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えんちょうせん さん(猫の日)

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* 本日猫の日ということで更新しました。(予約投稿) 猫化はしません……。






******


「スバラシイ! なんて、スバラシイの‼︎」

 とうとうワタシ達の新しい家、の外観がほぼできた。

 内装はこれから。
 せっかくだからアルとワタシの体の大きさに合わせた食卓と椅子を作ってもらうことになって、本日頼んだ家具職人さんがやって来た。

 なんでもこの辺りでは有名な、注文家具を専門にしていて予約が多くて中々頼めない職人さんらしい。
 だから額の皺に頑固一徹と刻まれたような渋いお爺さんがやって来ると思っていたら、アルより若い華奢なお兄さんが現れて驚いた。

 夕焼けみたいな髪が綺麗で、きっと毛並みも同じ色の獣人さんじゃないかな。
 小柄だからきっと小動物ね。
 ネコ獣人としての勘がそう言ってる。

「…………」

 確かめる前にぐいっと、アルに腰を取られて驚いて見上げた。

「アル?」
「案内する、こっちだ」

 挨拶もそこそこに室内へと入った。
 木のいい匂い。
 何度かのぞいているけど、見るたびにわくわくする。

「この部屋に置く予定だ」

 明るくて使い勝手の良さそうなキッチン。
 こんなところでアルの大好物をたくさん作りたい!
 想像するだけで楽しくなっちゃう。

「では、測らせてもらいますね」

 家具職人さんがテキパキ仕事する様子をぼんやりみながら、頭の中はアルがあっと驚くご馳走って何かな、と考えてた。
 その間、アルがワタシを見て不機嫌になっているなんて気づかなかった。
 






「アル、すっごく楽しみだねぇ!」
「…………」

 家具職人さんが帰った後、ワタシ達も市場で買い物してから家に戻った。
 その間、ずーーっとアルは黙り込んでいたんだけど、ワタシの頭の中は新居のことでいっぱいだった。

 今日買ったものをキッチンに運び仕分けする。

「ねぇ、アル。六人も座れる食卓だったらさ、ワタシすんごく頑張って料理作るよ。最初の食事はテーブルにいっぱいに並べたい!」

 黙って後ろについて来たアルを振り返った。

「……ああいう、優男が好みなのか?」
「え? 誰? 優男……ああ! 八百屋のおじさん? タヌキみたいで癒されるよねぇ。あのぽっこりしたお腹も、なんだか野菜がおいしそうにみえちゃうし」
「…………話を逸らすほど、気に入ったのか?」

 話を逸らす?

「アル?」
「そういえば、父親みたいな男が理想だって言ってたもんな」

 アルに会う前はそう思っていたけど、そう言って首を傾げる。

「奥さんと子どもがたくさんいる男だ。諦めろ」

 まさか。まさか、まさか!

「……家具職人さんの話?」
「あぁ。お前の番は俺で、夫も俺だ。恋人の役割も担ってもいい」
「アル……」

 久しぶりにアルの名言だ!
 きゅ~ん……。
 もしかして、あの家具職人さんにヤキモチ焼いたのかな?
 何の獣人か見つめちゃったのがいけなかった?

「キャット、この世界で一番お前を愛しているのは俺だ。…………なんか言ったらどうだ」

 おしゃべりなワタシが感動のあまり黙っていたら、最愛の夫が顔を赤くして横を向く。

 やだ。アル、可愛い。
 どうしよう、もっともっと好きになっちゃうよ!
 アルに対して限度がない。

「アル、この世界で一番アナタを愛しているのはワタシだ、ヨ。…………家具職人さんのことをどうして気にするのかわからないけど、アル以外に興味ないから。こんなにサイコーの旦那様がいるのに、目移りするわけないよぉ!」
「……じゃあ、なんであんなに見つめていたんだ」
「それは、何の獣人かなぁって、たぶん会ったことのない種族に感じたから……」

 アルが黙ったままワタシを見つめる。

「ワタシはアルと出会って、好きって気持ちを知ったんだよ? アルに、大人にしてもらったし……」

 何だか、恥ずかしくなってきた。
 ワタシは一体何を言わされてるのかな?

「……そうだ、俺がお前を女にした」
「アル……恥ずかしい」
「いいじゃねぇか。いつも、俺はそんな気持ちを味わってる」

 いつの間にか機嫌が治ったのはよかったけれど、にやにやしてワタシを見る。
 
「ワタシ、そんなにアルを恥ずかしい気持ちにさせてたの?」
「……そうだな」

 ぎゅっと飛びついてアルの筋肉に顔を顔をこすりつける。
 アルがワタシを持ち上げてカウンターに座らせるから視線が同じ高さになった。

「アル、ごめんね?」
「……いい」

 かぷりと食べられちゃうように口づけられた。
 アルの両手がワタシのカラダをなぞり、スカートをまくり上げる。

「アルっ、ここ、キッチンだからっ」
「だからなんだ?」

 いつものことだけど、ずちゅんと陰茎に貫かれた。
 アルのキスだけで気持ちよくなっちゃうから、受け入れる時だけちょっと苦しいけど、すぐに馴染む。

 後ろに倒れそうになって慌ててアルに手を伸ばした。
 
「アルっ」

 ワタシの手を掴み首に回すように誘導させてから、ワタシの腰を掴んで奥に押しつけるようにグラインドさせた。
 アルに奥を突かれると、頭の中が真っ白になって体が震える。

「なんでっ、こんなに、すぐ……気持ちよく、なっちゃう、んだろ」

 耳元に笑いを含んだ息がかかる。
 そのまま耳を喰みながら、話し出す。

「俺が、お前に教え込んだからな」
「全部、アルがワタシに、教えてくれた。アルが、ワタシを、オンナにしてくれた。アルだけ、しか、ここに触れちゃ、だめなのっ」
「……そうだ…………クソッウホ、なんで俺がっ、悶えなきゃいけねぇんだ‼︎」

 そう言ってワタシのお尻に手を当てて逃がさないようにしてから、ずちゅずちゅと突き込んだ。

「カウンターでっ、こんなこと、するなんて! ごはん、作る時、思い出して、恥ずかしく、なるよぉ!」
「もうすぐ、引っ越すだろっ」

 そうだった! さすがアル‼︎

「あっ、アルぅ、すきっ、いいっ」
「……ッ!」

 アルがワタシの中に子種をくれた。

「……ヤキモチ焼いた。愛してる、キャット」

 ヤキモチ焼くアルってば、最高に可愛い‼︎
 

 
 


 

 
 
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