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9 めでたしめでたし ※
しおりを挟む「お願い、お願い……っ」
私達の結婚式が終わった夜。
この三ヶ月慣れ親しんだ二人のベッドで、私達は初めて先へと進む。
「もういいの? もう欲しくなっちゃったの?」
ウォードが愉しそうに笑いながら、私の脚のつけ根に指を忍ばせ、ばらばらに動かす。
複数の指が水音を響かせてますます私を煽った。
「ん、欲しい……」
正直、彼が結婚まで待つと思わなかった。
私の部屋は彼の隣で、寝室は一つだけ。
すぐに体をつなげる行為をすると思ったけど、その真似事をするだけで。
「リア、言って」
「…………お願い」
彼が首を横に振る。
「そっちじゃなくて」
「……ウォード、あなたが、欲しい、です」
満面に笑みを浮かべて、私を見下ろした。
彼は私に必要とされるのをことのほか喜ぶ。
もちろん、好きだとこまめに伝えているけど。
「リア、今日は遠慮しないからね」
「うん、いいよ」
そう答えながら、最後までする以外は遠慮なかったような気がするけど、と思う。
でも合意の上で、お互いの愛情を深める行為だったのだから、後悔はない。
ウォードが私の膝の裏に手をかけた。
「全部受け取って」
ずぷりと先端が沈み込み、指とは違う圧迫感に私は、は、っと息を吐く。
ウォードに慣らされた体であっても、それは質量のあるもので驚く。
私を奪うといったあの日より、それを待ち望んでいる自分がいる。
「ウォー、ド……」
ぐぐっと私を押し拡げ、途中で止まる。
今のところ痛みもない。
「リア、この先は指で触れられなかった場所になる」
「ん……っ」
ゆるゆると腰を動かすと、いつも私の頭を真っ白にする場所を先端が何度も擦る。
「あ、あ、……あっ」
「いっぱい気持ちよくなろう。……ここを擦るだけで、もう中がうねっているね。……たまらないな、リア」
浅いところを小刻みに触れられて、お尻のほうまで濡れてきた。
彼の手が二人のつながりに伸ばされる。
「ウォード、あぁっ……!」
不意の刺激に絶頂に押し上げられた次の瞬間、ずぷりと一息に彼に穿たれた。
いきなり、こじ開けられた痛みと、甘い疼きに頭が混乱する。
「っ、リア……!」
彼が大きく私を揺さぶり始めた。
「あ、待って、あ、あっ、……ああっ」
「リア、俺のものだ、俺の、俺だけのっ」
私はひたすら彼から与えられる熱を受け取る。
激しすぎて、痛みしか感じないはずなのに。
私は彼から甘く泣かされた。
「あ、いぃ、……いい! ウォード……!」
「リア、リアッ」
彼が私に覆い被さり、息さえ呑み込むようなキスをした。
上も下もつながって、頭の中は真っ白だし、私の視界には彼しか見えない。
「……んっ、……好き」
心からそう思って。
彼にすがりたくなって、首に腕を回す。
「……リアッ」
ウォードがぶるりと震えると、勢いよく腰を打ちつけ始めた。
「んんっ、ん! ぁん」
私の声と彼の息づかい、肌を打つ音、それから二人のつながりから聞こえる音で頭がいっぱいになる。
「……リアッ」
ウォードにきつく抱きしめられて、彼が初めて私の中で精を放ったのを感じた。
そのまま丁寧な口づけを求められて、心が震える。
「……ウォード、愛している」
「……リア」
彼の目が潤んでいるように見えて、そっと頬に手を伸ばした。
「……この日を待って本当によかった。愛しているよ、リア。俺の初めてから最後まで全てリアに捧げるよ」
ん?
「ウォード……初めて、だったの?」
なんとなく貴族の男の人は経験があるものだと思っていたから驚いた。
ウォードが心外そうな顔をする。
「……リア以外となんて考えたことがない。リアが全てなんだ」
ウォードの瞳がきらりと光った。
なんだろう、嫌な予感がする。
「そう、なんだね……私も、ウォード以外は考えられないから、嬉しい。あの、私、ウォードと結婚できて嬉しい……」
「リア……」
私の言葉にウォードが嬉しそうに笑った。
そして、私の中で存在を主張するように彼自身も動いた……?
「ウォード……?」
「どうした?」
彼が腰を押しつけるようにゆっくり動かした。
「痛む?」
「……少し、だけ。……大丈夫」
私が答えると、また笑みを深めた。
ウォードの笑顔は時々私を不安にさせる。
「じゃあ、もう一度」
「うん」
私はうつ伏せにされて、後ろから突き込まれた。
「あぁっ‼︎」
驚いて声を上げる。
何だか動物みたいで恥ずかしいのに、覆い被さるように抱きしめられると安心した。
「……ッ、これ、好き? リア、そんなに締められるとすぐ終わってしまうよ」
そう言われても、自在に動かせるわけでもなくて。
耳元で小さく息を吐かれて、体が震えた。
「あぁ、リア。すごく、気持ちいいよ……。リアも、気持ちよくなって」
私の体が逃げないように腰を掴んで何度も何度も突き入れた。
「二年分を、取り戻さないとね」
「……二年分?」
「リアが成人してから、結婚するまでの、時間だよ」
そういえば、本当は私が十六歳になったらすぐ結婚するはずだったんだ。
ウォードは私より三つ年上でそれまでずっと、他の女性に手を出すことなく、我慢していたということで。
「リア、一晩じゃ取り戻せないけど……」
「ウォード、いっぱい、しよう」
今夜はできる限り、彼につき合おう。
そう心に決めた。
「じゃあ、もう一度」
「……うん」
三度目の営みは、お互い向かい合ってのゆったりしたものになって。
「じゃあ、もう一度」
「…………うん」
四度目、五度目となる頃には私の頭は朦朧としていて、逆にウォードの目がギラギラしていた。
「……夜が、明けるみたい」
「……眠ろうか」
すぐに私はこくこくと、うなずく。
ウォードだって疲れているはずで、今だって労ってくれて優しい……多分優しい。
優しい、かな。優しいのかな……。
私は彼の上に乗せられて背中を撫でられた。
繋がったままだけど。
「リア、目が覚めたらまた愛させて」
「………………うん。動けたら、ね」
愛し合うのはいやじゃないけど、彼の愛は重い。
姉がさっさと結婚してくれていたら、こんな目に遭わなかったかもしれない。
八つ当たりのような気がしないでもないけど、私はそんなことを思った。
「おやすみ、愛しいリア」
ウォードが私の髪を一筋取って匂いを嗅ぎ、満足げに深く息を吐いた。
息がかかって、くすぐったい。
そんな愛も嬉しいと思っているんだから仕方ない。
大好きな人の腕の中で私はまどろんだ。
終
******
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