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すべてを失った私を助けたのは奴隷商人だった①※微?
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* 奴隷商人と従者の私の改稿版、sweet versionです。読み返したらヒーローがヒロインに色々強要する犯罪者だったので、年齢を引き上げマイルドにしました。
囲い込み系、口が悪いヒーローです。
イケメン無罪がNGの方はバックしてくださいね!
この小話集の上のほうにある、
『屑な奴隷商人の従者になった私は、彼さえいればいいといつしか幸せを感じるようになったヤンデル話』とは別もの、こちらは甘めを意識しました。しかしすれ違いあり。
全5話(1話が長いです)
******
寝台に座る男がライリーの手を取りじっと眺めた。
「……お前、男娼なんてできるのか?」
男の強い瞳に射抜かれる。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
涙が浮かぶ。
涙を見られたくなくて目を見開いて、グッと唇を噛んだ。
「提案がある。俺の仕事を手伝い、俺の専属になれ。そうすればお前は俺以外を相手にしないですむし、この後すぐにここから連れ出してやる」
たくさんの男を相手にすることに耐えられるのか?
そう言ってライリーの手を男が握り込む。
娼館に残るのも、男について行くのもどちらも本音を言えば嫌だった。
でもどちらがマシかと考えた末、頷くしかなかった。
そもそもライリーは十八歳の華奢な女の子で、男娼になんてなれるはずはなかった。
二年前に両親を事故で失い、悲しみに暮れるライリーの元へ子どものいない叔父夫婦がやってきったのだ。
「ライリー、もう大丈夫だ。私たちが面倒をみるから心配するな」
そう言って商才のあった父の仕事を弟である叔父が引き継ぎ、自分が失敗した商売の穴埋めをした上で新しく事業を起こした。
そこにほとんどの金をつぎ込んだのだと思う。
ある日、二人がライリーを三十も歳上で何人もの妻を不慮の事故で亡くした男の元へ嫁がせて金を得ようと話を進めているのを聞いてしまった。
静かに部屋に戻り、しまっておいた両親からもらったネックレスを身につけてお守りにし、数日分の着替えをいつでも出ていけるようにまとめ、二人が出かけている隙にこっそりと屋根裏に保管されている小さな絵画や花瓶を売ってお金を用意。
そのまま港に向かうと、運良く翌日の夕方出航するという船に乗れることになったから、乗船券を購入して叔父夫婦の前ではいつも通りに過ごして夜が明けるのをドキドキしながら待った。
翌日は女学校に行くふりをした後、二人が仕事に出かけるのを待ち、少年に見えるように小柄だった父のパンツとシャツに着替えて地味なマントを羽織った。
買取商を呼び、叔父夫婦が自慢にしている家の中の高価なものを端から売り払い、屋敷の中はからっぽ。
最終的に栗色の髪もバッサリ切って売ることにして、手紙も残さなかった。
数日間の船旅が終わるまでは順調に進んだ。
奉公に出る少年と思われておやつやパンを分けてもらい、隅っこで眠っていても何もされることもなく。
だから、気が緩んでいたのかもしれない。
船から降りて職業紹介所を目指して歩いていた先で、派手な格好のお姉さんに話しかけられた。
「一人で船に乗って来たの? 偉いのね。そうだ、住み込みでいい仕事があるわよ。連れて行ってあげる!」
疑うことを知らなかったから、女に言われるままに荷物を預けて薄暗い室内で一人待たされた。
しばらくしてオーナーらしい四十前後の横に大きい男がのっそり入ってきて言う。
「名前と歳は?」
「ライリー、十八歳です」
「……本当に? 十四で通せ。じゃあ、これからよろしくな。がんばれば客を選べるようになるから、しっかりやれよ」
客を選べる?
意味がわからなくて、首を傾げたライリーに男がにやりと笑った。
「お前、さっきの女に売られたんだ。その金を返せるまで一生懸命、働けばここから出ていける。うちは優良店だから約束しよう。だから逃げようとしても無駄だぞ? 出口に護衛が立っているし、奴隷になるのは嫌だろう? さあ、ついて来い」
結局、身につけていた両親からもらったネックレス以外は、お金も荷物も女に奪われて手元にない。
その後は自分の部屋となる三段ベットの六人部屋に連れてこられ、暗い顔をした十代前半の男の子たちにじっと見つめられて居心地が悪かった。
その中で一番大きな男の子が言う。
「あとで紹介するけど……ほとんどみんな、親に売られてきた。慣れればなんとかなるから、お前も最初だけがんばれよ」
最初だけがんばる?
