんて。
「……全部好きよ」
「おかあさんもぜんぶすきなんだね! ルーシーも!」
「そうだね。だけどね、ルーシーのことが一番好きよ。……お父さんに内緒にしてね」
そう言って笑いかけると、嬉しそうにライリーの手を握った。
「ルーシーもおかあさん、だいすき。おやすみなさい」
額に口づけを落として髪を撫でる。そのままスーッと寝入るのを見守った。
寝顔も天使のようで愛おしい。
静かな寝息が聞こえてから、そっと部屋を出た。
「ルーシーが一番大好き、か」
「えっと……」
廊下に出てすぐにブレインに抱きしめられた。
どこから聞いていたのか彼の表情からはわからない。
「俺のことは全部好きなのに?」
そう言われて瞬時に赤くなる。
ライリーの頬を撫でて、じっと見つめる。
「ここで話していたら、起きちゃうわ」
「それは困るな」
ライリーを抱き上げて寝室へと向かう。
「俺が好きなところをひとつずつ言ったら、ライリーも答えてくれるか」
そんな恥ずかしいことできない。
「恥ずかしがる表情が好きだ」
「…………」
「戸惑って目を伏せるところも」
「…………」
「全部、たまらなく、好きだ」
「ブレイン、もう、やめて?」
「俺は一番好きじゃないんだもんな」
そう言われて、拗ねているのかとじっと顔を見つめた。
「あなたのことは順位はつけられない。特別なの。私の旦那様だから。……大好きです」
小さな声でライリーが囁くと、顔中に口づけが落ちてくる。
「そんなことを言われたら、なんでもしたくなる。……今夜は雨でよかったな」
寝台の上でライリーにのしかかった。
「叫んでもこの雨ならかき消されるだろう」
そう言って寝巻きの裾をまくり上げる。
「ブレイン」
「もう、濡れてる。期待したか?」
「ブレインに触られたら……しかたないでしょう?」
「いつまで経っても、……可愛いな」
唇を啄まれて、ぬるりと舌が忍び込んだ。
「んっ……ブレインっ、ぁ……」
身体中を撫で回る手が太ももをつかんで、大きく持ち上げた。
唇を離し、体の位置を下げながら脚のつけ根へと頭を向ける。
「ひくついてる。指じゃ物足りないかもな」
そう言っていきなり三本の指を差し入れた。
内壁が指を食むようにうごめく。
「んっ! あっ……」
「イきそうか? どうしてほしい?」
感じるところを的確に攻めてくるから簡単に快感が高まる。
その様子を見てぴたりと指の動きを止めたブレインに顔をのぞきこまれた。
「言わなきゃこのままだぞ? 言えよ。何でもするから」
この家に住むようになって、ブレインはどんなにささいなことでもして欲しいことは言えと聞いてくるようになった。
最初は戸惑ったけれど、だいぶ慣れてきたと思う。
でも、寝台の上で今も恥ずかしいのは、毎日好きという気持ちを積み重ねてどんどん好きになっているからかもしれない。
「指がいいか? 舌か? 俺のを挿れるか? もっと他のことでもいい」
言ってみろよ、と欲を孕んだ目で見つめてくる。
「……舌で、して」
やっとのことでそう言ったライリーの脚のつけ根に舌を這わせる。
襞を丁寧に舐めてから舌先で突起にそっと触れた。
「んっ……」
思わず腰が揺れる。
指はそのまま入っているから思わずぎゅっと締めてしまった。
「ライリー。このままでいいのか?」
涙目でブレインを見て、小さく呟いた。
「指と舌で気持ちよく、なりたい」
「わかった」
一瞬笑ってから突起に吸いつき、舌で転がしながらゆっくりと指を動かし始めた。
「ああ――っ!」
一気に絶頂に押し上げられて、びくびくと身体が震える。
「ブレインっ……! あっ、もう……や、またっ」
隠微な水音と、ライリーの嬌声が響く中、突起を舌で執拗に嬲る。
「何度でもイけよ」
それだけ言ってバラバラに指を動かしながら突起を甘噛みした。
「……っ! ……はぁ、はぁ、はぁっ」
思わぬ刺激に声も出ないで達してしまう。
ブレインの髪に震える手を伸ばして言った。
「もう、やだ」
「お前が望んだのに?」
「いじわるしないで」
ライリーが涙目で訴えてくるから、ブレインはもっといじわるしたい気持ちと優しくしたい気持ちの間で揺れる。
「ブレイン、あなたを下さい」
ざぁっと降る雨音の合間にそのささやきがブレインの耳に届いた。
もう一度言わせようか?
聞こえなかったと言って。
そう思ったけど、優しく甘やかすほうが、ライリーがぐずぐずにとろけて、甘い声を聞かせてくれるだろう。
「ライリー、愛してる」
口づけを落としてライリーの中に押し入る。
「私も、愛してます。大好き」
ため息を吐くように優しくささやく。
腰を押しつけるようにして奥を突くと、ぴったりと熱く締めつけてくる。
「雨……すごいな。午前中はゆっくりしてろよ。ルーシーも畑も俺に任せろ」
「どうして、今言うの?」
この雨はきっと朝まで続く。
「俺はまだイってない。……声あげても今夜は聞こえないだろ? 遠慮なく声出せよ」
恥ずかしがるライリーにそっと口づけを落としてから大きく揺さぶり続けた。
「おかあさんがおきたら、ルーシーがつくったっていうの」
「すごくうまそうだ」
「でしょ! おとうさん、あじみしすぎ! なくなっちゃう!」
「いっぱいあるだろ?」
「おとうさんのおくち、おおきいからすぐなくなるもん!」
甘い匂いに誘われて、ライリーがキッチンに入った。
「……おはよう。いい匂いがするわね」
「おかあさん、わたしがつくったの! いっしょにたべよう!」
食卓に並んだパンケーキを前に、ライリーが椅子に座ると、その膝の上にルーシーがためらいなく座る。
何気ない行為に幸せを感じて、そっと抱きしめてから頭のてっぺんにキスした。
「おいしそうね」
「うん、ぜったい、おいしいの」
向かいにブレインが座るのをみて、声に出さずにありがとう、と伝えた。
彼が口角を上げて頷いた。
「おまえたち、ほんとにうまそうだな」
パンケーキじゃなくてライリーの目を見て言うから思わず赤くなった。
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