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ヒロインのライバルに逆ハーはいらない②[改稿版]終 ※

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 そういう問題じゃないと思うのに私の服を脱がしながら唇を寄せていく。
 ここへ来る時、自分で脱ぎ着ができるワンピースを一着だけ持ってきて、シャワーの後に着替えていた。
 前開きで、胸元のくるみボタンを開けるゼノの手と息がくすぐったい。

「余裕がありますね。着替えを手伝っているわけじゃないんですよ。危機感がないですね」

 やりやすくていいですけどと、飽きれたように笑うけど、わかってますって言ったらきっと、すごい目つきで睨んでくると思う。

「ゼノ、好きよ。私、あの三人と結婚するよりゼノがいいもの」
「……………」

 ゼノが黙り込む。
 あれ? これって、逆プロポーズになってる?

「今のは、あの……なんて言うか……」
「なかったことになんてしません。しっかり聞きましたからね。わかりました、結婚しましょう。お互い成人してますから明日書類を提出しに行きます」
「そんなに簡単に結婚できるの?」

 肯定されて、日本がベースなのを思い出す。
 国王の許可とか、特別許可証だとか……ないんだ。

「メイジー、愛してます。ただの男の妻として、これまでと立場は代わりますが、私が守ります。……あなたを幸せにします」

 まるで誓いのキスをするように唇を重ねる。
 深く舌を絡め、抱きしめられたままベッドに倒れ込んだ。
 足元からワンピースを抜き取られ、身体中にキスを受けながら下着をはぎ取られてしまう。
 
「ゼノも……」

 私の言葉に恥ずかしげもなく全裸になって抱き合った。
 お互いの心音が速い。
 
「こうして……手に入ると思うと感慨深いです。メイジーが誰かを選んでいたら、私は即刻仕事を辞めていたでしょう」
「……よかった」

 ゼノに聞き返されたから答える。

「ずっとゼノは私のものだと思っていたから、いなくなるなんて考えたことなかった……だから」

 顔を上げると荒々しく唇が重なり、身体中をまさぐられる。
 背中を撫でていた手は、立ち上がった胸の先端を指で挟んで形が変わるほど揉みしだく。

 荒々しい仕草に、絶え間なく与えられる刺激に、息が切れた。
 先端を口に含まれる頃には喘ぐことを抑えきれない。

「ゼノっ、もう……それ、やめてっ」
「やめるわけが、ないです」

 そう言いながら、片手が下生えを撫でてするりと秘裂の奥に触れた。
 くちゅりと聞き慣れない音がする。
 はっと短く息を吸った。

「怖がらないで、下さい」

 ゼノの言葉に体から力を抜いた。

 初めては痛かった記憶しかない。
 それはもうぼんやりした過去で、今は新しい人生で。

「あの……優しく、して……?」

 自分の口から陳腐な言葉がすべり落ちて、びっくりして唇を噛んだ。
 ゼノが蕩けた笑顔を見せるから、恥ずか死なないで済んだけど。
 
「キスも、その先も、全部ゼノが初めてだよ……だから……」
「もう話さないで」

 ぎゅっと握り込まれた指先に口づけが落とされる。
 脚のあわいに再び触れられる。
 再びゼノの指が秘裂を開き上下に撫でる。
 愛液をまとわせ、陰核に触れた。
 
「んっ……!」

 痺れるような刺激に身体が跳ねる。
 私の反応から、ゼノが陰核を優しく撫でた。

「あっ……、やっ……」
「……本当にいやですか? 腰が揺れてます」

 少し笑いを含んだ声で話しながらも手を止めない。
 
「このまま一度達した方が後が楽です」

 唇を重ねられ、上下で連動するように刺激されれば身体が熱くなり、喘ぐことしかできない。
 前世と身体が違うから感じ方も違う。

「ゼノ……つらい……」
「イく感覚が、わかりませんか……?」

 もうちょっとお手伝いしましょう、と太ももに挟まれるように頭を下げ、恥ずかしいと思うまもなく陰核をぬるりと舐められた。

「ぁあっ」

 びちゃびちゃと音を立てながら舌を這わせ、ちゅっちゅっと吸いついて、耳からも犯される。
 びくびくと腰が揺れ、脚に力が入った。
 ふいに胸の先端を摘まれて、私の頭が真っ白になる。
 私がイッたって気づいているはずなのに、ゼノは舐めるのを止めない。