もう、みんな諦めているんだ。
「……逃げたらどうなる?」
「奴隷として売られていくのをみたことがある。運が良ければ、客が買い上げてここから連れ出してくれる。逃げるのは無理だ、やめたほうがいい」
黙り込むライリーに男の子が笑った。
「お前は女みたいな顔をしているから、人気が出るかもしれないな。ここは俺たちみたいな子どもを好きな男の客ばかりだから、買い上げてもらえるかもしれない」
男に抱かれる?
女の私が?
バレるのも時間の問題だ。
まずは目の前の男の子に話してみようと口を開いた。
「おい、ライリー! こっちへ来い」
話す前にオーナーに呼ばれて、ライリーは声のするほうへ向き直った。
オーナーの隣に立つ背の高い男は、なんとも言えない独特の雰囲気をまとっている。
あれは危険な男。
関わってはいけないと、本能が警笛を鳴らす。
「あいつに逆らうなよ」
男の子のささやきに頷き、オーナーのもとへ向かった。
「はい、なんでしょうか」
その男はライリーの全身を舐めるように見てから肩をつかんだ。
整った顔立ちにアイスブルーの瞳は冷たい印象を受ける。
「この子はいつから?」
「まだついさっき入ったばかりで十四歳のライリーです。まっさらな状態なのでよろしければ仕込んでから」
「いや、何も知らないのなら教えてみたい。これから部屋を借りて良いか?」
いきなりのことに絶望に目の前が暗くなった。
あごに指をかけて顔を上げさせられて目が合う。
商品を確かめるような視線に思わず息を呑んだ。
「たまには変わったものが食べたくなる」
男が手を離してすぐに、一歩下がった。
「本当にいいんですか? わかりました。では、こちらへどうぞ」
オーナーに言われた通りにしろと耳打ちされて、ライリーは引きずられるようにして部屋に入る。
後ろで鍵のかかる音がした時、現実に引き戻されて血の気が引いた。
「親に売られたのか?」
「いえ……知らない女に連れて来られました」
「それは、災難だな」
先ほどまで無表情だった男の口角がわずかに上がる。
ややゆがんだ笑みは顔が整っている分恐ろしい。
オーナーが敬語で話していたし、あの男の子も逆らうなと言っていた。
それから、手を握られて専属の従者になれと言われた訳だけど――。
「キスをしたことは?」
見つめたまま、ないですと答えると彼はわずかに目を細めた。
「念のため言うが。舌を噛むなよ?」
「噛みません」
ライリーの脇の下に手を入れて自らの膝の上に引き上げた。
不安定でどこに手を置いたらいいか困って、そっと肩に手を置く。
「いくつだ? 十四ではないだろう?」
「…………十八です。オーナーが十八で通せ、と」
「これが十四にみえないだろうに」
ライリーのあごをつかみ、柔らかく唇に触れた。
もっと粗野な振る舞いをされると思ったのに、優しく温かい感触に驚く。
案外キスなら大丈夫かもしれない。
そう思ったのに、
「口を開けろ」
ぬるりと舌が忍び込み身をすくませる。
まるで生き物のように自在に口内を動き回り、唇が深く合わさって息苦しさに喘いだ。
逃げたくなって頭を後ろにそらすと、追いかけてくる。
さらに後頭部を押さえられ、もう片方の腕は私の腰に周りきつく抱きしめられた。
「鼻で息をしろ」
「んっ……」
言われた通りにできなくて、頭がぼんやりする。
舌を絡めとられ、聞き慣れない水音が脳内に響いた。
腰に回された手がいつのまにか背骨をなぞるから、ぞわぞわとした感覚が這い上がる。
さっき会ったばかりの知らない男からの、食べられてしまうような深いキス。
強要されているのに嫌じゃないのは意外にも優しい手つきだからかもしれない。
口内に唾液を流し込まれて、何も考えられずにこくんと飲み込んだ。
そのまま唇が啄まれて痺れたように感じて喘ぐ。
「はっ、あっ……」
そのまま上顎を舌で撫でられて腰が跳ね、目の前の男にしがみついた。
「……お前、いいな」
舌を吸われて、驚いて身を離そうとしたけどすきまなく抱きしめられてさらに舌を絡めとられる。
キスがこんなに体力を失うものだと知らなくて、とうとうライリーの頭の中は空っぽになってしまった。
「男の喜ばせ方を覚えないとな」
そう言ってライリーの手を男の股間に導いた。なんとなく存在感のあるそれに気づいていたけれど、実際に触れると硬く、熱を持っていてなめらかな触り心地に感じる。
「ブレインだ。呼べ」
「……ブレイン様」
「寝台では、様はいらない。ブレイン、と」
アイスブルーの瞳に見つめられて、口が乾くのを感じた。
彼がサイドテーブルの上の小瓶を傾けてオイルのようなものをライリーの手のひらに広げ、再び剛直を握らせてその上からからも手を重ねて擦り出した。
今自分が何を感じているのかよくわからない。考えたくない。
経験がなくてもこの行為の意味もわかるから――。
「呼べよ」
「……ブレイン」
「いい子だ。もっと呼べ」
ささやくように、何度も名前を呼び続けるうちにブレインが吐精した。
