ヒロインの攻略対象は私? 男装の麗人にマッチョな騎士が迫ってくる!

能登原あめ

文字の大きさ
上 下
4 / 9

3 噛み合ってない! ※微

しおりを挟む


 逃げられないように大きな手であごを掴まれて、のぞき込むようなキス。
 重ねるだけじゃなくて濃ゆ~いやつ。

「サムはやめておけ。他に女がいる」
「え⁉︎」
「知らなかったのか……リンが傷つくのは見たくない」
「んう、んんっ」

 サムに彼女がいるって知らなかった!
 言ってくれたらよかったのに。
 しかし1ミリも傷つかん。

 それにしても、なんでこんなに長くキスしてくるの⁇
 
 ベロが! ベロが生き物みたい!
 あっつい、ぬるぬるしてエロくて頭がパンクしそう。

「……深い関係だなんて知らなかった」

 深いって何?
 薄目を開けるとケンさんめっちゃ見てる!

「サムとは昔からの、付き合いで……お互いよく、知ってるから、です」

 父の大親友の子で、何度か遊んで気が合うってわかった後、お互いの両親が立ち会って、困った時は助け合う約束をした。
 
 女の子って打ち明けたのもその時。
 学園で気を抜いている時……着替えとか水かけられそうになったとか、サムはさりげなく守ってくれた。

 すごくいい奴。
 深いって言えば深い関係なのかなぁ。
  
「ふぅん? 全部忘れてしまえ」
「えぇッ⁉︎     イヤです」

 親友だし。
  
「……妬けるな」

 くるりと体の向きを変えられてすっぽり包まれると、小さい女の子になったみたい。
 
 今のケンさんの雰囲気、クマはクマでもはちみつ抱えて哲学的なこと言い出す黄色いアイツみたいだぞ?

 多分、いつもの不機嫌オーラ出してないし殺気もないから、へんな安心感がある!
 
「俺たち、恋人だろう? 忘れてしまえ」

 んん?
 なんか話が噛み合ってないかも!

「ケンさん! あの、先に話を……」
「あとにしてくれ。先にヤッたほうがいいだろ? 早く突っ込んでほしいみたいだし、イキたいって言ってたのはリンだ」

 待って、待って!
 なんかおかしい。
 そんなこと言ったかなぁ⁉︎

 んん? さっきのあれ?
 サムと手合わせしようとして言ったやつ~~!
 意味全然違ーう。

「ケンさん……ッ」

 うなじから髪をかき上げるように大きな手が頭を支える。
 ぞくぞくして、震えたのに気づいたケンさんがもう一度キスした。
 
「ん……」
「可愛い」

 キスしながら腰に添えていた手が背中を撫でる。
 手合わせする時は厳しくて、打ち込まれると重くて手が痺れるし、容赦ない。
 
 気合を入れるようにバチンと背中を叩かれた時なんて、痛くてしばらくジンジンしてた。

 でも今は、大きなクマさんが壊れ物を扱うみたいに優しく触ってきて、ギャップにキュンとする。

 相手はケンさんだよ?
 いつも厳しい兄弟子が私にキスして、欲情している。
 私を相手に……。
 ん?
 
 ケンさんってこれまでずっと彼女がいるって聞いたことない。
 私のこと男って思ってる可能性は……?
 待って、待って、まさかお尻を狙われている⁉︎
 
「ケンさんッ、私……お、女です」

 無理矢理唇を離してそれだけ言うと、めちゃくちゃ甘い顔で笑った。

「知ってる。お前は可愛い」
「はぁう……⁉︎」

 なんか変な声出た!
 普段ゴリラみたいな顔で剣を振り回しているケンさんが。
 
 鍛錬の後も渋い顔のことが多かったし、私がサムと喋っていると騒がしいって感じでよくにらまれた。嫌われてると思っていたくらいで――。

「なんだその声……可愛すぎるだろ」 
 
 甘い! 
 はちみつ1瓶飲んだんじゃない?
 ギャップが大きすぎて、目の前に知らない人がいる!
 実は双子? 双子って言われたら信じる。

「可愛くなんて、ないです」
「いや、可愛い。美人で可愛い」
 
 褒めすぎぃ! こんなの照れちゃうから。
 今だって男装してるのに、素でそんなこと言っちゃうケンさんのほうが可愛いんじゃない?

 いやいや、目の前の大男が可愛いってなんだ。
 いつもお腹を空かせたファンタジーな世界に住むクマと重なる!
 いやいや、それってどうなの⁉︎
 
「せっかく恋人になれたんだ。歩きながら、この後は甘やかすって決めてた」
「え⁉︎」
「驚きすぎだ。恋人を甘やかさないで、誰に優しくするんだ」

 ケンさんが別人!
 笑ってるし!
 これ、誰……?

「えっと、子どもに……?」

 ケンさん、時々子どもたちに泣かれているし。
 迫力あるし、ぷるぷる震えながら子どもたちが挑むのはよく見かける。
 
 強いし気迫がすごいもんね、憧れている子どもたちも多いからもう少し優しく相手してもいいかも!

「……子ども、ほしいのか? まいったな。俺は順番通り段階を踏みたいと思ってた。だが、リンが望むならやぶさかではない」

 え?
 なんか噛み合ってないよ?
 お腹に硬いものがあたってる――!
 携帯食のバナナであってほしい!

「ほかの男なんて、忘れさせてやる」

 ほかの男なんて、いないんだけどぉ⁉︎
 キスしながら手際よく脱がされた。

 なんで?
 なんで?
 
 胸に巻いたサラシをくるくる巻きとり、すくいあげるように覆う。

「ちょうどいい大きさだな。……もう勃ってる」

 指先で弄ぶように、先端に触れるから体が反応して勝手に動く。
 
「んっ♡」
「ここ、好きか?」
「わかんない、です」

 キュってつままれて、また声が出た。

「あ……♡」
「恋人だろ? 普段通りに話せ……好きなとこ、全部見つけてやる。だから3分待て。シャワー浴びてくる」

 今のケンさんなら、友だちに話すみたいに会話しやすい。です、ます疲れるもん。
 
「私も浴びたい……っていうか、ケンさん、ほんとにするの? 私初めてだから、その」

 一応貴族だし、結婚する時処女なのが当たり前の世界。
 今やめないと、戻れない気がする!
 
 いいのか、私。
 今取り返しのつかないこと、しようとしてるぞ?
 
「する、したい。結婚もしたい……サムには尻を使わせていたんだろ?」
「え?」
「そういう令嬢がいるとは聞いたことがある」

 処女を守るため?
 私がサムとお尻で……?

「ええぇ――⁉︎ ない、ない! サムとはそういう関係じゃないッ」

 ケンさんの眉間にしわがよって、めちゃくちゃ怖い顔で考え込んでいる。

「……リン、結婚しよう。18だろ? 先に籍だけでも入れよう」

 ドドン!
 そんな効果音が聞こえた気がする。
 ケンさんはびっくりする私を抱き上げた。
 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

処理中です...