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屑でごめん⑥ 幸福[改稿版]※
しおりを挟む* ご都合主義でも、ハッピーエンド。
******
目の前の彼は、私とお揃いの色を纏っていた。
「どう、して……?」
「何も心配しなくていいから、私の手をとって」
私は迷う。
彼は、婚約者と来たのではないの?
そんな彼が私の耳元で囁く。
「…………」
「…………リョウ、なの……?」
貴族らしい言葉遣いも忘れて問うと、はにかんだ笑みをみせた。
「とっくに婚約解消してるんだ。……もう、彼女は新しい婚約が整ったから、俺といても大丈夫だよ。さぁ、手をとって」
いつから侯爵令息がリョウとなっていたんだろう。
私と寝る前なのか、後なのか。
確かめたくてたまらないし、謝りたい気持ちもあるし、後ろめたさも感じていて、戸惑ってしまう。
彼の手をとり、ずっと見つめたままダンスを踊った。
「そんなに見つめられると……色々と期待しちゃうけど?」
「……リョウ。……夢を見ているみたいで……」
私達はバルコニーへ行くふりをして、庭園へと向かった。
そのままぎゅっと抱きしめられて、私も彼の背中に腕を回す。
「巻き込んでごめんね……」
「つらいことさせてごめん……」
二人同時に謝りあって、見つめ合う。
彼が謝ることないのに。
「俺、ずっと好きだったからここでこうしてまた会えて嬉しい。……あの男から聞いてるし、自分が情けないと思う。嫉妬しないわけじゃないけど、これからずっと一緒にいて、俺が全部上書きしたい」
「ご……」
ごめんと言いかけて、飲み込んだ。
彼はきっと許してくれるし、私を責めないだろう。
それは私だけが楽になる方法だから。
「リョウさえよければ、私はずっとそばにいたい。屋上で過ごすうちにリョウの優しさに惹かれたし、あなたが生きていてくれることが私の望みだったから……あなたのためにこれからは生きたい」
「……好きだよ」
「私も好き」
彼が髪を撫で私の唇を求める。
「俺たち、若返った分だけ長く一緒にいられるな。……今夜はこのままうちに来て。男爵にはもう許可を得ているんだ」
男爵も応援してくれているなら、大丈夫なのかな。
この世界の身分差もあとで考えればいい。
忍び込むように彼の部屋へ向かう。
家令に、私を婚約者だと紹介しただけで誰にも会わなかった。
彼の両親は家を空けることが多いと聞いたけど、招かれもせずにこの場にいることに不安になる。
「大丈夫だよ、両親から許可ももらっているし、遠縁の伯爵家が養女にしてもいいと言ってくれているから、そこからこのうちにお嫁に来て。広すぎる家だから、俺も寂しいんだ」
「うん……準備がいいんだね……」
「……できる準備はしておきたかったから」
私がいつからって尋ねると、教えてくれないけれど、彼が悪戯っぽく笑っているからそのうち教えてくれるのかも。
「ねぇ、抱きしめていい? もっと近づきたいんだ」
彼のお誘いに私は頷く。
あらためて関係するのは恥ずかしい。
ドレスを脱がされ、私に触れる彼の手も唇もすべて優しい。
お互いの姿は変わっているけれど、愛おしそうにみつめてくる彼の瞳に私の身体はどんどん熱くなる。
蜜口からとろりと蜜が溢れて、彼が嬉しそうに笑った。
「かわいい……感じてくれて嬉しいよ……」
彼の長い指が私の内壁を探る。
「んっ……だって、好きな人、だと思うと……あっ……」
親指が花芯をとらえる。
彼の手首にまで蜜が滴り落ち、彼の指をきゅうきゅう締めつけた。
彼が私に乗り上げる。
彼が欲しいという気持ちはあるのに、反射的に挿入の痛みを感じるのではないかと身体が強張ってしまう。
もう痛くないのはわかっているのに。
「ゆっくり、するから……」
蜜口に当てられた陰茎は秘裂を撫でるだけで押し入ってこない。
「うん、いいよ……」
私を見つめながら腰を進める。
恥ずかしい。
甘い疼きしか感じない。
吐息を漏らす私の表情を見逃すまいとじれったくなるほどゆっくり繋がった。
彼は顔中に口づけてから、にっこり笑う。
「これからはずっと俺だけ感じてほしい」
もどかしくなるくらいゆっくりとした、大きいストロークに私の身体が震える。
「うん、リョウだけっ……! 気持ち、いい……!」
「そう、よかった……」
ほっとした彼が私を抱き起こす。
深く彼を受け入れて、思わずのけぞった私を強く抱きしめる。
「これからは、ずっと一緒にいよう」
たっぷりと舌を絡めるキスをしてからの緩慢な動きに私はじわじわと追い詰められた。
「安心して僕の子を身ごもって」
「……うんっ……リョウっ!」
彼に下から強く突き上げられ、あっけなく果てた私を追いかけるように、吐精する。
私はそれが嬉しくて彼の腰に足を絡めた。
「……結婚、するよね?」
ここまでして今さら弱気になるリョウが愛おしい。
「……うん、したい」
「大事にする」
幸せ。
彼といたら、いつかあの日々が夢だったと思う日も来るかもしれない。
「リョウと会えてよかった」
終
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全体的に癖の強い暗い話に最後までおつきあいくださり、ありがとうございました!
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