嗅いだことのない匂いの素は雄のもの。
彼はタオルでざっとふきとり、それを寝台の脇に落とした。
「オーナー、この子は俺が貰い受ける。いくらだ?」
くったりとしたライリーを抱き上げて部屋を出たブレインは、オーナーに言った。
「その、まだこの子はまだ何も仕込んでいませんし、いつもお世話になってますから買取金だけで……これくらいでどうでしょう」
ライリーが友人と素敵なティールームに行く程度の金額。
それだけのお金で人生が変わってしまったことに衝撃を受けた。
「これは取引だ。最高級品の商品価格を払うから、このまま連れて行く。金は後で取りに来てくれ」
ライリーが船に乗る時に用意した金額の百倍多い。
「はいっ、毎度ありがとうございます! のちほどうかがいますので、これからもどうぞご贔屓に」
視線を感じて顔を上げると、同じ部屋になるはずだった男の子たちがこちらをじっと見ていた。
だけど、目が合うとみんなそらしてしまう。
もしかしたらこれは間違った選択をしてしまったかもしれない。
船の上の豪華な一室に通されたライリーにブレインが言った。
「お前女だろ? これからは俺のそばで過ごせ」
「気づいていたんですか?」
じろじろみていたし、あんなにピッタリくっついてキスしたからバレてしまったのだろう。
性別がバレた時に自分の身の上がどうなるか怖かったから、少し安心した。
「気づかないほうがおかしい。だいたい想像できるが、いいとこのお嬢さんだろ? 話してみろ」
頷いてこれまでの経緯を話すと、女から荷物と金は回収できるか探させてみると答えてくれた。
「ありがとうございます」
この人は相当お金を持っているけど、娼館に出入りしているわけだし、カタギには見えない。
でも何の気まぐれかライリーを助けてくれた。
「礼を言うのは早い。これから何をさせられるかわからないのに、お前はまだ疑うことを知らないのか」
そう言われてしまえば言葉が出てこない。
これまで暮らしてきた平和な世界じゃないことに慣れなちゃいけないらしい。
「俺はお前のことが気に入った。面倒な女はいらないがお前は欲しい。何か質問は?」
彼が求めているものに気づいて首を横に振った。まだ頭が回らない。
「女だと知っている奴は少ないほうがいいから、これからも男物を身につけてもらう」
船の中は男ばかりだから?
「つまり、このままずっと俺のそばにいればお前は守られる。それがいやなら一括で全額返済しろ」
「そんな……!」
大金すぎて使用人として働いたとしても気が遠くなるような長い時間拘束されることになる。
「いやなら五年の契約を結ぼうか。俺専属の従者になること。その後はお前が望むなら選択肢をやろう」
「選択肢って、なんですか?」
「どうしたいかその時に選ばせてやる」
いきなりここを出ても、悪いやつに捕まるだけだと笑われて、なんともいえない気持ちになった。
「わかりました。五年間、従者としてよろしくお願いします」
「五年と言わずに一生俺を楽しませてくれ。あぁ、あとで書面にしてやるよ」
今となっては他の選択肢はなかったのかと、勢いで家を出たことに後悔もある。
だけどあのまま残ったら、短命な妻の座に追いやられたんだから、今のほうがいいかもしれない。
口は悪いし、よくわからない人だけど、娼館から逃してくれた。
それにあそこで抱くこともできたのにライリーは少しも傷つけられていない。
「お前が過ごす部屋は俺と同じここだ。船員に紹介するまで不用意に部屋から出るなよ」
「わかりました」
それからしばらくして、表情のない男が衣類箱を持って入ってきた。
何も話さずに部屋の片隅に置いて男が去った後で、ライリーに中を確認するように言う。
「俺の従者ならそれ相当の格好をしてもらわないと困る。仕事してくるから、そこのシャワーを浴びてこれに着替えて待っていろ」
ブレインに渡された上質な男物のシャツとパンツを受け取り、彼が出て行くのをぼんやりと見送った。
それから胸元を目立たせない女物の下着を見つけ、部屋に備えつけられたシャワー室へと向かう。
「想像したよりなんとかなるかも」
女性として声は高くないし、耳がみえるくらい短髪だし、それほど凹凸もない。
でも喉仏もないし、筋肉量も少ない。
これからは男らしく振る舞うことも意識したほうがいいかもしれない。
一度に色々なことが起こりすぎて、ライリーはそれ以上考えるのをやめた。
ブレインが戻ってきた後はなぜか同じテーブルで一緒に食事をとった。
彼もシャワーを浴びた後、一つの寝台で抱えられて眠ることになって驚く。
「あの」
「このまま黙って眠れ」
ライリーはブレインに背を預け、お腹の辺りに腕を回された。
基本的な性の知識はあるから、眠れと言われて何も求められないのはありがたい。
でもずっと混乱している。
従者は同じ食卓で食べないだろうし共寝もしないと思う。
逃げ出さないようにするため?
