私が恋した夫は、愛を返してくれませんでした

能登原あめ

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14 おまけのボールガール ※

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* おまけのざまぁ回です。Rシーンあり張形使用です(尻)苦手な方はご注意下さい。ちょこっと暴力表現あります。オーバーキル気味かもしれません……。








******


 小切手が換金できないと聞いて青い顔をして宿屋に戻った俺に、宿屋のオーナーが声をかけてきた。

 にこにこしてとても人当たりがいいから、他に換金できる場所がないか相談した。

「それは、大変なことになりましたね……他国の小切手は複雑で、よくある話なんですがなかなか信用されなくて換金できないんですよ。もしよかったら、私が銀行に掛け合いましょうか?」

 とても親身になってくれて、俺は小切手を預けた。
 しかし翌日、本物か疑われて換金できなかったと言う。

「俺は騙されたのか……」
「どうでしょう……何か手違いがあったのかもしれません。また折を見てかけ合ってみますよ。預かったままでいいですか?」
「ああ……」

 子爵に嫌われて悪徳業者が買い取ったのかもしれない。
 文句を言いたくてもあの国に戻る金もない。

 目の前が真っ暗になった俺に、オーナーが心配するなと言うように肩を叩いた。

「……あの、ここだけの話ですがいい仕事があるんですよ。お客様は見栄えがいいですから、暇を持て余した女性と数時間から一晩過ごすだけで……このくらいもらえますよ」

 金額は一度で最低この国一週間分の生活費と同じらしい。
 相手の部屋を訪ね、どんなことをしたいかは女性にお任せなのだと言う。

「いわゆる、女性に夢を売る仕事です。いかがですか? つまり、楽しくラクにお金が稼げます。……他の方には紹介しない仕事です。あなたは特別ですよ」

 そう言われて乗り気になった。
 働くのは予定外だが、仕方ない。

 セゴレーヌには換金に時間がかかるから、それまで仕事をしてくると伝えた。
 宿屋にいても暇だと言うので、オーナーに相談したら男性の話し相手をするだけでセゴレーヌもお金をもらえることになった。
 
 気品のある女性と知的な会話を楽しみたい富裕層がいるらしい。
 なんて割りのいい仕事だろう。
 
「手持ちのお金が乏しいと心配でしょう。いくらか前払いしましょうか? お互いのために契約書を用意しましょう」

 なんていい人なんだろう。
 一月分の生活費から宿代を引いた分の金を借り、身支度を整えるためにもう一月分借りた。

「こちらも生活がありますから……特別に十日で一割の利息でいかがですか? 他のお客様からは二割いただいているので内密に。ボールさんは信頼に値する方ですし、今後も長くおつきあいしていきたいので」
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」

 二人で五回ずつ楽しい思いをすれば、返済は余裕だろう。

「早く返したいので、できることなら裕福な相手を頼みたい」
「ええ、任せてください」


 俺が想像していたのは、これまで相手にしてきたような貴婦人だったのだが――。

「おや、随分別品さんだね。今夜は楽しめそうだ」

 この国の金持ちは平民の商人だ。
 十歳は年上の鶏ガラのような女に身体で奉仕を求められる。
 金のためだ、しかたない。
 美しい女だと思ってヤルしかない。

「下手くそが! 顔だけしかいいとこないのかぁ~! お前は前戯を疎かにしすぎとる!」
「…………」

「粗末なもんをぶら下げている奴は、技巧を磨かなきゃだめだ! 素人童貞か? あぁ、全く。無駄金になっちまう!」

 あまりのショックに勃ち上がらない。
 自分で擦っても駄目で、ついには女の足に踏まれてしまった。
 そんなやり方は知らないしいいとも思えない!

「痛っ……!」
「なんだい、全く。これ使っていいから、奉仕しな」

 極太の張形を渡され戸惑っていると、

「この国の男の平均的な大きささ。……ほーら、手と口を使ってまずこうして……」

 俺にとって衝撃の、長い夜となった。
 とんでもない女にあたってしまったが、金を前払いしてもらっている身としては逃げることもできない。
 たまたま当たった相手が悪かっただけだ。

 逆にセゴレーヌは楽しく過ごせたらしく、うきうきと次に備えて肌の手入れやおしゃれをしている。

「ボール、もう少し化粧品を買いたいわ。オーナーさんが紹介してくれた人から買ってもいい? 後払いで大丈夫って言われたの」
「まぁ、オーナーの紹介なら大丈夫だろう」

 美に対して努力する女は好きだからな。
 ただ、生活費一月分も化粧品につぎ込んできたのは驚いたが、二人ならすぐに返済できるだろう。
 

 俺の二人目の相手は二十ほど年上の女だった。
 二十年巻き戻したら美人だろう。
 しかし男の身体を縛るのが趣味だそうで、萎えっぱなし。

「勃て! 勃てぃ! お前は本当に男なのかぁ⁉︎」

 怒って背中を鞭打たれたが、盛り上げるための小道具だとかでヒリヒリする程度ですんだ。
 しかし女に散々罵られてぐったりした。

 いっそのこと、楽しんでいるセゴレーヌに稼いでもらった方がいいのかもしれない。
 しかし、三度目に会った話し相手と出かけたまま彼女は帰ってこなかった。

「たまにあるんですよね……お互いに気が合ってそのままってことが……。ボールさん、気を落とさずに。ちゃんと運が向いてきますよ。次は若い女性ですから、どんどん稼いでくださいね。彼女の分も」

