後ろ姿で番と気づいたけど相手はほぼゴリラだった

能登原あめ

文字の大きさ
上 下
2 / 20

しおりを挟む




「番さん、ここどこ?」
「…………俺の家だ」
「そもそも、どちら様かな?」

 お互いに名前も知らないって言うね。
 なんていうか、順番ぐっちゃぐちゃでやることだけやっちゃって。
 気づいたら夜になっているし、べたべただったはずの体はすっきりさっぱりしている。

「お前はネコだろ?」
「ええ、まぁ」
「それでいいじゃねぇか」
「…………」
「ゴリラじゃねえぞ?」
「もしかして、それを根に持って教えてくれないの?」
「…………」
「うわー。意外とちっちゃい奴なんですね、他はみんなデカイのに」

 鼻息の荒くなる番さん。

「ゴ、番さん……あの」
「今ゴリラって言いかけたな?」
「ワタシ、ゴリラって動物のなかで一番イケメンだと思うんだけど、それでもいやかな?」
「……お前、目が悪いだろう」
「全然。山のてっぺんにいる人がダンスしているのが見えるくらい目がいいよ」
「……お前がアホなのはわかった」

 このままじゃ、らちがあかない。

「キャット」
「……なんだ?」
「キャットだよ」
「まさか、名前か?」

 無言で頷くと、大きく口を開けて笑う。  
 ネコの獣人でキャットなんて名前、母は人間だから可愛いと思ったらしいけどね。
 父は母が大好きすぎるからおかしいと思わなかったらしい、ばあちゃんにツッコまれるまでは。

「まんまじゃねーか! お前本当にネコなんだな」
「…………それで、番さんは?」
「…………」

 これ、絶対、微妙な名前なんだろうなぁ。

「当てたらなんかちょうだい。ケレイブ?」
「俺は犬じゃない」
「レオ? レオン? リオ?」
「……ライオンかよ」

 きっと、動物由来の名前に違いない!
 ワタシの勘がそう言ってる。

「アート? バーナード?」
「熊じゃねえ」
「アーウィン?」
「イノシシかよ。よく思いついたな」
「まだ違うの? じゃあ、強そうなラルフ!」
「狼じゃねぇ。……そもそも俺の名は動物じゃねぇからな」
「……嘘でしょ?」

 もっとキラキラした感じの名前なのかな。ゴージャスな感じの。

「お前には当てらんねぇ。……アルだ。文句あるか?」

 おおぅ。

「ない! 全然ないよ! ハンサムって意味か! ほら、ゴリラってハンサムじゃん。合ってるよ‼︎」
「……それ、褒めてんのか?」
「めっちゃ、褒めてる」
「…………」
「ゴリラを悪くいう奴なんていないよ?」
「そんなことないだろ……お前と話してると疲れる」
「番なのにひどい。……このまま番さんって呼ぼうか?」
「……アルでいい。俺もキャットって呼ぶから」

 きゅうぅん。
 番に名前呼ばれると腰にくる。

「アル……もっと呼んで?」
「キャット、今夜は泊まっていけよ」

 なんとなく艶っぽい雰囲気が漂う。

「うん。……あ、うっかり頷いちゃった。ルームメイトが心配するかな。あ、でも彼女も今夜はいないか……」

 ぶつぶつ呟くワタシをベッドに押し倒す。

「アルって、性欲強いの?」
「普通だろ?」
「……知らないし、わかんない」
「番相手なんだから、つながりたくなるのは当然だってことだ」
「アルも番って認めてくれた! ワタシ一人の思い込みかと思ってたから嬉しい!」
「もう、黙れ」
「んーっ」

 唇を塞がれ、舌が突っ込まれる。
 あんなに何回もしたのにまだ足りないの?
 そんなこと思いつつ、アルに触れられると体が熱くなる。
 ワタシついさっきまで処女だったのに、こんな。
 何度もしたらがばがばになるんじゃない?
 ルームメイトが言ってたような?
 癒しの効果が必要だよね。

「アルぅ、早く中で出して?」
「……っ!」

 ワタシの脚の間に陰茎を押し当てた。
 丸くてちょっと柔らかい先端をこすりつけるように動かしてから、一気に貫く。

「あぁっ……、アルぅ、はやくぅー」

 いきなりトップスピードで腰を突き出した。
 ワタシ、速く動いてって言ったっけ?

「あぅ、アル、あっ、あっ、あっ」

 肌を打つ音に、じゅぷじゅぷとなる水音、ワタシの喘ぎにアルの激しい息遣い。
 それら全部ひっくるめてワタシの快感を高める。

「ああぁっ!」
 
 いきなりゴリっと奥を突かれて痛みに声を上げた。
 
「刺激、強過ぎたか」
「う~、アル、早く奥に出してよぅ」

 さっきの痛いの、無くして欲しい。
 涙目で見上げたら、ワタシの中のアルが大きくなった。

「……はっ、……もうちょい待て」
「待ちたくない~っっ、奥ぅ~」
「……堪え性がないな」

 舌を絡みつけられて、意識が遠くなる。
 そのままぎゅうぎゅう締めつけると、アルがようやく動きを早めた。

「あっ、ああっ、アルっ」
「……くっ……はぁっ…………キャット、どうだ?」

 ぐっと奥に押しつけるように吐き出して、びくびくと震えるワタシの体を抱きしめた。

「……多分、大丈夫。もう、痛くない」
「…………回数を重ねれば痛くなくなる」
「そっか、じゃあもう一回」
「……ネコじゃなくてサルか」
「いや、ネコの獣人と人間のハーフが正解。よく間違えられるんだよねぇ。もしかして、アルっておじいさんとかゴ……」

 ワタシの言葉が遮られる。

「何代も人間同士で結婚している」
「ああ、なるほど……それ以前ね」
「…………」
 
 







******


 ゴリラ由来の名前は残念ながら見つけられませんでした。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

俺の番が見つからない

Heath
恋愛
先の皇帝時代に帝国領土は10倍にも膨れ上がった。その次代の皇帝となるべく皇太子には「第一皇太子」という余計な肩書きがついている。その理由は番がいないものは皇帝になれないからであった。 第一皇太子に番は現れるのか?見つけられるのか? 一方、長年継母である侯爵夫人と令嬢に虐げられている庶子ソフィは先皇帝の後宮に送られることになった。悲しむソフィの荷物の中に、こっそり黒い毛玉がついてきていた。 毛玉はソフィを幸せに導きたい!(仔猫に意志はほとんどありませんっ) 皇太子も王太子も冒険者もちょっとチャラい前皇帝も無口な魔王もご出演なさいます。 CPは固定ながらも複数・なんでもあり(異種・BL)も出てしまいます。ご注意ください。 ざまぁ&ハッピーエンドを目指して、このお話は終われるのか? 2021/01/15 次のエピソード執筆中です(^_^;) 20話を超えそうですが、1月中にはうpしたいです。 お付き合い頂けると幸いです💓 エブリスタ同時公開中٩(๑´0`๑)۶

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

処理中です...