そういえば専属だと一番最初に言われたのを思い出して緊張してしまう。
「力を抜け。抱き心地が悪い」
男の人と同じ寝台を使うのも初めてなのだから、すぐに力を抜けるわけでもない。
耳元で小さく笑われて、吐息がかかった。
「キスするか?」
「……っ! いえ、あの」
お腹にのせられていた腕がゆっくりと上がり、ライリーの唇に優しく触れた。
ぎゅっと閉じた唇に指を這わせてから指を差し入れ歯列をなぞる。
拒もうとぎゅっと歯を食いしばった。
「口を開けろ」
そう言われて渋々口を開く。
一本の指の侵入を許してしまえば二本目もたやすい。
ブレインの指が舌をつかもうとするから、逃げる。
すぐに指が追いついて口の中のいたるところを触れられて、昼間のキスを思い出した。
あれはなぜか嫌じゃなかった。
結果的に彼は娼館から救い出してくれた人だから?
顔がきれいだから?
キスが上手とか?
そんなことを考えたら、指を噛みそうになって吐息混じりの声が漏れてしまう。
少し変な気分になってきた。
体と感情は違うと言うから、初めての行為におかしくなっているのかもしれない。
「子どもは指しゃぶってれば眠れるだろ。ほら、噛むなよ。……吸えよ」
ライリーの様子が面白いのか、笑い混じりの声が耳元に届く。
よく考えることができなくて、言われるままに指を吸った。
「お前、かわいいな」
ライリーが何も考えずに指を吸っていると、腰のあたりに熱く硬いものが当たるのに気づいた。
そっと身体を離すと、ぐっと腰を押しつけてくる。
「お前がもっととろけるようになったら、初めてを貰う」
ブレインが低く甘い声でささやくから、わずかに体が震えた。
自分の反応もよくわからない。
振り向いて真意を確かめたいのに、指にはばまれて何一つわからない。
「誰にも奪われるな、お前は俺のものだ」
恋人でもないのにどうして優しくささやいて、髪を撫でるのだろう。
変な男。
でも嫌いになれないのはなぜだろう。
このまま眠れるわけがないと思ったのに、ライリーは疲れていたからか、いつの間にか眠りに落ちていた。
翌日から彼の仕事につき従うことになって、ライリーが売られたのとは別の娼館へ向かい、ブレインが育ちすぎた男娼を買った。
彼は労働奴隷を扱っていて、収容所と呼ばれるところへまとめて入れて、数日中には荷馬車で鉱山へ送るという。
その中で個人で買いたいという客がいれば取引もするらしい。
個人商店や大きな屋敷などで下働きのできる奴隷を購入していくことも珍しくないから、そのためにやや薄暗いけれど最低限の衛生環境は整えてあるようにみえた。
牢屋のような見た目だから、ずっとここにいたら気が滅入りそう。
彼らがどういった経緯で奴隷になったかわからないけれど、皆うつむいて覇気がない。
たまにじっとりとした視線や敵意を感じて身体がこわばった。
ライリーがこれまで住んでいた世界とはまるで違うし、自分もここに入れられたかもしれないと思うと、すっと背筋を伸ばして表情を引き締めた。
それから娼館で案内してくれた男の子が言っていたのを思い出す。
逃げ出そうとした子は奴隷にされた、と。
多分、この人に連れて行かれたのかもしれない。
ライリーも奴隷として売られたんだとあの男の子たちは思って目を合わせてくれなくなったのかも。
確かに似たようなものかもしれない。
「ライリー、一度船に戻る。お前はそのまま船に残れ」
「はい、わかりました」
囲い込み系、口が悪いヒーローです。
イケメン無罪がNGの方はバックしてくださいね!
