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その後
12 二人きりになって②
しおりを挟むただ、一瞬唇を押しつけただけ。
意外とふにゃっとした柔らかい感触で、ネッドさんが動かずにいるから、もう一度、唇を合わせてみる。
これまでどきどきしすぎてよくわからなかったけど、幸せな気持ちになった。
「フィー……俺、そろそろ……」
ネッドさんの手が私の髪を撫でながら後頭部を優しく包み込む。
驚くくらい距離が近くて、少し動いたらすぐに唇がくっついてしまいそう。
「ごめん、なさい……」
私、恥ずかしいことしていたみたい。
ネッドさんの唇が触れる。
「謝る必要なんてないのに……俺は、嬉しかった」
そう言って何度も唇を啄む。
優しいけれど、頭の後ろをネッドさんが支えているから、閉じ込められてしまったみたい。
「……っ、ネ、ド、さんっ……」
逃げたいわけじゃないし、嫌じゃない。
だけど、苦しくなって、ネッドさんの服を握りしめる。
「フィー、口開けて」
言われた通り、口を開くとネッドさんが微笑む。
それを見ながらようやく息を吸った。
「うん、いい子」
いきなり子ども扱いされて、ムッとしたけどネッドさんが私に深く口づけして、それどころじゃなくなった。
「……ぁ、……っ」
ネッドさんの舌が私の口内を探る。
頬の内側から上顎、舌の裏側まで器用に動いて、私はそれを受け止めるのでせいいっぱい。
身体の内側から熱くなるのをどうしたらいいかわからないまま吐息を漏らす。
「フィー、可愛い」
一瞬だけ離れた唇も、すぐに私を捉え、ネッドさんの舌が私の舌をなぞった。
「んぅ……っ。あ……っ」
舌を吸い上げられ、強い刺激に驚いてすがりつく。
宥めるように髪を撫でられて、それからまた、私を食べてしまうみたいに深く口づけるから。
「ネッド、さん……っ、熱くて……っ」
身体をよじると、ネッドさんが震えた。
鎮まれ、俺って聞こえた気がするけど寝間着の裾から忍び込んだ大きな手が背中を撫でる。
「あ、待っ……」
自分でも汗ばんでるのがわかって、恥ずかしくて身体をひねらせた。
でもそれは、さらにネッドさんにすり寄ることになって。
「いや?」
私を見つめる瞳が、見たことのない熱を帯びていて、ますます胸がどきっと跳ねた。
断らないで欲しいって伝わってくるし、嫌なわけじゃないから首を横に振った。
「汗かいて、恥ずかしい、です……」
「フィー、俺も同じだから……それと、ごめん。ちょっと高ぶっていて、耳も尻尾もしまえそうにない。それ以上の姿にはならない、はずだから……いやだったら、目、つぶって」
「ネッドさんのその姿も、好き、です……だから見ていたい、し……さわりたい、です」
ネッドさんが喉の奥でうなって、それから大きく深呼吸した。
「フィー、このまま赤ちゃんを作る行為をしていい?」
今さらのような気がして、頷く。
ネッドさんは最後までしないつもりでいたのかな。
「それで……。今日、は……さわるのは、控えめにして、もらえるかな……? ちょっと、色々、差し障りがあるから」
「はい……?」
私の返事に、ネッドさんが困ったように笑った。
「今日は、その、二人の特別な夜だから。うんと優しくしたい」
「うんと……」
「そう」
「私……溶けちゃうかもしれませんね。……ネッドさん、私に甘過ぎます」
「フィー」
どちらからともなく、吸い寄せられるように唇が重なった。
ネッドさんの口づけは甘い。
好きだからそう思うのかな。
「ネッド、さん……っ」
ネッドさんの舌がするりと、今度は遠慮なく口内を這い回る。
さっきより激しくて、私はただただ翻弄された。
いつの間にか私の寝間着が脱がされていて、ネッドさんが起き上がってすべてを脱ぎ捨てた。
恥ずかしげもなく全身をさらしているけれど、私はどこを見ていいかわからなくて、毛布を引き上げて、目を伏せる。
「フィー、見えてるの? 目がいいんだね」
ちらりと目を向けると、私を上から見下ろして微笑んでいる。
薄暗くてはっきりと見えるわけじゃないけど、なぜかいつものネッドさんじゃないみたいで。
どうしてそんなふうに感じるんだろう。
「ネッドさん、いつもと違う、みたい、です……」
私の声に不安が混じったのかな。ネッドさんが毛布の下にすべり込んで、そっと抱きしめてくれた。
「んー? 男だからね。フィー、本当は早く丸ごと食べてしまいたいんだ。すっごく我慢してる。……伝わっちゃったのかな、ごめんね。怖い?」
「少しだけ。でも、こうして抱きしめられると、安心します。……素肌で触れ合うのって、気持ちいいんですね……ネッドさん、熱くて、硬くて、私……すごく、どきどきしてます」
そう言うと、ネッドさんの息が耳にかかる。
「フィー……わざとじゃないよね?」
「何がですか?」
「…………」
戸惑う私の耳たぶを喰む。
「ん……っ!」
思いがけない刺激に、私の身体が震えた。
耳孔に舌が差し込まれて、水音が響く。
恥ずかしくてたまらないのに、ネッドさんはやめてくれない。
それに、大きな手が私の身体を撫でる。
「フィー、可愛い」
そう言って一度唇を重ねてから、首筋に舌を這わせた。
少しくすぐったくて、そう思っていると、ちくっと痛みが走った。
「一ヶ所だけで、我慢する」
鎖骨のすぐ下を強く吸われたみたい。
「フィーは、今夜は俺の恋人だから。結婚するまでの間は、恋人として甘やかしたい」
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