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女神に言ったらこうなった[改稿版]※
しおりを挟む* 女神シリーズの第一弾です。頭を空っぽにしてどうぞ。最後にif endがついています。改稿版はヒロインの口の悪さとツッコミをやや控えめにしました。
******
確かに言ったよ!
トラックに轢かれたからって異世界飛ばすなんてやめてって。
そんな話はたくさん読んだ!
私じゃなくてもいいでしょ、もっと現実に未練のない子にしてよね。
私、まだおいしいものいっぱい食べたいのって。
怒ったからって、女神様……。
これはないと思う。
「そなたが私への供物か……年増だが、まぁよかろう」
一人じゃ歩けないんじゃなかろうか、贅の限りを尽くして醜く太った白髪混じりの男が裸にベッドで待機中。
「女よ、近うよれ」
気づいた時にはこの部屋の隅にいた。
「きっと、技巧に優れていて天国を見させてくれるのだろう?」
期待値あげないで!
三十三年と三ヶ月と三日、生きて来たけどたいした経験ないから!
とりあえず、何者だ?
偉い奴だったら私の命が危ない?
「あの、恐れ入りますが……あなた様はこの国の王であらせられる方でございますか?」
男が腹の肉を揺らして笑う。
「ふむ、何も知らぬか。わしは王弟である。離宮で悠々自適の毎日を送っているのだ」
「……そうでしたか、貫禄がおありなのですね」
太りすぎ~‼︎
まさか使えないから隔離されてるとか⁉︎
「女神のやつもよくわかっておる。長年、異世界から愛妾を求めていたが、ようやく。ようやく見つけてくれたようだ」
女神様ーー‼︎
ごめんなさい!
私を返して!
「そなた……おいしいものが食べられればよいのであろう?」
女神様ーー!
叶えて欲しいのはそこではありません!
元の世界に帰れないなら生まれ変わってやり直したい。
それが叶わないなら、やれることをやるだけだよ!
「……私の名前はレイラと申します。殿下、とお呼びしても?」
ほんとは稲子なんだけど、誰も知らないんだから好きな名前にしてもいいよね?
似合わなくても気分の問題。
「レイラ……いい名だ。マロと呼んでおくれ」
呼んでもいいけど、愛妾は無理!
回避、回避~。
「それではマロ様、よろしくお願いいたします……その、今宵はマロ様のお考えやお好きなことをもっと知りたいと思います。そのほうが先々楽しいですよね」
流し目ってこんな感じ?
ちらりとやってみるけど、なんか違うな。
スルーされたし。
「私のことが知りたい、と? かわゆい奴だ」
マロは手元のベルを鳴らして食べ物と酒を用意させる。
やって来たのは冷たそうな侍女と護衛と思われる鋭い眼光の筋骨たくましい男。
私がいることに驚きもしないし、どちらも味方になってくれなそう。
二人が去った後、お酒を注ぎながら色々と聞き出した。
この離宮は森の中にあって、住み込みの者は料理人と下働きのみ。
他は王宮から歩いて交代制でやってくるらしい。
その数は昼間は従者、侍女、警備の三人のみ。
夜は風呂要員が一人増えるらしい。
王族なのに……平和なのね。
王宮が近いなんて、逃げるのが難しくなる。
明日は散歩して辺りの様子を調べなくちゃ。
「その……マロ様と結ばれる時、近くに人がいると恥ずかしいのですが……」
「意外とうぶなのだな。ふむ、初めての夜は護衛は玄関にでも立たせておこうか」
そんな日は永遠に来ないけどね!
「はい、ありがとうございます……普段はどちらに?」
「部屋の前だ」
「それは安心ですね。マロ様がいれば怖いものはありませんけど……さあ、どうぞ」
豪快にマロが笑う。
揺れるなぁ、腹も腿も。
おぉう、全裸じゃなくておパンツは履いていたらしい。
今夜は酔いつぶすからね!
食べ物は本当おいしいよ。
ここにずっといたら確実に太る。
いつでも食べられるように日持ちするものがたくさんあるし。
干し肉やドライフルーツにビスケット……それらをこっそりカバンに詰める。
それと、ペットボトルがないから空いた小さな酒瓶に水を入れた。
今夜、ここから逃げるんだ。
月のものが来たって言って避けていたけど、なんだかんだと十日も過ごしている。
私の寝室はマロの続き部屋で、今夜、とうとう二人の初めての夜。
うん、無理。
玄関前の護衛にさえ注意すれば逃げられるはず。
だって、この離宮は王宮を囲む外堀の外だから。
ものすごい平和で安全な世界みたい。
初日にいた護衛のアランさんだけは要注意。
あの人は私のことを怪しんでいる。
会うたび睨んでくるし、料理でもしようものなら貼りついて、率先して毒味までする。
私がマロといる時も変なことしないか、じーっと見つめてくる。
ご飯食べてる時に何をするというのかな?