この小話集の上のほうにある、
『屑な奴隷商人の従者になった私は、彼さえいればいいといつしか幸せを感じるようになったヤンデル話』とは別もの、こちらは甘めを意識しました。しかしすれ違いあり。
全5話(1話が長いです)
******
寝台に座る男がライリーの手を取りじっと眺めた。
「……お前、男娼なんてできるのか?」
男の強い瞳に射抜かれる。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
涙が浮かぶ。
涙を見られたくなくて目を見開いて、グッと唇を噛んだ。
「提案がある。俺の仕事を手伝い、俺の専属になれ。そうすればお前は俺以外を相手にしないですむし、この後すぐにここから連れ出してやる」
たくさんの男を相手にすることに耐えられるのか?
そう言ってライリーの手を男が握り込む。
娼館に残るのも、男について行くのもどちらも本音を言えば嫌だった。
でもどちらがマシかと考えた末、頷くしかなかった。
そもそもライリーは十八歳の華奢な女の子で、男娼になんてなれるはずはなかった。
二年前に両親を事故で失い、悲しみに暮れるライリーの元へ子どものいない叔父夫婦がやってきったのだ。
「ライリー、もう大丈夫だ。私たちが面倒をみるから心配するな」
そう言って商才のあった父の仕事を弟である叔父が引き継ぎ、自分が失敗した商売の穴埋めをした上で新しく事業を起こした。
そこにほとんどの金をつぎ込んだのだと思う。
ある日、二人がライリーを三十も歳上で何人もの妻を不慮の事故で亡くした男の元へ嫁がせて金を得ようと話を進めているのを聞いてしまった。
静かに部屋に戻り、しまっておいた両親からもらったネックレスを身につけてお守りにし、数日分の着替えをいつでも出ていけるようにまとめ、二人が出かけている隙にこっそりと屋根裏に保管されている小さな絵画や花瓶を売ってお金を用意。
そのまま港に向かうと、運良く翌日の夕方出航するという船に乗れることになったから、乗船券を購入して叔父夫婦の前ではいつも通りに過ごして夜が明けるのをドキドキしながら待った。
翌日は女学校に行くふりをした後、二人が仕事に出かけるのを待ち、少年に見えるように小柄だった父のパンツとシャツに着替えて地味なマントを羽織った。
買取商を呼び、叔父夫婦が自慢にしている家の中の高価なものを端から売り払い、屋敷の中はからっぽ。
最終的に栗色の髪もバッサリ切って売ることにして、手紙も残さなかった。
数日間の船旅が終わるまでは順調に進んだ。
奉公に出る少年と思われておやつやパンを分けてもらい、隅っこで眠っていても何もされることもなく。
だから、気が緩んでいたのかもしれない。
船から降りて職業紹介所を目指して歩いていた先で、派手な格好のお姉さんに話しかけられた。
「一人で船に乗って来たの? 偉いのね。そうだ、住み込みでいい仕事があるわよ。連れて行ってあげる!」
疑うことを知らなかったから、女に言われるままに荷物を預けて薄暗い室内で一人待たされた。
しばらくしてオーナーらしい四十前後の横に大きい男がのっそり入ってきて言う。
「名前と歳は?」
「ライリー、十八歳です」
「……本当に? 十四で通せ。じゃあ、これからよろしくな。がんばれば客を選べるようになるから、しっかりやれよ」
客を選べる?
意味がわからなくて、首を傾げたライリーに男がにやりと笑った。
「お前、さっきの女に売られたんだ。その金を返せるまで一生懸命、働けばここから出ていける。うちは優良店だから約束しよう。だから逃げようとしても無駄だぞ? 出口に護衛が立っているし、奴隷になるのは嫌だろう? さあ、ついて来い」
結局、身につけていた両親からもらったネックレス以外は、お金も荷物も女に奪われて手元にない。
その後は自分の部屋となる三段ベットの六人部屋に連れてこられ、暗い顔をした十代前半の男の子たちにじっと見つめられて居心地が悪かった。
その中で一番大きな男の子が言う。
「あとで紹介するけど……ほとんどみんな、親に売られてきた。慣れればなんとかなるから、お前も最初だけがんばれよ」
最初だけがんばる?
