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9 めでたしめでたし。

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 その後も、ほとんど意識のない中、何度も交わっていたらしく、次に目が覚めたのは、私が洞窟へ逃げ込んだ夜から二日経っていた。

 ただひたすら歩いた私は、運のいいことにルディの住む山の外れにいたらしい。
 私の実家の反対側。
 夜半に雨が止み、かすかな私の匂いで存在に気づいたのは、彼に言わせると番の契約があったからだそう。
 そのまま山の家まで連れてきた、と。

 人型になれなくて親に見放され、祖母と山に住んでいたとルディに聞き、昔二人で過ごしてきた時間が彼にとってすごく大切なものだったんだと思ったら、なんだか切なくなってギュッと抱きしめていた。

 重いと言えば、重い。
 彼は苦労してきたんだなぁって、私は能天気にもふもふしていて、なんだかちょっと罪悪感もわく。
 でもひとつ、気になることが。

「番の契約って、何?」

 そんなの、聞いたことない。
 いつのまにか私はルディと契約してたの?
 そもそも、この国では獣人は遠い異国に住む存在で、あまりよくわかっていないのだと思う。
 ルディみたいな姿で紛れ込んでたら気がつかないだろうけど。

「それは、ばあちゃんから教わった。早く番を見つけて、血を飲ませてもらえれば、話せて人型になれるかもって。それで……さようならって言うから、あの時、ああして……」

「その契約って、私にも何か変化あるの?」
「いいことしかないよ? 回復力が上がって……ほら、精液、万能薬になるって。番限定だから」

 マジか。
 あれ、マジなんだ。
 じゃあ、兄さんというのも、獣人だったのかな⁇
 知りたいことがいっぱいありすぎる。

「それにね、他の人に目がいかなくなる」
「……」

 なるほど。
 確かに、ノーマルエンド目指しちゃったし、お年頃なのに恋もしなかった。

「怒ってる……?」

 恐る恐る訊かれて、首を横に振った。
 私は覚悟を決めた。

「ルディ、怒ってないよ。……まずさ、助けてくれてありがとう。私、あのまま死んでもおかしくなかったよね。……これから、お互いもっと色々知り合っていこう? もっと色々話そう。ルディのこと、もっと知りたい」

 そう言うと満面の笑みを浮かべて私をぎゅっと抱きしめた。

「ベル、大好き。幸せになろうね」

 結局私は鉱山に向かうことなく、しばらくはルディの山の中にある家でお嫁さんとして暮らすことになった。
 子どもができたら町で暮らすことにして、今はここで蜜月を楽しみたいらしい。

 番ってよくわからないけど、お見合い結婚したと思えばいいのかな。
 ワイルドマッチョではないけど、獣人だし、ワイルドではあるかも?
 
 彼の過剰な愛情表現にだんだん慣れてきて、私もただの好きが積み重なって、ものすごい好きになる日も近いかもしれない。
 
「ベル、一生大事にするよ」

 乙女ゲームのノーマルエンドを目指した身としてはまあまあのところに辿り着いたんじゃないの?
 ただ思うことはひとつ。

 ヒロインに優しくないゲームの世界だと思う!









               終



******


 お読みいただきありがとうございました。
 

 
 

 
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