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聖誕祭と希望の冬

あなたと共に歩むために 1

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 目がくらむような光が視界を埋め尽くした。

 暗いところから唐突に明るい場所へと出たような、目の奥が痛くなるような強い光がおさまると、視界が唐突に開けた。

 私はフィオルド様の目の前に、座り込んでいる。

 ドレスも髪も無残に乱れているし、握りしめていた小指の側面からは血が流れているけれど――外に、出られた。

 フィオルド様は私の前に膝をついて、私の体に縋り付くようにしてきつく抱きしめた。


「リリィ……! リリィ、……すまない。私が、お前の傍を離れたりしなければ……」

「フィオルド様……ごめんなさい、私も……何も、できなくて」

「お前は何も悪くない。聖女にだって……本当は、なる必要などなかった。私はお前に重荷ばかりを背負わせて、挙げ句、危険な目に合わせてしまった」


 フィオルド様の声が、掠れて震えている。

 泣いているように思えたけれど、抱きしめられているせいでその顔を見ることができない。

 私はフィオルド様の背中に手を回して、その背中を撫でる。


「大丈夫です、私は、無事で……だから、フィオルド様。……刃を、降ろして。力も、立場も、……人を傷つけるためじゃなくて、守るために、使ってください……」


 フィオルド様の頭上には、未だ無数の氷刃が浮かんでいる。

 レイフィアさんへの怒りは、未だ消えていない。


「お前を失うのなら、立場などいらない。聖剣も、聖女の力も、どうでも良い。私は、なにも欲しくない。お前だけが欲しい。お前だけが、……私の全てだ」

「フィオルド様……私、強くなります、から。自分を守るために、フィオルド様を守るために。……フィオルド様が、フィオルド様でいられるように。だから……もう、終わりにしましょう……?」

「リリィ、お前の両手から血が流れている。許せというのか? お前を傷つけた、あの女を」


 フィオルド様は、力なく首を振った。

 私は甘えるように、フィオルド様の首に頬を寄せる。

 皆の視線が、私たちに注がれているのが分かる。

 固唾を飲んで、成り行きを見守っているようだ。

 フィオルド様の氷刃が降り注いだら、この場にいる方たちも無事ではいられない。

 そんなことにはならないと思うけれど――でも、今のフィオルド様には何をするか分からない危うさのようなものがある。

 たぶん、フィオルド様は私よりもずっと繊細で、沢山考えて、悩んでしまうから。

 だから、その心は苦しみと後悔と、憤りでいっぱいなのだろう。

 いつかの春の日に、フィオルド様の恋人になることができて、季節が移ろい冬になって生誕祭を迎えたこの日まで、私はフィオルド様とずっと、一緒に居た。

 言葉で気持ちを繋げて、体で、更に深いところまで繋がって――何度も、それを繰り返したから。

 私にはフィオルド様の気持ちが理解できるような気がする。

 多分フィオルド様は、自分自身を許すことができないのだろう。

 こうなってしまったのは、レイフィアさんが私を傷つけようとしたのは、全部自分のせいだと思っている筈だ。

 振り上げた氷刃の切っ先は、フィオルド様自身に向かっているような気さえする。


「……許してあげてください。私は大丈夫だから」


 どうしたら、フィオルド様はご自分を許すことができるのだろう。



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