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「番さん、ここどこ?」
「…………俺の家だ」
「そもそも、どちら様かな?」

 お互いに名前も知らないって言うね。
 なんていうか、順番ぐっちゃぐちゃでやることだけやっちゃって。
 気づいたら夜になっているし、べたべただったはずの体はすっきりさっぱりしている。

「お前はネコだろ?」
「ええ、まぁ」
「それでいいじゃねぇか」
「…………」
「ゴリラじゃねえぞ?」
「もしかして、それを根に持って教えてくれないの?」
「…………」
「うわー。意外とちっちゃい奴なんですね、他はみんなデカイのに」

 鼻息の荒くなる番さん。

「ゴ、番さん……あの」
「今ゴリラって言いかけたな?」
「ワタシ、ゴリラって動物のなかで一番イケメンだと思うんだけど、それでもいやかな?」
「……お前、目が悪いだろう」
「全然。山のてっぺんにいる人がダンスしているのが見えるくらい目がいいよ」
「……お前がアホなのはわかった」

 このままじゃ、らちがあかない。

「キャット」
「……なんだ?」
「キャットだよ」
「まさか、名前か?」

 無言で頷くと、大きく口を開けて笑う。  
 ネコの獣人でキャットなんて名前、母は人間だから可愛いと思ったらしいけどね。
 父は母が大好きすぎるからおかしいと思わなかったらしい、ばあちゃんにツッコまれるまでは。

「まんまじゃねーか! お前本当にネコなんだな」
「…………それで、番さんは?」
「…………」

 これ、絶対、微妙な名前なんだろうなぁ。

「当てたらなんかちょうだい。ケレイブ?」
「俺は犬じゃない」
「レオ? レオン? リオ?」
「……ライオンかよ」

 きっと、動物由来の名前に違いない!
 ワタシの勘がそう言ってる。

「アート? バーナード?」
「熊じゃねえ」
「アーウィン?」
「イノシシかよ。よく思いついたな」
「まだ違うの? じゃあ、強そうなラルフ!」
「狼じゃねぇ。……そもそも俺の名は動物じゃねぇからな」
「……嘘でしょ?」

 もっとキラキラした感じの名前なのかな。ゴージャスな感じの。

「お前には当てらんねぇ。……アルだ。文句あるか?」

 おおぅ。

「ない! 全然ないよ! ハンサムって意味か! ほら、ゴリラってハンサムじゃん。合ってるよ‼︎」
「……それ、褒めてんのか?」
「めっちゃ、褒めてる」
「…………」
「ゴリラを悪くいう奴なんていないよ?」
「そんなことないだろ……お前と話してると疲れる」
「番なのにひどい。……このまま番さんって呼ぼうか?」
「……アルでいい。俺もキャットって呼ぶから」

 きゅうぅん。
 番に名前呼ばれると腰にくる。

「アル……もっと呼んで?」
「キャット、今夜は泊まっていけよ」

 なんとなく艶っぽい雰囲気が漂う。

「うん。……あ、うっかり頷いちゃった。ルームメイトが心配するかな。あ、でも彼女も今夜はいないか……」

 ぶつぶつ呟くワタシをベッドに押し倒す。

「アルって、性欲強いの?」
「普通だろ?」
「……知らないし、わかんない」
「番相手なんだから、つながりたくなるのは当然だってことだ」
「アルも番って認めてくれた! ワタシ一人の思い込みかと思ってたから嬉しい!」
「もう、黙れ」
「んーっ」

 唇を塞がれ、舌が突っ込まれる。
 あんなに何回もしたのにまだ足りないの?
 そんなこと思いつつ、アルに触れられると体が熱くなる。
 ワタシついさっきまで処女だったのに、こんな。
 何度もしたらがばがばになるんじゃない?
 ルームメイトが言ってたような?
 癒しの効果が必要だよね。

「アルぅ、早く中で出して?」
「……っ!」

 ワタシの脚の間に陰茎を押し当てた。
 丸くてちょっと柔らかい先端をこすりつけるように動かしてから、一気に貫く。

「あぁっ……、アルぅ、はやくぅー」

 いきなりトップスピードで腰を突き出した。
 ワタシ、速く動いてって言ったっけ?

「あぅ、アル、あっ、あっ、あっ」

 肌を打つ音に、じゅぷじゅぷとなる水音、ワタシの喘ぎにアルの激しい息遣い。
 それら全部ひっくるめてワタシの快感を高める。

「ああぁっ!」
 
 いきなりゴリっと奥を突かれて痛みに声を上げた。
 
「刺激、強過ぎたか」
「う~、アル、早く奥に出してよぅ」

 さっきの痛いの、無くして欲しい。
 涙目で見上げたら、ワタシの中のアルが大きくなった。

「……はっ、……もうちょい待て」
「待ちたくない~っっ、奥ぅ~」
「……堪え性がないな」

 舌を絡みつけられて、意識が遠くなる。
 そのままぎゅうぎゅう締めつけると、アルがようやく動きを早めた。

「あっ、ああっ、アルっ」
「……くっ……はぁっ…………キャット、どうだ?」

 ぐっと奥に押しつけるように吐き出して、びくびくと震えるワタシの体を抱きしめた。

「……多分、大丈夫。もう、痛くない」
「…………回数を重ねれば痛くなくなる」
「そっか、じゃあもう一回」
「……ネコじゃなくてサルか」
「いや、ネコの獣人と人間のハーフが正解。よく間違えられるんだよねぇ。もしかして、アルっておじいさんとかゴ……」

 ワタシの言葉が遮られる。

「何代も人間同士で結婚している」
「ああ、なるほど……それ以前ね」
「…………」
 
 







******


 ゴリラ由来の名前は残念ながら見つけられませんでした。
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