異世界でパクリと食べられちゃう小話集

能登原あめ

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勇者とか自分で言っちゃってる少年は厨二病らしい。私は聖女じゃないし、魔王を倒しに行くとかないから。(息抜き) ※

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* ヤンデレ勇者に続き、厨二勇者!  と思ったのですが、エロコメにならず小話になりました。ツッコミどころ満載、無理矢理描写あり。

    




******


「ついに、この時が来たのか……」

 黒髪で十代半ばの少年が私の城に突然現れて呟いた。

「フフフフフ……やはり、われが勇者か……」

 何かよくわからないことを呟いている。

「そこの者、どこから現れた?」

 私の言葉に少年が顔を上げた。

「……もしや、聖女、か……?」
「なに?」

 私のどこをどう見て聖女と勘違いするのかわからん。
 童顔のせいか?

「我は勇者だ。……聖女よ……他のメンバーはいないのか?」
「……名は?」
「我の名は漆黒の翼、だ」
「ほぅ……漆黒の翼。他には誰もいない」
「フフフフフ……天が定めた宿命は、勇者と聖女だけで魔王を倒す、ということか……」

 ここに来るまでに頭でも打ったのか。

「それで……、どうやってここへ?」
「それは……神の導きだろう……我にもわからない」

 神が私のところに召喚させるわけがないのだが。

「……漆黒の翼よ。年はいくつだ?」
「十四だ! 聖女は……二十歳くらいか?」
「ソウダ」
「では教えてくれ、この世界のことを。やはり魔王を倒しに行く、のか?」
「……いや、この国は平和だ。百年ほど争いはない」
「では、我の使命はなんだというのだーー‼︎」

 どこかの国が召喚したのかもしれないから、本当に勇者だったら厄介だ。

「……漆黒の翼。何が得意だ?剣か?魔法か?魔術か?」
「っ……、右手が、疼くっ……」
  
 一体、何を言ってるんだ?
 全く魔力を感知しないが?

「怪我をしているのか? ならば賢者ほどの知識があるのか?」
「…………能力、全開放‼︎」
「…………」

 あれ、おかしいなって、涙目になる少年をみて、控えていた従者が厨二病という病ではないか、とささやいた。
 ふむ。
 風土病か、ならばここで療養させればいいだろう。

「料理はできるか?」
「ラーメンとチャーハン、卵かけご飯くらいなら」
「ふむ。……知らない料理だな。なら、作ってみよ。材料は何でも使っていいから」

 私室のミニキッチンに案内する。
 城のものを煩わさずとも軽食はここでサッと作って食べることにしているのだ。
 
「置いてあるものは何を使ってもよい。お前と私の、二人分を頼む」

 ここの食糧庫は欲しいと思ったものが現れるようになっている。

「ドラゴンの肉もあるのか……? ステーキが食べてみたい。ぶ厚い、肉を」

 ほう、それを言うか?
 珍味、ではあるが。

「ドラゴンステーキも作れるのか?」
「我に! 肉を焼くなどたわいもない」
「なら、作ってみるが良い」

 





 散々待たされてできたのは、卵かけご飯というものと表面はこんがり、中は血が滴るような焼き加減のドラゴンレアステーキ。
 卵かけご飯をソースのようにのせたらちょうど食べやすい。

「我の手にかかれば、このくらい容易いものだっ!」

 飯盒炊飯おぼえててよかった~と呟いていたが。
 向かい合って、料理を口に運ぶ。

「……中々おいしいではないか。では、ここに住んでよいから、たまにこういった料理を作ってくれ。対価はそれでよい……部屋は、隣が空いているから使っていいぞ。まずはこの世界の常識を覚えるのが先だろう。その後、旅に出たかったら好きにするがよい」

「……ありがとう、聖女よ……名は……?」
「名など、呼ばれることもなくてな……好きな名で呼ぶがいい」
「ならば……深淵の……いや違うな、……これだ! 真紅の薔薇だっ!」

 瞳の色からつけたのか?
 彼の国では長い名前が好まれるようだ。

「ふむ、ではそう呼んだら返事をしよう」
「あぁ、真紅の薔薇よ、ありがとう……力がみなぎってきた!」

 なんだかむずむずするな。

「……それはよかったな」








「…………十八になったから、俺ももう大人だよ」

 いつも通り、彼が起こしに来たんだと思ってまどろんでいた。
 鍵をかける習慣はない。
 
 彼はそっと布団を剥がし、私の寝間着をまくり上げる。
 そのまま私に覆いかぶさって、腰を引き上げると、いきなり後ろから貫いた。

「あぁーーっ‼︎」
「くっ……なんと、いう……」

 思い切り油断していた。
 時々ミニキッチンを使ってパンケーキなるものを焼いてくれるから、今朝もそうなのだと思った。

 甘くてふわふわのくりーむがたっぷりのってフルーツが飾られている。
 彼が作るものの中で一番美味。
 朝からそれを食べると気分良く過ごせるから、リクエストすることもあるくらいだ。