もう、みんな諦めているんだ。
「……逃げたらどうなる?」
「奴隷として売られていくのをみたことがある。運が良ければ、客が買い上げてここから連れ出してくれる。逃げるのは無理だ、やめたほうがいい」
黙り込むライリーに男の子が笑った。
「お前は女みたいな顔をしているから、人気が出るかもしれないな。ここは俺たちみたいな子どもを好きな男の客ばかりだから、買い上げてもらえるかもしれない」
男に抱かれる?
女の私が?
バレるのも時間の問題だ。
まずは目の前の男の子に話してみようと口を開いた。
「おい、ライリー! こっちへ来い」
話す前にオーナーに呼ばれて、ライリーは声のするほうへ向き直った。
オーナーの隣に立つ背の高い男は、なんとも言えない独特の雰囲気をまとっている。
あれは危険な男。
関わってはいけないと、本能が警笛を鳴らす。
「あいつに逆らうなよ」
男の子のささやきに頷き、オーナーのもとへ向かった。
「はい、なんでしょうか」
その男はライリーの全身を舐めるように見てから肩をつかんだ。
整った顔立ちにアイスブルーの瞳は冷たい印象を受ける。
「この子はいつから?」
「まだついさっき入ったばかりで十四歳のライリーです。まっさらな状態なのでよろしければ仕込んでから」
「いや、何も知らないのなら教えてみたい。これから部屋を借りて良いか?」
いきなりのことに絶望に目の前が暗くなった。
あごに指をかけて顔を上げさせられて目が合う。
商品を確かめるような視線に思わず息を呑んだ。
「たまには変わったものが食べたくなる」
男が手を離してすぐに、一歩下がった。
「本当にいいんですか? わかりました。では、こちらへどうぞ」
オーナーに言われた通りにしろと耳打ちされて、ライリーは引きずられるようにして部屋に入る。
後ろで鍵のかかる音がした時、現実に引き戻されて血の気が引いた。
「親に売られたのか?」
「いえ……知らない女に連れて来られました」
「それは、災難だな」
先ほどまで無表情だった男の口角がわずかに上がる。
ややゆがんだ笑みは顔が整っている分恐ろしい。
オーナーが敬語で話していたし、あの男の子も逆らうなと言っていた。
それから、手を握られて専属の従者になれと言われた訳だけど――。
「キスをしたことは?」
見つめたまま、ないですと答えると彼はわずかに目を細めた。
「念のため言うが。舌を噛むなよ?」
「噛みません」
ライリーの脇の下に手を入れて自らの膝の上に引き上げた。
不安定でどこに手を置いたらいいか困って、そっと肩に手を置く。
「いくつだ? 十四ではないだろう?」
「…………十八です。オーナーが十八で通せ、と」
「これが十四にみえないだろうに」
ライリーのあごをつかみ、柔らかく唇に触れた。
もっと粗野な振る舞いをされると思ったのに、優しく温かい感触に驚く。
案外キスなら大丈夫かもしれない。
そう思ったのに、
「口を開けろ」
ぬるりと舌が忍び込み身をすくませる。
まるで生き物のように自在に口内を動き回り、唇が深く合わさって息苦しさに喘いだ。
逃げたくなって頭を後ろにそらすと、追いかけてくる。
さらに後頭部を押さえられ、もう片方の腕は私の腰に周りきつく抱きしめられた。
「鼻で息をしろ」
「んっ……」
言われた通りにできなくて、頭がぼんやりする。
舌を絡めとられ、聞き慣れない水音が脳内に響いた。
腰に回された手がいつのまにか背骨をなぞるから、ぞわぞわとした感覚が這い上がる。
さっき会ったばかりの知らない男からの、食べられてしまうような深いキス。
強要されているのに嫌じゃないのは意外にも優しい手つきだからかもしれない。
口内に唾液を流し込まれて、何も考えられずにこくんと飲み込んだ。
そのまま唇が啄まれて痺れたように感じて喘ぐ。
「はっ、あっ……」
そのまま上顎を舌で撫でられて腰が跳ね、目の前の男にしがみついた。
「……お前、いいな」
舌を吸われて、驚いて身を離そうとしたけどすきまなく抱きしめられてさらに舌を絡めとられる。
キスがこんなに体力を失うものだと知らなくて、とうとうライリーの頭の中は空っぽになってしまった。
「男の喜ばせ方を覚えないとな」
そう言ってライリーの手を男の股間に導いた。なんとなく存在感のあるそれに気づいていたけれど、実際に触れると硬く、熱を持っていてなめらかな触り心地に感じる。
「ブレインだ。呼べ」
「……ブレイン様」
「寝台では、様はいらない。ブレイン、と」
アイスブルーの瞳に見つめられて、口が乾くのを感じた。
彼がサイドテーブルの上の小瓶を傾けてオイルのようなものをライリーの手のひらに広げ、再び剛直を握らせてその上からからも手を重ねて擦り出した。
今自分が何を感じているのかよくわからない。考えたくない。
経験がなくてもこの行為の意味もわかるから――。
「呼べよ」
「……ブレイン」
「いい子だ。もっと呼べ」
ささやくように、何度も名前を呼び続けるうちにブレインが吐精した。