こちとら毒草の見分けもつかんけど。
散歩する時もいつのまにか後ろを歩いてるし。
逃走しないためにか毎回、帰り道は抱っこされる。
がっちりしているから軽々抱き上げて安定感抜群、筋肉っていいね!
無心で胸の筋肉を押してたら、ふっ、とアランさんが笑った。
よくみればセクシーじゃないか、その笑顔。
キュンときたわ、今。
マロじゃなくて、アランさんのところに落として欲しかったなぁ。
まあ、もう仕方ないけどね。
アランさんは堅物そうだし、手助けはしてくれないだろうな。
そして、夜になって警備が交代した。
今夜は一番年長のオジーさんだから、お酒の差し入れするの。
永遠に来ない初夜の祝杯~!
なんだかうまくいきそう。
にこにこしたマロが大らかに言った。
「今夜は特別な夜だから、先に浴場を使うがよい」
この離宮には特大の浴槽のついた豪華な浴場があって、そこで毎晩、従者と風呂要員のお世話でマロは長風呂を楽しむ。
私も勧められていたけど、いつも部屋についた小さなお風呂でさっと済ましていた。
ほら、月のものって言ってたし。
「いえ、そんな……先だなんて、恐れ多いです」
風呂なんか入ったら逃げるのに湯冷めしちゃうわ!
「わざわざレイラのために皆がお祝いの準備をしたと言う……めでたい日だから、さぁさぁ」
どうして祝おうと思うかな!
辱めだから、これぇ!
「……かしこまりました。お先に失礼いたします。あの……恥ずかしいのでのぞかないでくださいね?」
「ふぉっ、ふぉっ、夜を楽しみにしておるよ」
マロが腹を揺らして豪快に笑った。
冷たい侍女には一人でできると言って出て行ってもらい、ささっと花びらの浮いたいい香りの風呂に入った。
マロのところへ顔を出し、挨拶する。
短時間で出たからマロが驚いていた。
「とてもいいお湯でした。ありがとうございます。……マロ様、ゆっくりなさってくださいね。私もこれから……その、色々と準備しますから。……夜は長いですもの、ね?」
笑顔で言えば、マロも鷹揚にうなずいてくれた。
ほんとにいつも通りゆっくりしてね、お願いだから。
部屋に戻ると、ベッドの上にはひっらひらのネグリジェ。
それを横目に動きやすい服に着替えた後、髪が濡れてるから頭に布を巻いた。
お風呂の前、オジーさんにお酒渡したら玄関の内側に座り込んでいた。
よしよし。
侍女に髪の手入れと肌の手入れとか言われたけど、私が断ったらちょっと仕事が減って嬉しそうだったし、この時間は普段厨房でご飯を食べるか休んでいるはず。
カバンを背負ってそっと窓を覗く。
よし。
私は窓枠をまたいで森へと向かう。
今のところ、順調。
暗い森の中を通るのは怖いけど、マロと寝るよりマシ。
マロが痩せてた頃は夜な夜な散歩してたと言うくらい、危ない動物は出ないって聞いたから、今もそうだと信じよう。
このまま真っ直ぐ進めば王都のはずれに出るはず。
うっすらと明かりが見えてきた。
もう少し。
治安はいいらしいから、今夜乗り切ったらなんか仕事もあるでしょ。
だから気が抜けていた。
「レイラ」
耳元で名前を呼ばれて後ろから抱き込まれた。
「逃げられないぞ」
アレンさんの声が聞こえて、私の意識がぷっつり途絶えた。
目が覚めるとふわふわのベッドに寝かされていた。
マロの元に戻されたんだ……。
さすが、アレンさん。
でもね、私はそれを望んでないんだ。
ゆっくり起き上がる。
「ここ……どこ?」
周りを見渡すとシンプルな木工家具が配置された家にいた。
離宮じゃない?
ベッドから降りようと足を下ろす。
ジャラリ。
なに、これ?
足首につけられた鎖の繋がる先を探す。
ベッドの脚でなく、アレンさん、あなたの足ですかぁ⁉︎
どして、足にしちゃったかな?
