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 本当なら、私達は明日の夜まで会うはずないのに。
 体を重ねてしまったら円満に婚約解消だなんてできるはずない。

 困惑したまま深い口づけを受けて、頭の中がぼんやりする。その隙にガウンも寝間着もするりと床に落とされた。

「待って!」

 恥ずかしさに身を守ろうにも、そのままベッドに投げ出される。
 それからジュリアンの手が下着をずり下ろし、脚の間に体を割り込ませた。
 それはとても手慣れているように思えて私は狼狽うろたえてしまう。

「逃げないで、俺だって痛くしたくない」

 そう言って、すでに潤んでいる秘裂を撫でる。
 くちゅり、と音がして私は息を呑んだ。
 好きな人に抱きしめられキスされて、体が反応している……恥ずかしくなって顔が一気に赤くなる。

「可愛い……イヴは感じやすいのかな? 殿下と結婚しようとするくらいだから、初めてだよね?」

 私を見つめながら指を前後に這わせ、潤みを指にまとわせて開いた。
 貴族の男性は社交界に出る頃に、閨教育を受けるらしい。

 ジュリアンもきっとそうなのだろうけど、これまでが爽やかすぎて想像できなかった。
 欲望を浮かべた瞳に、私は無意識に逃げ場を求めて視線を彷徨さまよわせる。

「ジュリアン、やめて。今ならまだ戻れるわ……」
「戻る? よくわからないよ。イヴは俺の妻になるんだから少し結婚が早まってもいいよね。だって、本当は卒業式の後すぐに結婚する予定だったんだから」

 二週間もすれば、ジュリアンが卒業し物語もヒロインと結ばれエピローグを迎えるはず。でも、そんな未来がこないということ……?

 ジュリアンの指が陰核に触れてゆるゆると撫でるから思わず腰が浮いて私はシーツを掴んだ。
 刺激が強くて息が上がる私に、ジュリアンは楽しそうな笑みを浮かべていて。

「……あっ」

 つぷんと指が浅く侵入し、蜜口の周りに触れて私の反応をみながら指を遊ばせた。
 ちゅくちゅくと音がして、いたずらに動くから私は体を熱くする。

「ねぇ、俺学園で頑張ったんだよ。イヴに認めて欲しくて……あの時、結婚してしまえばよかったね。イヴから望んでくれたのに……。周りなんて気にしなければよかった。あれから頑張れば頑張るほど、イヴが遠くなった気がするんだ。いつから殿下と連絡を取っているの?」

 私のために頑張った?
 でもヒロインは……? 
 特にこの一年の間、二人がどのように過ごしたかはわからない。

 ジュリアンは小説のヒーローで真面目で穏やかで誠実で、こんなことをするはずないのに。
 仄暗い笑みを浮かべて、結婚前の私に手を出そうとするなんておかしい。

「連絡なんてとってないわ。だからやめて」

 ぐっと指が奥まで入り、陰核を皮ごとつままれた。

「ぃあっ……!」

 思わぬ刺激に腰が浮く。
 異物感もあるけれど、相手は好きな人だから快楽に流されそうになって混乱する。

「ちょっと困った顔も可愛いな。イヴ、これからは俺だけを見て。……ここ、気持ちいい? つまむと中がきつくなる」

 ジュリアンの指が内壁を探った。
 ぐにぐにと触れられても違和感しか感じなかったのに陰核と同時に刺激されると体が快感を拾い始める。

「……ん、……あ、あっ」

 こんなことをされてもジュリアンを好きだからなのか、彼が上手だからなのか快楽が積み重なっていく。
 
 熱い。体温が上がって背中が汗ばむ。
 さっきよりも彼の指を濡らしているのがわかるし、水音と私の息遣いが部屋に響いている気がした。
 彼の欲望丸出しの眼差しが、私をさらに追い詰める。

「イヴ、可愛い。もっととろけて」
「ジュリアンッ、だめっ……」

 ふいに陰核を押しつぶされて、私の目の前のもやが、一気に晴れた。

「あぁぁ――……!」

 体が波打ちどくどくと心臓が激しく打つ。
 その時ずぶりと指が増やされ、圧迫感に喘いだ。

「はぁ、あぁっ……」

 収縮する内壁を押し拡げるようにぐちゅぐちゅと音を立てながら動く。

「狭いね。だけど初めてのイヴが気持ちよさそうで嬉しい」

 ジュリアンが片手でボタンを開けてシャツを、それからトラウザースを下着ごと下げて脱ぎ捨て、陰茎を取り出した。
 血管が浮き出たは見たことのない大きさで、エラが大きく張り出して腹につきそうなほど上向いている。

「……っ、無理よ。ジュリアンっ」
「大丈夫だよ、だからこうして準備している。もう一度イヴが気持ちよくなって、わけがわからなくなってから挿れたい」

 笑顔で言うことじゃなくて。
 どこを見て、なんと言ったらいいか困ってジュリアンをひたすら見つめる。

「あの、子どもはまだ……」
「うん、まだ早いよね。俺もしばらくは二人きりで過ごしたい」

 まるで恋人同士か新婚夫婦のような会話。
 でもそれなら、ヒロインの存在は?
 こんなの、勘違いしてしまうのに。
 あぁ、混乱する。

「ジュリアン、私のことが好き?」
「……今さらそれを訊く? 俺は昔からイヴだけが好きだよ。時々迷子みたいな顔をするからどうしてだろうって気になったし、そんなイヴをいつも俺が守りたいって思っていた。……今も思っている」

「俺って言うんだね……」
「それもずっと前からだよ。……イヴの前では頼りになる大人になりたかったから。頼られたいし甘えてほしい」

 でもそれなら。

「図書室で会っていたあの子は?」

 私がヒロインの名前を口にすると、ジュリアンが首を傾げた。
 動揺する様子もないし、悩ましげな顔にもならない……特別な相手じゃないの?

「ただの勉強仲間だよ。俺にはイヴがいるし、お互いの立場上目立ちたくなかった。今度会ってみればわかる」

 そんなことってある?
 ジュリアンが嘘をついていないかじっと見つめる。
 しばらく見つめ合っていたけど、彼が嬉しそうに笑った。

「もしかしてイヴは嫉妬してくれたの? ごめんね? でも嬉しいな……俺ばっかり好きだと思っていたから。俺を疑う必要は神に誓ってない」

 そう言って埋められた指はそのままに、陰核を弾く。

「ひぁッ!」
「あふれてくるね、どろどろ。可愛いな。俺はイヴだけがいればいいんだ。イヴ、絶対に離さないから……だからもっと俺を好きになって。俺しか見ないで」

 内壁が彼の言葉に反応して指を締めつける。
 好きになって、って私はもう――。
 
「幸せにするから、もう殿下は諦めてね」
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