望まれて少年王の妻となったけれど、元婚約者に下賜されることになりました

能登原あめ

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結婚は二度目だけれど ※

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 新しいロケットペンダントを手に入れた夜、私達は寝台に上がった。
 昨日の夜は、お互いに話したいことがたくさんあって気も高ぶっていたからあまり意識しなかった。
 でも今は、体が強張る。

「レオ、緊張するわ。……あの、白い結婚、だったのは本当で……あの、アンベールとは別の部屋で寝ていたし……だから、その、……口づけも、全部レオが初めてで……」

 白い結婚、が結婚を白紙にするための言い訳じゃないんだと、私は伝えたくて。

「知ってた。口づけもとは、思わなかったけど」
「…………」

 知ってた?
 今、一生懸命説明しようと恥ずかしさに耐えて言葉にしたのに。知っていたなら途中で止めてくれたらよかったと思う。
 思わず睨んでしまった私だけど、彼は愛おしげに微笑んだ。

「ごめん。陛下からの個人的な手紙で知っていたんだ。……つい、可愛くて。……早く、その王妃だった頃の仮面を完全に外してしまいたい」

 私の頬を撫でながら、優しい声で言う。
 
「レオといると、もう、表情をうまく取り繕えないの。胸が苦しい」
「そう……俺も、ずっと、ここが痛いくらい激しく鳴っている」

 彼が私の手を取り胸に当てる。

「わかる?」
「速い、と思う……でも、よくわからない。だって私も同じだもの」

 押し当てた手から、レオの体温を感じてますます意識してしまうから。
 そんな私の髪を撫でながら、額に口づけを落とした。

「ジュジュ」

 名前を呼ばれて顔を上げると、柔らかく唇が重なって、私は固まってしまった。
 それを見てレオが困ったような笑みを浮かべる。

「どうしたらいいのかな」

 そう呟かれても、私にはわからない。

「可愛くて、大事すぎて……舞い上がっている」
「……レオ。私もずっと夢をみているみたいなの。今は、レオのことだけ、それしか考えてないわ」
「ジュジュ……」

 レオが私の上唇を喰んだかと思うと、下唇も同じように喰んで、戯れるように口づけした。

「レオ……?」

 これも口づけなのかと不思議に思って尋ねようとした私の口内に、レオの舌が滑り込む。
 驚いてぎゅっとしがみつくと彼の舌が歯列をなぞり、そのまま上顎を嬲った。
 感じたことのない、腰のあたりから何かが這い上がる感覚に声を漏らす。

 そんな私を宥めるように髪を撫でながら、私の舌を捉え、レオのそれが絡みついた。

「……ん、……っ!」

 口の中がこんなに、感覚が鋭いところだったなんて。
 
 唇が離れた隙に、息を吸い込む。
 それからレオの寝衣を握りしめていたことに気づいて、ゆっくり背中に腕を回した。

「ジュジュ……っ」

 深く、深く唇が合わさる。
 息継ぎする間もなく、頭がぼんやりしてきた。
 苦しいのに、気持ちいい。
 これでは身体がもたないかもしれない、そう思ったからなのか、私は意識を手放してしまった。
 

 


 
 目が覚めると、私はレオの腕の中にきつく抱き込まれていた。
 あたりはまだ暗く、どうしてこの状況なのかぼんやりと思い出す。
 
 抱きしめられて、最初は優しく唇を啄まれて。口づけが気持ちのいいものだと知ったものの激しくて、息が苦しくて……それから記憶がない。
 前日から寝ていなかったからか口づけを交わしながら、気を失ったか眠ってしまったらしい。

 どうしよう。大切な夜だったのに。
 そっと顔を上げると、レオが静かに眠っている。
 それなら、このまま寝たほうがいいの……?

「ジュジュ、起きたのか……?」

 私がもぞもぞしていたからか、寝ぼけた声が頭の上から聞こえた。

「レオ、寝てしまって、ごめんなさい」
「仕方ないよ、昨日は寝ていなかったからね」

 レオが優しくて。
 申し訳なくて、彼を見上げて言った。

「もう一度、眠る? それとも、続き、する?」
「続き、する」

 唇が合わさる前に、息吸って、と囁かれた。
 私が慣れるまで、舌を絡め合わせるのもゆったりとした動きで心地いい。

「レオ、好き……」
「俺も、大好きだよ」

 彼が身体を起こし、私を真上から見下ろした。
 真剣な表情に、私の体温が一気に上がる。

「ジュジュ、俺を受け入れて」 
「うん」

 レオの唇が顔中に触れ、喉から鎖骨へと落ちていく。それからネグリジェのリボンを引いてするりと肌に手を滑らせた。
 そのまま無言で胸元に口づけを落とすから、お互いの息遣いと衣ずれの音だけが室内に響く。