トイレとか困るよ?
椅子に深く腰かけ腕を組んで眠る姿は……意外とかわいいじゃないか、熊みたいで!
「アレンさん……」
私の少し呆れた小さな声でパチリと目を開け、何度か瞬きした後、口を開いた。
「あそこから逃げたかったのか? 殿下から?」
低い声が耳に届く。
「もっと早く言えばいいものを」
「……そしたら助けてくれたんですか?」
まさかね、と思って私は首を傾げる。
「無論。行くあてはあるのか?」
「いえ……とりあえず住むところと仕事を探すつもりですけど」
「……ここにいればいい」
「ここはどこですか?」
「俺の家だ」
俺の家、じゃなくて王都なのかもっと離れてるのか知りたかったけど。
アレンさんがベットの脇に腰かける。
「ここにいろ」
「いえ、あの……」
「ここしかない」
押しが、強い!
私は王家に楯突くつもりもないし、監視してもなんも出てこないよ?
「名前は? レイラじゃないだろ」
迷いなく断言された。
やっぱり、似合わない?
それとも呼ばれても誰それ? あ、私か、ってなってたの、顔に出さないようにしてたけど気づかれた?
そして、近い。
私の腰に腕を回し、顎を掴む。
あれ? これって……?
勘違い? 自惚れてもいい?
もしかして……。
「本当の名は?」
「……稲……っす」
「イネス?」
「…………はい」
イネス、と優しく舌で転がすように呼んでから私に甘く口づけた。
しっとりと柔らかい唇にうっとりする。
いや、いや、いや、慌てて早口で稲子です、って言ったつもりがイネスになっちゃったけどね!
今日から私はイネス、イネス、イネスです……。
よし、イケる!
「アレンさん……私、捜されてないですか?」
「……さぁ? 俺はお前を連れてここまで逃げて来たからわからんが」
「ここは王都ではない……?」
「王都にほど近い俺の田舎だ。幸い、お前の顔は知られていないからここまで来たところでみつからんだろう。それに、殿下は去るものは追わないから次の愛妾を探すだろうな」
え? じゃあ、もっと違うやり方があったかもしれないのに!
「アレンさんの仕事は……」
「昨日付けで辞めている。もともと田舎に戻るつもりだったからな」
殿下に抱かれるお前を見たくなかった、と私の髪を撫でてから口づける。
「アレンさんて……」
もしかして私のこと好き?
そう問いかける前に仰向けに倒された。
「初めて見た時から好きだった」
急展開。
「お前を逃さない。イネス、幸せにする」
「こういうことは、もう少し知り合ってからに……」
「十分、知り合ったと思うが。俺が嫌いか?」
「……いいえ」
筋肉は好きだと断言できるけども。
「イネス、お前がいない世界は考えられない」
きゅうん。
心臓が止まるかと思ったよ!
わたしに懇願してくる男なんてこの先現れないんじゃない?
この世界で出会った男の中では一番好ましいと思うし……出会いなんてほぼなかったけどね。
私が黙っていると、顔を撫でて時々触れるだけの口づけを落とす。
拒まない私の心はもう、答えが出てた。
「好きだ。お前が悲しまないよう一生、守る」
「はい……よろしくお願いします」
私からも腕を伸ばして抱きしめた。
「好きだ、イネス」
唇を啄みながら愛を囁く。
アレンさんが身動きするとジャラリと鎖の音がした。
「あの……アレンさん? 外してほしいです」
「逃げないと誓うか?」
「はい」
私のワンピースを脱がせてから、足輪をはずす。
随分慎重だ……。
アレンさんも外してそのまま服も脱いだ。
筋肉質な身体に見惚れる。
抱きしめられて耳たぶにそっと息を吹き込まれた。
「俺を見ていいからイネスも見せろ」
足の爪先から指を這わせ秘部に唇をよせる。
「花のいい匂いがする」
「そんなことっ……」
指を差し込み、陰核にしゃぶりつく。
太い指が私を内側から翻弄した。
「~~~~っ!」
あっさりと絶頂に押し上げられ、ひくひくと震える私の蜜口に剛直を押し当てた。
「イネス」
一気に腰を進め、私は圧迫感に喘ぐ。
「っ……せまいな……」
「た、い、か、く、さー!」
同じ人間だし何とかなるだろ、とアレンさんのアレを直視しなかった!
体感的には大根レベル?