 風土病も一年ほどすると落ち着いてきて、私のことはローズと呼ぶようになり、彼のことはジローと呼んでほしいと言われた。
 親しいものしか呼ばない名前らしい。
 あの時微笑ましい気持ちになったものだ。

 だが、今は混乱している。
 子どものように、は言い過ぎかもしれないが可愛がっていたというのに。

「俺はローズが好きだ。……だから、後継者、必要だろ? 子どもが、できたら、一緒に旅に出られる」

 ぱちゅんぱちゅんと背後から突き挿れられ、早くも身体は彼に馴染んで快感を拾っていく。

「んんっ……ぁっ……せ、世襲制、じゃないっ!」

 ジローは耳元に唇を近づけ、荒い息とともにささやいてくる。

「知ってる、でも、みんなこの城に縛られたく、ないから……継ぎたくない、って聞いた……」

 そう、だから長い時間、私はここにいる。

「だから、さ。子どもが継いだら、一緒に旅に出よう」

 私をここから連れ出す、と。
 そう言われてここに縛りつけられて飽き飽きしていたことにようやく気づいた。
 それならば。
 この行為にも意味がある。

 ふいに大きく突かれて精を受け取ろうと内壁が蠢いた。

「ぁあっ……!」
「……っ!」

 子種が私の奥深くに吐き出される。
 腹が熱い。

「どのくらいしたら、子どもできるのかな……」

 彼の呟きに私は笑い声を漏らした。

「確率を上げるには、回数を重ねないとなるまいよ」
「……いつもより、目の色が……」

 腹に精を受けると受胎可能となり、瞳の色が変わると話には聞いていた。
 昔、彼がつけた真紅の薔薇より深く昏い色になっているのだろう。

「ところで、さすがに私を聖女だとは思っていないな?」
「う、うん。……この城の主なんだろう?」
「そうだ、ただの私の伴侶になる気があるか?」
「もちろん‼︎ 結婚したい……命尽きるその時まで」

 そうか。
 思わずにんまり笑う。

「それは僥倖。……お前は今から私の花婿だ。もう一度、できるだろう?」
「も、もちろん……今度は向かいあってもいい?」

 可愛らしい発言に頷いて抱きしめ合う。
 こうしていると、悪くない。
 あっという間に成長するものだ。
 今なら見た目の年齢差をさほど感じないかもしれない。

「刹那に生きるのも悪くはないが、ジローには我の悠久の愛と同じだけの生を捧げよう……お前も誓うのだ」

 ローズが厨二っぽいことを言ってるとか呟くが意味がわからん。

「……漆黒の翼は真紅の薔薇を永遠に愛すと誓う」
「……まぁ、よいだろう。互いの身体を繋げ、精を吐き出したら誓約が整う」
「……本当に、それで? 結婚届とかなく?」

「そのようなものはない。どこに出すのだ、この国を治めているのは私なのに?」
「ローズって女王?」
「……そうとも、いえる。……嫌になったか?」
「そんなことない、けど、ちょっと驚いた」

 魔王が私だと、いつ伝えよう。

「まぁ、時間はたっぷりあるから、仕事は追々覚えていけばよい」

 誓約が整えば、私の寿命と同じだけジローの生命が延びるのだから、あと三百年ほどともに生きることになるはずだ。

「……わかった。どうやら勇者じゃなかったみたいだしね。ローズのもとに落ちてよかった。」

 堕ちてよかったか。
 深い口づけを仕掛けて、彼の身体に手を這わせ欲を煽る。
 確実に伴侶とするために。

「続きをしよう、ジロー……」

 お互いが触れ合うとぐちゅりと音がする。

「ローズ、今夜はおさまらないかもしれない……」

 ずちゅんとひと息に突かれて、息が止まりそうなる。
 
「挿れただけで気持ち、いい……」

 ぎこちなく動く腰使いも愛おしい気持ちが湧き上がる。
 じゅぶじゅぶと水音が上がり、苦しそうな顔をしたジローが小さく震えて吐精した。

「すまない」

 私はそう言って彼の半開きの唇を噛んだ。
 
「……痛っ……」

 彼の血に自分の血を混ぜて舌を絡めるキスをする。

「んむっ……ローズッ‼︎」
「これでより深くお互いが結びつく……命が尽きる時は一緒だ」
「それは、寂しくない……幸せだね」

 彼が言うようにこれからの永い時を幸せに過ごしたいと、そう思った。

 



 


                終
        


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