姉と妹がそれぞれ婚約者を押しつけてきますが、私の婚約者がおかしくなるのでやめてください!

能登原あめ

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4 私の婚約者はウォード② ※微 

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 ベッドに倒され、私のスカートがまくり上がった。慌てて裾を押さえる。

「待って。私達まだ、結婚してないから、これ以上は」
「もちろん初めては奪わないけど、滞在中に夫婦の営みを少しずつ覚えていこう」

 婚約者として抱きしめ合ったりキスしたりするのは心地よいし、お互いの気持ちも確認できていいけれど、結婚前に夫婦の営みというのが引っかかる。
 
「本当ならもう結婚していたんだ。それに俺はリア以外と結婚するつもりは全くないし、リアを愛しているし、離すつもりはないよ」

 そう言われて、姉が結婚するまで待たせているのはこっちの都合だし、私もウォード以外となんて考えられないのだから……そう納得してしまった。でも。

「……ウォード、みんな昼間からこんなことを? おやすみ前にすることでしょう?」

 私が嫌がらなかったからなのか、ウォードが嬉しそうに笑った。

「もちろん。政略結婚で愛情がない場合は子供をもうけるために夜だけかもしれない。でも、俺達は違うだろう?」
「……うん、好き。ウォード、好き」

 ちょっとドレスの顛末はびっくりしたけど。
 あれはちょっと……好きって気持ちが減ったけど。
 今、大好きって言えなかったくらいには。

「愛してるよ、リア。二人の初めての時は痛くならないように、準備するから」

 確かに母が最初は痛いけど我慢なさいって言った。
 できれば痛みなんか感じたくない。

「わかった。ウォード、お願い。痛いのは嫌なの」

 嬉しそうに私にキスしてから、スカートをまくり上げ、脚のつけ根に触る。

「あまり見られると恥ずかしい……」
「さっき、俺のも見た。今全部脱いで見せ合ったら、恥ずかしくなくなるんじゃないか?」
「それはまだ、今は、だめっ」

 そうか、と言って。
 よりによって脚のつけ根にキスするなんて。

「ウォード⁉︎」
「痛いのは嫌だろ? それに、大声出すと人が来るよ? あぁ、でもその方が結婚が早まっていいかな」

 私は両手で口元を押さえる。
 ドレスがぐちゃぐちゃになっても、ここには、ウォードが着替えを用意してあるんだろうな、とぼんやり考えた。

「リア、頑張って」

 頑張って?
 ウォードが脚のつけ根にたくさんキスして、舌を這わせて私を探る。
 ピクッと震えると、そこばかり舐めたり擦ったりかじったり。

 頭の中が何度も真っ白になって、存在すら知らなかった場所に指の先端が入る。

「……っ!」

 違和感。
 でも、舌がコリっとした突起ばかり舐めたり押し込んだりするから、よくわからなくなる。
 体が汗ばんで、自然と腰が浮いた。

「リア、今日はもう少しだけ」

 もう少しで、終わり?

「……うん。わかった」

 ウォードが指をくにくにと動かす。
 痛みもないけど、指を動かす時に水音が響いて驚いた。
 外側からも突起に触れるから、下半身が熱を持ってどうしようもない。

「リア、可愛い。体を重ねたらもっと気持ちいいんだよ」

 ウォードが私を誘惑する。
 だから、私は彼を見つめたまま頷いた。
 痛みがなかったら、そうなのかもしれない、そう思って。

「結婚、楽しみだね」

 彼の指が突起の裏側をなぞるように触れて、私は目の前が白く弾けた。
 
「あっ……!」

 その後は力の入らない私のドレスを脱がせ、体を清めてくれた。
 とても嬉しそうに。

「俺だけのリア、可愛い」

 新しいドレスを着て、侍女に髪を整えてもらい……誰かに気づかれないかとドキドキしながらも、にぎやかな晩餐に参加することができた。
 
 帰る前日には、スカートをまくり上げて、後ろからウォード自身を太ももの間に挟んで二人で楽しむ方法まで覚えてしまい……。

『本当だったら、私達はもう結婚してた』

 それを合言葉のようにささやき合って、ちっと後ろめたい気持ちを隠しながら私は少し大人になった。







 そういう訳で、姉と妹がとんでもないことを言い出したなんて、ウォードの耳に入れたくない。

 婿取り予定の姉は、社交界にデビューした時に緊張しすぎてダンスで相手を巻き込んで転んだのが、周りで思っていたよりも心の傷になってしまったらしい。

 いやいや出席するパーティで素敵な出会いもなく。
 目立たない伯爵家の婿養子になりたいと申し込まれる縁談はわずかで、それも放蕩息子の厄介払いや女癖の悪い男が姉なら文句を言わないだろうと見下してやってくるものだから、ますます悲観的になってしまった。

 そして、ようやく決まったのが誠実なエイダン様。
 姉が十九歳をわずかに過ぎた頃だった。
 その時私は十七歳になる手前で、ウォードを一年待たせていることになる。

「エイダン様は大人の男って感じて落ち着いていて、お姉様にぴったり。よかった……これで私達の結婚も続けて行えるね」
「大人の男……」

 暗い声で呟くから。

「私はウォードが一番好き」
「俺もだ。リアさえいればいい。……他の男を褒めるのは、嫌だな」
「もう言わない。ウォード大好き」

 彼がちょっと危ういことを言う時は、ぎゅっと抱きしめる。そうすると、たいていは落ち着くけど……そうでない時もある。 

 あれから私の前でドレスに白いものをかけることはなくなったけれど、彼とはすでに私の初めてを奪う以外のことはやり尽くしたような気がした。
 今さら別の相手なんて考えられない。

 妹は婚約者という響きを羨ましがって、ずるい、私も欲しいとか言うから、幼い頃にあっさり隣の伯爵領のチャーリーと婚約が決まったのだけど。



 そして、姉の結婚二週間前にウォードがやって来た。
 このまま結婚式まで我が家で過ごし、一緒に彼の館に移って花嫁修業に入ることになっている。

 なんだろう。
 嫌な予感しかしないのだけど。
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