 恥ずかしくて、思わず顔を覆う。

「ジュジュ」

 指の隙間からそっとのぞくと、私を見つめながら胸を包み込んで先端を口に含んだ。

「レオ……っ、恥ずかしい……」

 彼が笑ってもう片方も口に含み、吸ったり甘噛みしたりして私の反応を探る。
 お腹の当たりが重たく感じて、口に手を当てているのに、声が漏れた。
 恥ずかしくて、声なんて出したくないのに。

「綺麗だよ、ジュジュ。この世界で一番美しい」

 レオの手が私の身体を柔らかく撫で、脚のつけ根に辿り着いた。
 ゆっくりと太ももを開かれて、そこにレオの顔が埋まる。
 
「レオっ!」

 ぬるりとした感触に驚いて、ずり上がる私の手を、彼が握った。
 今、何をしたの……? 
 私の思ったことじゃないといい、けど……。

「痛くないように、したいんだ」
「痛くしていいから! 恥ずかしいからやめて、ほしい……」

 だんだん小さくなる私の言葉に、レオが困ったような顔をする。

「それなら……今は口づけしないから、指で触れるよ? 見られるのも嫌か……?」
「いや。そんなところ見ないで……」

 涙目で見上げたら、レオが息を吐いて起き上がった。

「……わかった。今は、代わりにいっぱい口づけするよ」
「唇に?」
「……そう」
「うん、それならいいわ」

 口づけを受けながら、彼の指が私の内部を探るのを感じた。
 違和感を感じるたび、彼の口づけが深まって、私の身体は蕩けていく。
 時々、レオの指の触れるところが甘く痺れ、彼に与えられる快楽に勝手に腰が浮いてしまって恥ずかしい。

「ジュジュ」

 身体は火照り、熱が溜まっていくけれど、どうしていいかわからないまま。
 頭の中に靄がかかったみたい。
 唇を重ねて、彼に抱きしめられているから、逃れることもできなくて、ひたすら快楽を与えられ続ける。

「んっ、……っ、ん……!」

 彼の指が外側からも撫でるように動いて、私の身体の中の熱が弾けて打ち震えた。
 大きく胸を動かして息をする私の中から、彼の指がゆっくりと引き抜かれる。
 その刺激さえも、今の私には甘くてつらい。

「ジュジュ……」

 私の目を見つめたままレオが身を起こして、力の抜けた私の脚を抱えた。
 あられもない姿に再び顔を覆う。

「レオ、恥ずかしい」

 脚の間に硬いものが当たる。
 指よりも存在感のあるものに、私の身体は震えた。

「ジュジュ」

 押し当てられたそれは、もどかしくなるくらいゆっくりと私の中へ侵入してくる。
 少し進んでは戻り、隘路を拡げていくから、じわじわと鈍い痛みが私を襲った。

「……っ、レオ、それ、そろそろ全部?」
「……いや、あと半分、かな」

 驚いて、思わずレオを見つめた。

「痛い?」
「少し」

 本当はすごく。
 さっき、痛くてもいいからって言ってしまったから、騒ぎたくなかった。

「ジュジュ、ごめん。なるべくゆっくり入れるから」

 レオが謝ることないのに。
 ずっと私を気遣ってくれて、愛しさに胸がいっぱいになる。

「レオ、大好き。いいよ、全部入れてしまって」

 今だって痛いんだし、少し痛みが増えるくらい変わらないと思ったから。

「本当に大丈夫、か?」
   
 私の表情を探り、それからしっかりと脚を抱え直した。

「うん……して」
「愛しているよ、ジュジュ」

 一旦腰を引いたレオが、ぐっと腰を突き出し、私は穿たれた。

「……ぁっ」

 思う以上の衝撃に、背中が反り、息が止まりそう。
 身体を倒したレオが私の顔を撫で、目尻に口づける。
 そうされて、涙が流れたことに気づいた。

「レオ、もう一度、口づけ、して……」

 脚の間が痛みでじんじんする。
 でも、レオと唇を重ねると痛みが遠のく気がして、私からも舌を絡めた。
 
「こんなこと、好きな人じゃないと、できないわ……」

 私の漏らした言葉にレオが顔を緩める。

「ジュジュ、俺の、可愛い妻……」
「レオ……っ」

 レオがゆっくり、確かめるように腰を揺らすから、私は彼にしがみついた。

「可愛い……たくさん愛したい」
「うん。愛して……?」

 私とレオの間で齟齬があったようで。
 レオが果てた後、今度は私の番だと言って、もう一度睦み合った。
 

 

 
 
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