「~~っ! ゼノ……っ!」

 ようやく唇を離した、と思ったのに指で蜜口に触れた。
 今は何かをされても身体がピクピク動いて感じやすくなっている。
 
「痛かったら言ってくださいね」

 目の前でゼノは指を咥えると、その指を蜜口へ挿れた。
 
「ぅう……」

 痛みはないがなんとも言えない異物感を感じる。
 内側を広げるよう擦られて、さっきまでの気持ちよさが何処かへ行ってしまった。
 二本目の指が挿れられたところで再び、陰核を舐められる。

「んっ!」

 身体が痺れる。
 無意識に身体をひねってしまう。

「これ、好きそうですね」

 小さく笑ってから舌と指で翻弄する。
 私が涙を浮かべて喘いでいると、ずるりと指を抜いてのしかかってきた。

「メイジー……愛してます」

 私の膝に腕をかけて胸につくくらい折り曲げられた。
 そのまま蜜口にゼノの欲望が当てられる。

「痛かったら、噛んでも引っ掻いても叫んでもいいですからね」

 そう言って、躊躇いなく一気に貫いた。

「ぃあああぁーーっ……‼︎」

 あまりの痛さに涙が溢れる。
 ゼノは少しだけ顔をしかめた後、顔中にキスして涙も吸いとってくれた。
 だからといって、じんじんとした痛みはおさまらない。

「優しくしてって、言ったのにっ!」
「痛みを引き延ばすより、一瞬で終わらせたのです。貫通するのに痛い思いをしながら一時間かけてもよかったのですか?」
「……それは……嫌だけど.…」

 その時、ゼノがものすごく綺麗な笑顔を見せた。

「それに、私が与えたこの痛みを覚えていて欲しかったんです」
「やっぱり! ゼノのいじわる!」

 本格的に泣けてくる。
 確かに忘れられないけど、これじゃない。
 私は痛みに弱い。

「泣かせてしまい、すみません。……ああ、でも、すごくかわいいです」

 泣いている私に口づけを落とす。
 息ができなくて、何度も喘ぐ。

「ゼノ、ひどい……痛い……」
「あぁ、メイジー……痛いのは今だけですから、もう少しだけ頑張りましょう」

 ゼノが二人が繋がるところに手を伸ばす。
 そこに触られると身体が痺れたように感じて体温が上がった。

「ゼノ……あっつい……」
「そろそろ、動いても良さそうですね」

 ゼノの欲望がギリギリまで引き抜かれてほっとすると、一気に押し込まれる。

「んやっ……」
「……痛い、ですか?」

 とにかくよくわからない。
 自分の身体なのに、痛みと気持ち良さに襲われて混乱した。

「こっちに集中して」

 陰核を撫でられながら突かれて、じゅぷじゅぷと水音が鳴る。
 
「あっ……」

 思わず上げてしまった声にゼノはすぐ反応した。
 同じところばかり突かれてただ喘ぐことしかできない。

「まだ中でイくのは難しいと思ったのですが」
「ゼノっ……も、やっ、」

 身体が熱くて、気持ちいいのに苦しくて痛みもあって、おかしくなりそう。
 ゼノが突然胸を掴むと先端を指に挟んで締めつけた。
 思わぬ刺激にお腹の中がキュンとする。

「……っ!」

 ゼノが息を詰めて抽挿を早めた。

「あーっ、あーっ、あーっ!」

 私はもう声を上げることしかできないし、揺さぶられてわけもわからない。

「メイジー、愛してます」

 ゼノが私の中で欲望を吐き出した。
 



 

 いつの間にか眠ってしまった私はゼノの腕の中で目を覚ました。

「……おはようございます」
「……おはよ」

 さすがに恥ずかしい。
 布団にもぐってしまいたいのに、ゼノにガッチリ抱きしめられてそれもできない。

「……ゼノ、好きだけど。…………痛くてわけがわからなかった」

 思わず昨日の恨み言が口をついて出た。
 ニコニコしていて腹が立つ。

「ゼノは……、ゼノは素人童貞だったの?」
「どこでそのような言葉を?」

 しまった、機嫌を損ねた。

「違いますが、下手だと言うなら、これから名誉挽回しなくては」

 ん? 違いますって、真の童貞? 経験者?