嗅いだことのない匂いの素は雄のもの。
彼はタオルでざっとふきとり、それを寝台の脇に落とした。
「オーナー、この子は俺が貰い受ける。いくらだ?」
くったりとしたライリーを抱き上げて部屋を出たブレインは、オーナーに言った。
「その、まだこの子はまだ何も仕込んでいませんし、いつもお世話になってますから買取金だけで……これくらいでどうでしょう」
ライリーが友人と素敵なティールームに行く程度の金額。
それだけのお金で人生が変わってしまったことに衝撃を受けた。
「これは取引だ。最高級品の商品価格を払うから、このまま連れて行く。金は後で取りに来てくれ」
ライリーが船に乗る時に用意した金額の百倍多い。
「はいっ、毎度ありがとうございます! のちほどうかがいますので、これからもどうぞご贔屓に」
視線を感じて顔を上げると、同じ部屋になるはずだった男の子たちがこちらをじっと見ていた。
だけど、目が合うとみんなそらしてしまう。
もしかしたらこれは間違った選択をしてしまったかもしれない。
船の上の豪華な一室に通されたライリーにブレインが言った。
「お前女だろ? これからは俺のそばで過ごせ」
「気づいていたんですか?」
じろじろみていたし、あんなにピッタリくっついてキスしたからバレてしまったのだろう。
性別がバレた時に自分の身の上がどうなるか怖かったから、少し安心した。
「気づかないほうがおかしい。だいたい想像できるが、いいとこのお嬢さんだろ? 話してみろ」
頷いてこれまでの経緯を話すと、女から荷物と金は回収できるか探させてみると答えてくれた。
「ありがとうございます」
この人は相当お金を持っているけど、娼館に出入りしているわけだし、カタギには見えない。
でも何の気まぐれかライリーを助けてくれた。
「礼を言うのは早い。これから何をさせられるかわからないのに、お前はまだ疑うことを知らないのか」
そう言われてしまえば言葉が出てこない。
これまで暮らしてきた平和な世界じゃないことに慣れなちゃいけないらしい。
「俺はお前のことが気に入った。面倒な女はいらないがお前は欲しい。何か質問は?」
彼が求めているものに気づいて首を横に振った。まだ頭が回らない。
「女だと知っている奴は少ないほうがいいから、これからも男物を身につけてもらう」
船の中は男ばかりだから?
「つまり、このままずっと俺のそばにいればお前は守られる。それがいやなら一括で全額返済しろ」
「そんな……!」
大金すぎて使用人として働いたとしても気が遠くなるような長い時間拘束されることになる。
「いやなら五年の契約を結ぼうか。俺専属の従者になること。その後はお前が望むなら選択肢をやろう」
「選択肢って、なんですか?」
「どうしたいかその時に選ばせてやる」
いきなりここを出ても、悪いやつに捕まるだけだと笑われて、なんともいえない気持ちになった。
「わかりました。五年間、従者としてよろしくお願いします」
「五年と言わずに一生俺を楽しませてくれ。あぁ、あとで書面にしてやるよ」
今となっては他の選択肢はなかったのかと、勢いで家を出たことに後悔もある。
だけどあのまま残ったら、短命な妻の座に追いやられたんだから、今のほうがいいかもしれない。
口は悪いし、よくわからない人だけど、娼館から逃してくれた。
それにあそこで抱くこともできたのにライリーは少しも傷つけられていない。
「お前が過ごす部屋は俺と同じここだ。船員に紹介するまで不用意に部屋から出るなよ」
「わかりました」
それからしばらくして、表情のない男が衣類箱を持って入ってきた。
何も話さずに部屋の片隅に置いて男が去った後で、ライリーに中を確認するように言う。
「俺の従者ならそれ相当の格好をしてもらわないと困る。仕事してくるから、そこのシャワーを浴びてこれに着替えて待っていろ」
ブレインに渡された上質な男物のシャツとパンツを受け取り、彼が出て行くのをぼんやりと見送った。
それから胸元を目立たせない女物の下着を見つけ、部屋に備えつけられたシャワー室へと向かう。
「想像したよりなんとかなるかも」
女性として声は高くないし、耳がみえるくらい短髪だし、それほど凹凸もない。
でも喉仏もないし、筋肉量も少ない。
これからは男らしく振る舞うことも意識したほうがいいかもしれない。
一度に色々なことが起こりすぎて、ライリーはそれ以上考えるのをやめた。
ブレインが戻ってきた後はなぜか同じテーブルで一緒に食事をとった。
彼もシャワーを浴びた後、一つの寝台で抱えられて眠ることになって驚く。
「あの」
「このまま黙って眠れ」
ライリーはブレインに背を預け、お腹の辺りに腕を回された。
基本的な性の知識はあるから、眠れと言われて何も求められないのはありがたい。
でもずっと混乱している。
従者は同じ食卓で食べないだろうし共寝もしないと思う。
逃げ出さないようにするため?
