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おまけ5

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 ワタシとアルが大通りを歩いていた時のこと。

「アナタ、ちょっと待って! ね、もしかして……あの」
「なんだ?」

 初老の貴婦人に呼び止められて、ワタシを隠すようにアルが一歩前に出た。

 え、なに。
 エレガントなおばあちゃんからもワタシを守ってくれるの?
 アル、イケメン⁉︎

「あら、まぁ……、そっくりねぇ。私はステラというのだけど、あなたのおじいさん、マテオって名じゃないかしら?」
「……それがどうした」
「私、マテオの妹なの。この街には家に帰る途中に懐かしくて寄ったのよ。……色々あって勘当されてるからこの街で大手をふって歩くというわけにもいかなくてね……だから、私のこと知らないでしょ?」

 アルの顔を見て懐かしそうにニコニコしているから、問題ないと思うけど、アルは眉間にしわを寄せている。

 考えるアルはかっこいいけど、ステラさんが怖がると思うのでワタシが間に入ろう!

「アルのおじいさんの名前はマテオなの?」
「あぁ」
「アルはそんなにおじいさんにそっくりなんですか?」
「ええ、若い頃にそっくり」
「じゃあ、せっかくなので……お時間があれば少しお茶でもしませんか?」

 もしかしたらアルのルーツが訊けるかも!







 近くの食堂のテラス席に座ったワタシたちだけど、アルがずーっと難しい顔をしてる。

 ステラさんを優先するならお洒落なカフェがよかったけど、それはアルが落ち着かないよね。
 アルを優先して酒場にしたらステラさんが萎縮しちゃって肝心な話が訊けなそう。
 
 だから中間をとって家庭的な雰囲気の食堂、しかもテラス。
 テラスなんて目立つところがいけなかったのかも。

 とりあえずワタシたちも自己紹介した後、小声でアルに言う。

「アル……勝手に店決めてごめんね?」
「いや、いい……好きなの食え……アンタも」

 向かいの席でにこにこしながら私たちを眺めていたステラさんが紅茶だけで大丈夫と言った。

「本当に……そっくりね、マテオ兄さんに」
「その……マテオさん、って……どんな方だったんですか?」

 ゴリラ獣人の血が混じっているか、難しい顔のアルの前では訊きづらい。

「無口で寡黙。口数が少ない」

 ほぼみんな一緒の意味でアルが答えた。
 いつもより饒舌~!
 語彙力あってかっこいいっ。

「そうね、それに強くて、不器用だけど優しい兄だったわ。……最後まで私の味方をしてくれたのに、私は獣人の恋人を認めてくれない家族に嫌気がさして駆け落ちしてしまったの」
「…………そうなんですね、……アルは知ってたの?」
「あぁ。じいさんが死ぬまで心配してた」

 ステラさんが口元を覆って涙ぐむ。

「じいさんも、俺の両親も三年ほど前に流行病でなくなった。……だから親族に会えて嬉しい」

 その顔は感動してる顔だったの?
 ワタシってまだまだアルのことわかってないんだなぁ……。

「あの……今回はお一人でこちらにいらしたんですか?」
「いいえ、息子夫婦と一緒よ。……あと二、三日はこの街にいるから嫌じゃなければ会ってくれるかしら。……主人は去年亡くなってしまったわ……」
「…………」
「そうだったんですか、残念ですね……それで、旦那様は何の獣人……」
「キャットやめておけ、……大叔母さん、俺はこの街で猟師をしているから狩りに出ていない時はいつでも声をかけてくれ」
「ありがとう……思いがけず交流が持てて嬉しいわ」


 さっそくその夜、ワタシたちとステラさん一家と夕食を共にすることになった。
 ステラさんにそっくりの息子さんで、何の獣人の血を引いてるか見た目にわからない。
 ワタシが不思議そうな顔をしていたのか、帰り際に旦那様がタヌキの獣人だと教えてくれた。
 
 だからこっそり、アルの家系にゴリラの獣人がいるか訊いてみたら、ステラさんが眉を上げてあらあらって笑った。









「……アルから見たマテオじいさんってどんな人だったの?」

 ステラさん一家と別れてワタシたちの家に戻った後、リビングのソファに座るアルの膝にのって今日を振り返る。

「余計なことは話さない猟師だったな……父親は料理人になったから、じいさんに仕事を教えてもらった」
「へぇ……会ってみたかったな。きっと好きになったと思うよ!」

 そう言ったワタシの頭を撫でながら、じいさんも同じように思っただろうって優しく笑う。
 家族のことを話す優しい雰囲気のアルにきゅんとする。
 アルだって寂しいよね。
 失った家族の代わりになるなんて簡単には言えないけど、アルのこと大切にする‼︎
 だってワタシたち番だもの!

「アルぅ、毎日毎日どんどん好きになるよぉ。アルが好きすぎてつらいっ……アル大好き~」

 アルが唸ってワタシに口づける。

「そんなのお互い様だ」

 アルと深く舌を絡めながらも、驚くくらい早くワタシを脱がせていく。
 キスしてるのにどんな魔法?

「ほら、腰上げろ」
「んむぅ、はぁ……」

 下着ごと一気に足から抜き取られてあっという間に何も身につけていない状態にされる。

「またワタシだけ……ぁアルっ……!」

 下から陰茎に一突きされてビリビリと体が震える。

「お前がかわいいのが悪い」

 ちょっと悪い顔で笑うからまたまたきゅんときちゃう。
 なんとか上半身を剥いでワタシは厚い筋肉にぺたりとくっつく。

「アルがカッコいいのが悪いのに」
「……まったく……そんなだからいつまでたっても、コッチはおさまらないんだ」

 くるりと視界が回ってソファの座面に背中が押しつけられた。

「……閉じ込められた」

 ナニコレ、新鮮‼︎
 アルに囲われてる‼︎

「……っ、なんだ?」
「アルに独占されているみたいで、イイッ」
「……そうかよ」

 動きづらぇけどよ、っていいながらワタシを絶頂に追い上げる。

「アルっ、アルっ、いっぱいちょうだいっ!」

 唸りながらぱちゅんぱちゅんと打ち込んでワタシの中で吐精した。
 そのままワタシを抱えて……ベッド、かな?

「まだ、足りねぇ。お前もだろ?」

 ぎゅっと抱きついて頷いた。
 
「隔世遺伝なんだねぇ」
「……何が?」
「マテオじいさんとアルのこと。……似てるって言うから」
「まぁな。昔もよく言われたよ」
「そっか……マテオじいさんもそのまたおじいさんの隔世遺伝らしいよ。ステラさんが言ってた。そっくりだったみたい」
「そうか。聞いたことなかったけど、家系か」
「家系だね」

 軽く唇を合わせて笑い合う。
 あ~、本当にアルってばカッコいい!
 やっぱり思った通りだった‼︎

 マテオじいさんのそのまたおじいさんがゴリラ獣人だって教えてもらったから!
 あ~、謎が解けてスッキリした‼︎
 



 
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