「……そんなのわからない。……ゼノが言うように忘れられない初めての経験になったよ」
「次からはきっと痛くないですからね」
「きっと……」
「ええ、多分」
 




 こうして私たちは言い合いもするけどその分仲良しの夫婦になった。
 事後報告で両親や関わりのあった人たちにお知らせして、離れたところで平和な日々を過ごしている。
 まるであのゲームのエンディングみたいにあっさりと。
 
 ゼノの膝の上で、ルィボンからのお祝いの手紙を読んだ私は力なく笑った。

「どうしました?」
「何でもないよ……散歩に行こっか」

 手紙を胸にしまうと立ち上がってゼノの手を引いた。
 この手紙はゼノの目に触れる前に燃やしてしまおう。

「ちょっと気分転換したいな」

 いぶかしげな顔をするゼノの頬に口づける。
 ちらりと手紙に目をやったものの、一つ息を吐いてにっこり笑って唇を寄せた。 

「湖まで歩きましょうか」
「それならお茶も外でしたいな」
「……ではブランケットも持っていきましょう」
「昼寝ができるね」
「……まぁ、そうですね……」

 手を繋いで歩き出す。
 今が幸せだから、細かいことは気にしなくていっかな。





『メイジー様。
 この度はおめでとうございます。
 初めから隠しキャラのゼノ様一択でしたものね。
 失恋した攻略対象たちはシャオ様たちがお慰めしようと張りついていますからご心配なさいませぬよう。お幸せに。        
             ルィボン』








               終
              







***









「ゼノ、普通に話してほしいの、旦那様」

 結婚して一月ほど、名前は呼び捨てなのにゼノは相変わらず丁寧な言葉で話す。

「何だか、ちょっと距離を感じるから」

 そう言うと、ためらっていた彼も渋々頷く。

「十年以上、メイジーにその話し方をしてきたから……少し慣れない。やってみるが」

 少しだけぶっきらぼうに呟く。
 何だか少し不本意そう。
 
「なんだか……それ、いいよ……?」

 単純な私はときめいた。
 いつもと違う雰囲気に。
 ゼノをみつめると、にやりと笑われる。

「こういう俺も好き?」
「……好きみたい。ゼノのことは全部好きだけど」

 人差し指で顎を持ち上げられて唇を啄まれる。

「今夜はメイジーから誘われたの、かな」
「っ! そういうわけじゃないけど、最近ゼノは仕事が忙しいから、もうちょっと……あの、眠る時くらいくっついていたい」
「さみしかった? かわいいお誘い、ありがとう……嬉しい……」

 胸の中に抱きこまれて、規則的に打つ心音に安心する。
 
「好き……」
「……俺も、好き、だ」

 ゼノに抱きしめられると何もかもわからなくなる。
 私からも首に腕を回してしがみつく。

「ゼノと結婚できて、よかった」

 そっと持ち上げられてベッドに横たえられる。

「それ以上いうと、優しくできない」
「……」

 ゼノがこれに関しては優しかったことは、ない。
 服を脱がされながら私は思う。

「俺が熱くなるのもメイジーのせい、だ」

 荒々しく口づけられるだけで私の身体はゼノを求める。
 無意識に足を開いてゼノの脚に絡みつけた。

「どこでこんなことを?」

 足を絡めたこと?

