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7 両陛下の帰還①

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 両陛下が戻り、今回の関係者が王宮に集められた。

「カッシオ、エロイーザ・モリノと結婚し、」
「はい!」
「モリノ子爵家に婿入りせよ」
「は⁉︎ なぜですか、父上!」

 私とジュリオ様までこの場にいるのは、ヴィンチェンツォ殿下の口添えがあったのかも。

「カッシオ」

 話し出したのは眉間にしわを寄せた冷たい表情の妃殿下だった。

「此度の騒動は、そなたの言動のせいで王宮も焼け落ちるところでした。……母は大変がっかりしたのですよ。ステファニアはそなたを善き方へ導くことができる相手だと思い、選びましたのに」

 妃殿下がスゥ、と息を吸って続ける。

「ところで温厚なダンジェロ伯爵家が、剣や盾、防具などを生産し、王宮の騎士団に卸していることはもちろんわかっていますね? さらには天然の硝石しょうせきが採れるのです。…………わかりませんか? 火薬の原料ですよ。王都に近い、そのような地に火を放とうとするなど……はぁ、本当にがっかりだわ。しばらく顔を見せないでちょうだい」

 カッシオ殿下の顔からみるみる血の気がひく。

「え……け、剣についてはわかっていたのですが! 火薬の話なんて聞いたことがありません!」
「授業で習っただろう」

 ヴィンチェンツォ殿下の言葉に、私を含め皆がうなずく。

「……多分、その授業の時だけ体調不良で休んだのかも……?」
「無遅刻無欠席を自慢していたのに? 万一そうだとしても、婚約者の背景について知っておくべきだったな」

 ヴィンチェンツォ殿下の言葉に、目を泳がせ口をパクパクさせる。

「ダンジェロ伯爵に、クレメンテ。領民を静めてくれてありがとう。さすがだな、血の気の荒い者たちが集まっているあの地で」

 陛下の言葉にダンジェロ伯爵が穏やかな笑顔で答える。

「みんな善良ですから、話せばわかってくれるのです」
「……そうか、さすがだ……」

 ほんの少し陛下の顔がひきつっている。
 ダンジェロ伯爵家の領地は鉱山もあるし、体の大きい人も多い。冒険者や傭兵だった――なんて人たちも穏やかに暮らしている。

 すべてを受け入れてくれるダンジェロ家に恩義を感じる人が多いのか自警団の役割が大きく、新しい人が入ってきても統制されているみたい。

 税金は近隣よりほんの少し高いけど、時々伯爵がお酒やパン、干し肉など食料を大盤振る舞いすることもあるというから住みやすいのだと思う。

 クレメンテ様と街を歩いていても、活気があって楽しいし危ないこともない。
 それはすべて、ダンジェロ伯爵家――クレメンテ様も一目置かれているからかも。 

 きっとやり合ってもクレメンテ様なら負けないって知っている。
 
「……さて、ステファニアのこれからのことだが、すでに両家から書状が届いている。ジュリオ・カプトとの婚約を認めよう」

 陛下の宣言に、ピリッとしていた空気が緩む。

「ステファニア、俺のことが好きなのにジュリオと結婚なんて災難だな」

 カッシオ殿下の勘違いに、ステファニアはばっさりと結構ですと答えて。ジュリオ様は見せつけるように彼女の手に口づけを落としてから言った。

「カッシオ殿下、ご心配なく。私たちはお互いを想い合い、過去に婚約直前まで話が進んでおりました。……ですので離れていた分も幸せになります」

「は⁉︎ それじゃあ、まるで俺が割り込んだみたいじゃないか。そうじゃないだろう? ロマンスを捏造ねつぞうしなくていい。嘘をつかなくていいんだ。ステファニアは俺を愛しているが、俺が応えられなかっただけなんだ!」

 認めないカッシオ殿下に、ステファニアが天使の笑顔で答える。

「カッシオ殿下、私たちの間に愛はありませんでした。捏造はおやめください。私はジュリオ様と幸せになります。殿下はエロイーザ嬢とお幸せに」

 それまでずっと黙っていたエロイーザが口を開いた。

「陛下、本当にカッシオ様をいただいていいのですか?」
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