「すまない」
口づけて、お互いが繋がる先にアレンさんの太い指が触れる。
はっ、と息を呑んだ私の快感を高めるべく指を動かした。
それからずりっと馴染ませるように腰を動かされ、ぐちゅっと水音が鳴る。
「……っあ……」
思わず漏れた私の声を合図に、アレンさんがゆっくりと揺さぶり始めた。
体温が上がり、何も考えられなくなる。
「イネス……好きだ」
最奥に押しつけるように抽挿され、これまで感じたことのない感覚に私は囚われた。
身体が熱くてたまらない。
「あっ……アレン、さんっ、へん……」
目の前が白み、私はアレンさんに手を伸ばした。
その手を握って甲に口づけてから、より一層激しく揺さぶる。
水音とお互いの肌がぶつかる音の響く隠微な空間に私と彼の声が響いた。
「~~っ……!」
「うおぉぉーーっ‼︎」
ん?
私が達するとほぼ同時にアレンさんが雄叫びを上げて果てた。
お互い荒い息を吐きながらしっかりと抱きしめ合う。
「愛してる、イネス……すごかった」
「アレンさんも……すごかったです(声が)」
そうか、とにっこり笑った顔は思いの外かわいかった。
その後、私を捜索する人は現れず、アレンさんと穏やかに過ごしている。
この頃は彼のひたむきさを愛おしいとさえ思う。
うん、うまくやっていける。
王都の派手さはないけど、人々も温かいし、豊かな土地で食べ物に困ることもない。
むしろ王都より新鮮で旬のものが手に入って、それはそれはおいしい。
これが女神様の望んだ通りかわからないけど、私はその計らいに満足した。
終
******
お読みいただきありがとうございました。
以下、逃走したところから分岐のマイルドなメリバ風味のエンドとなっております。
無理矢理描写ありのため、大丈夫な方のみどうぞ。
******
「あっ……」
絶頂に打ち震えて私は目覚めた。
何……?
目隠しをされ、私の脚の間からずるっと何かが抜ける。
両手は頭の上で一つに結ばれ、誰かに太ももをつかまれている。
「……マロ、様……?」
とうとうマロに?
しかもこんな姿で、無理やりに?
私の言葉に返事はない。
ただ、荒い息遣いが聞こえる。
脚を大きく広げられ、あわいに硬いものを感じて、びくりと震えた。
一瞬、抵抗しようと思ったけど、見えない方がきっと余計なことを考えなくていい。
ちょっと我慢するだけ。
初めてじゃないんだし……。
ぐっぐっと押し込まれて、私は短く息を吐く。
何も考えない、考えちゃだめ。
相手の肌が触れ、根元までおさめたのかぐりぐりと馴染ませるように動いた。
思ったより相手の身体が柔らかくない。
太っていても女の柔らかさとは違うのかも。
いきなり目隠しが外されて恐る恐る目を開けた。
「レイラ、お前は俺のものだ」
目の前の男をじっとみつめる。
「……アレンさん、なんで?」
私の頬を優しく撫でる。
「殿下から逃げたなら、俺を選べ。俺がお前を守る。ここにいれば安全だ」
普段の鋭い目つきが、愛おしいものを見るような表情になっていてドキッとした。
やってることはクソだけど。
「レイラ、お前が好きだ。だから……」
それなら順番違うって言いたかったのに、深く口づけられたまま腰をゆるゆると動かされた。
「お前を逃すことはできない」
「……っ……アレン、さんっ」
身体があっつい。
一度イかされたらしい私の身体は、快感に弱い。
あんな、アレンさんの顔を見た後では特に。
太ももを胸につくくらい曲げられて突き込まれる。
望んでいないのに、私はイかされて。
「あぁーーっ……」
「レイラ、身篭ってくれ」
さらにスピードを上げて揺さぶられ、私は何も考えられなくなった。
「レイラ、愛してる」
アレンさんが私の中で達した。
夜ごと繰り返される交わりに、今なお私は慣れない。
「もう、むりっ! いま、イって、る!」
「……月のものが終わったばかりだろう? 今度こそ……身籠るといいな……」
「あっ、アレン、さんっ……」
夜明けまで揺さぶられてひたすら喘がされる。
怒った女神様が用意した世界から逃げ出そうとした私は、彼に囲われた。
子どもができたら、この生活も変わる、はず。
今だって、彼に十分すぎるほど愛されて、私は幸せなのだと、思う。
外に出ることができなくとも。
if END
******
最後までおつきあいくださりありがとうございました。
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