そういえば専属だと一番最初に言われたのを思い出して緊張してしまう。
「力を抜け。抱き心地が悪い」
男の人と同じ寝台を使うのも初めてなのだから、すぐに力を抜けるわけでもない。
耳元で小さく笑われて、吐息がかかった。
「キスするか?」
「……っ! いえ、あの」
お腹にのせられていた腕がゆっくりと上がり、ライリーの唇に優しく触れた。
ぎゅっと閉じた唇に指を這わせてから指を差し入れ歯列をなぞる。
拒もうとぎゅっと歯を食いしばった。
「口を開けろ」
そう言われて渋々口を開く。
一本の指の侵入を許してしまえば二本目もたやすい。
ブレインの指が舌をつかもうとするから、逃げる。
すぐに指が追いついて口の中のいたるところを触れられて、昼間のキスを思い出した。
あれはなぜか嫌じゃなかった。
結果的に彼は娼館から救い出してくれた人だから?
顔がきれいだから?
キスが上手とか?
そんなことを考えたら、指を噛みそうになって吐息混じりの声が漏れてしまう。
少し変な気分になってきた。
体と感情は違うと言うから、初めての行為におかしくなっているのかもしれない。
「子どもは指しゃぶってれば眠れるだろ。ほら、噛むなよ。……吸えよ」
ライリーの様子が面白いのか、笑い混じりの声が耳元に届く。
よく考えることができなくて、言われるままに指を吸った。
「お前、かわいいな」
ライリーが何も考えずに指を吸っていると、腰のあたりに熱く硬いものが当たるのに気づいた。
そっと身体を離すと、ぐっと腰を押しつけてくる。
「お前がもっととろけるようになったら、初めてを貰う」
ブレインが低く甘い声でささやくから、わずかに体が震えた。
自分の反応もよくわからない。
振り向いて真意を確かめたいのに、指にはばまれて何一つわからない。
「誰にも奪われるな、お前は俺のものだ」
恋人でもないのにどうして優しくささやいて、髪を撫でるのだろう。
変な男。
でも嫌いになれないのはなぜだろう。
このまま眠れるわけがないと思ったのに、ライリーは疲れていたからか、いつの間にか眠りに落ちていた。
翌日から彼の仕事につき従うことになって、ライリーが売られたのとは別の娼館へ向かい、ブレインが育ちすぎた男娼を買った。
彼は労働奴隷を扱っていて、収容所と呼ばれるところへまとめて入れて、数日中には荷馬車で鉱山へ送るという。
その中で個人で買いたいという客がいれば取引もするらしい。
個人商店や大きな屋敷などで下働きのできる奴隷を購入していくことも珍しくないから、そのためにやや薄暗いけれど最低限の衛生環境は整えてあるようにみえた。
牢屋のような見た目だから、ずっとここにいたら気が滅入りそう。
彼らがどういった経緯で奴隷になったかわからないけれど、皆うつむいて覇気がない。
たまにじっとりとした視線や敵意を感じて身体がこわばった。
ライリーがこれまで住んでいた世界とはまるで違うし、自分もここに入れられたかもしれないと思うと、すっと背筋を伸ばして表情を引き締めた。
それから娼館で案内してくれた男の子が言っていたのを思い出す。
逃げ出そうとした子は奴隷にされた、と。
多分、この人に連れて行かれたのかもしれない。
ライリーも奴隷として売られたんだとあの男の子たちは思って目を合わせてくれなくなったのかも。
確かに似たようなものかもしれない。
「ライリー、一度船に戻る。お前はそのまま船に残れ」
「はい、わかりました」
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