 クソッ。
 先に逃げてセゴレーヌに押しつければ良かった!
 化粧品代だってあるし、借金がふくらんでいる。

 三人目の女性は確かに若い女性だった。
 しかし、顔を背けたくなるくらいの醜女だ。
 だが逃げるわけにもいかない。
 
「可愛い人、今夜は楽しく過ごしましょう」

 彼女の望み通りおしゃべりして、食事をした後部屋でダンスを踊る。
 顔が見えないように抱きしめてしまえばこっちのものだ。

 チョロいな。
 今夜は楽勝だろう。
 しかし。

「…………私じゃ勃たないって言うの?」
「いや、そうじゃない。実は最近ずっとこうで……」

 半分元気になってもすぐ元通り。
 嘘ではないし、本当に困っているんだ!

「あなたも! 私が醜いから勃たないと言うわけね! どいつもこいつも、私を馬鹿にして‼︎ ディック、入ってきて!」

 女が怒りだし、部屋の前に立たせていた護衛を呼ぶ。
 屈強な男が俺の目の前に立ち、チラリと股間を見て吹き出した。

 失礼な奴だ!

「準備をお願い」
「かしこまりました」

 男はいきなり俺の両手を縛り上げ、寝台に転がした。
 それから四つん這いにさせられ、尻の間にオイルを塗り込まれる。

「やめろ! 何をする気だ!」
「できないのなら、代わりにやってもらわないとね?」

 くるりと仰向けにさせられ、男にガツンと顎を殴られる。
 痛みに動けなくなった俺の頭の方へ男が移動すると、両足首を持ち大きく開いて胸へと引き寄せた。

「なにをする⁉︎」

 あられもない姿を女に晒している。
 ガッチリ抑えられて尻を動かすくらいしかできない。

 なんて恥ずかしい姿勢をさせるんだ!

「ふふっ……綺麗な顔した男の、顔が歪むのが見たいだけよ」

 女が笑いながら張形にオイルを垂らして塗り込み、俺の尻穴にためらいなくぶち込んだ。

「あああぁぁ――!」

 焼けるように痛い。
 そこは出すところで何かを入れるところじゃない。

「すぐによくなるわ」

 女が荒々しく動かし、俺は逃れることもできずそれを見続けるしかできなかった。
 開放される頃には夜が明けていて――。

 丸一日眠って尻を押さえながらオーナーに相談すると、医者を呼んでくれた。
 もちろん後払いでいいと言い、塗り薬のおかげで痛みがすぐにひいた……本当にオーナーには感謝しかないのだが。

「それは大変でしたね……まさか、彼女がそんなことをするなんて……他の仕事を紹介しましょうか? 実は一人空きが出たばかりで、住み込みなので家賃もかかりません。しかも……金額は今の二割り増しです」
「やります!」

 仕事内容も聞かずに飛びついた俺は、男が五人で暮らす屋敷に案内された。
 基本的に屋敷の敷地内から出なければ好きに過ごしていいらしい。

 週に一度、美しい女主人の相手をするだけだと言う。
 初めて会った瞬間、恋に落ちた。
 
 こんなに楽な仕事はないだろう。
 それに仕事としてではなく、俺だけを選んでくれたらどんなにいいか――。
 

 しかし、女主人はとてつもない嗜虐趣味の女だった。
 三十代の美しい女性だが俺自身は一瞬しか勃ちあがらず、なぜか張形で尻を弄ばれる始末。

「ボール、お前は男ではない。私が女にしてやろう」
「…………はい」
「気持ちいいか?」 
「……はい」

 口答えをすると、本物の鞭で思い切り打たれるから、痛みしかないが気持ちいいと答える。
 こんなことをされてもいつか俺だけを見つめてくれるんじゃないかと思って女主人のことを嫌いになれない。

 ふと、元妻との営みを思い出す。
 あれも今の俺と同じように感じていたのかも……?
 口の中が苦い。

 一日一緒に過ごすと三日は寝台の上から起き上がれない。
 どうりで五人が揃って顔を合わせることがなかったわけだ。

 給金は、オーナーの借金を引かれて少額渡されるが、それだって屋敷に商人がくればぱっと使ってしまう。
 いつまで経っても借金は減らなくておかしい。

 働いている男達の年齢はバラバラだが、みな綺麗な顔をしていた。

「隣国から来たんだろう? あんたもオーナーに騙されたのか?」

 身の上話をすると、だいたい皆同じ経緯を辿っていた。
 俺より若く、ここで七年暮らしていると言う男が苦笑した。

「小切手はオーナーが裏から手を回して着服しているんだ……女は上手く逃げた可能性もあるが、娼館に売られたかもな。……ここにいるものは長くて十年、それまでに命を落とすかオークションにかけられる。新しい主人の元へ行くのと、ここに残るのと……どっちが幸せなんだろうな」

 どうしてここまで転落してしまったのだろう。
 目の前が真っ暗になった。
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