「なんとなく? あの、私ゼノとしか……こんなことしない……よ?」
「仕事中も心配なん、だ。本当は連れていきたいが……メイジーが可愛すぎる、から」

 まだ少しぎこちなく話しながらも身体を弄る手は止まらない。
 胸の先端を押し込まれた。

「それ、やっ……」
「でも好きだろ? これ、触られるのが」

 胸の先端を噛まれて舐められる。
びくびくと震えてしまうのはそういうふうにゼノに仕込まれたからに違いない。
 好きだろ、とか私から頼んだのにいつもと違う言葉遣いにきゅんとする。

「ゼノ……」
「そうか、抱き潰してしまえば昼間も心配しなくていいな」
「やだ! 私もゼノと仕事行く!」

 ゼノの欲望が私の蜜口に当てられる。
 丸い先端だけぬぽぬぽと挿入されて水音が響いた。
 
「元気があったら、一緒に行こう」

 ずんっと一息に貫かれる。

「……あぁっ……ゼノぉ……」

 痛くはないけど、解されてないそこにきっちりとはまって苦しい。
 内臓が押し出されそう。

 どうして。
 いつも、こうなるの?
 優しくしてほしいと思うのに。
 馴染ませるように何度か腰を回されるだけで、はしたなく濡れてくる。

「俺だけのメイジー……」

 ゼノのみせる独占欲に溺れそう。
 探るように揺さぶられて、私は息を切らす。

「ゼノだけ、ゼノだけだからっ……中に熱いの、ちょうだいっ」

 十八の小娘の言葉に、ゼノが荒い息を吐いて激しく腰を振った。
 私が感じるところをがんがん突いてくるからひたすら喘がされ、あっという間に達してしまう。
 続けてゼノが欲望を吐き出した。
 ゆるゆると腰を動かしながら私を睨む。

「どこでそういう言葉を覚えるんだ?」
「……小説? シャオ様おすすめの……」

 これも本当。
 前世の経験は上書きされたのか覚えていない。

「また、シャオ様か……お騒がせな人だ」
「でも。王都を賑わせてるらしいから、私達は助かってるんだよね」

 初めこそ、三人に告白されたのに駆け落ち同然で結婚したと騒がれたらしいけど、ここまでその話は聞こえないし、両親は悲嘆にくれる親を装ってなにやらうまく乗り切ったみたいだし、ほとんど話したことのない歳の離れた跡取りの弟もいるから家の心配はしていない。
 よく勘当されなかったとは思うけど。

 時々届くルィボンの手紙に書かれていたのは、今はシャオが王宮でジンとラッキースケベイベントを起こして、その話題で持ちきりらしい。
 きっとアレだね、スカートの中に潜り込んじゃったんだ。
 二人だけの秘密イベントのはずだったけど。

 ジャンは、ルィボン家の婿養子になることが決まり結婚も秒読みのよう。
 よかった、よかったと思っていると体内から主張するナニかに意識が向く。

「メイジー? 浮気? 俺が下手くそ?」
「そうじゃないっ! いつもわけわかんなくなるから……その、上手だと思う、よ」

 何を言わせるんだ、と私は赤くなる。
 私の中のゼノの欲望がむくむくと大きくなった。

「……メイジーしか知らなくていいよ」

 童貞か!
 
「メイジーだけいれば、俺は幸せだ」

 腕を引かれ上半身を起こすと、ゼノの膝に座らされた。
 私の中にはゼノがいる。
 こちらも硬い背中を抱きしめた。
 そのまま唇を重ね、キスに満足していたら、下から突き上げられる。

「んーーっ!」

 私の声がゼノに吸い込まれる。
 ゼノの右腕は腰を支え、左腕は前に回され胸を掴む。

「胸触られるのが、好きだね。すごく……締まる、ほら」

 そう言って先端を摘んだりひねったり、荒く揉みしだかれる。
 肋骨に触れられてぶるりと震えた。
 そっちに気を取られると、今度はゆるりと腰を回して押し付けてくる。

「ゼノっ、おかしく、なるっ」
「それでいい」
「やだっ」

 胸に吸いつかれ、時々歯を立てられるから余計に私を狂わせる。
 さっき出されたゼノのものと私のがぬっちゃぬっちゃと音を立てた。

「メイジーを独り占めしたい。でもメイジーとの子どもがほしい」

 ゼノが下から激しく突き上げ、私の中で欲望が弾ける。

「私も……ゼノの子ならっ、産みたい!」

 その言葉にゼノがまた奮い立つ。
 この場合は奮い勃つ? 
 馬鹿なことを考えた私は空が白むまで揺さぶられ続けた。
 

 
 





******


 お読みいただきありがとうございました。
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