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聖誕祭と希望の冬
幼い悪意 1
しおりを挟む粘ついた黒く長い何かが、私の体に絡みついている。
私は床に座り込んでいた。
私の体はべとつくスライム状の何かに拘束されていて、動くことができない。
せっかくのドレスも、髪も乱れてしまって、ひどい有様になっていた。
(ここは、どこなのかしら……)
周囲の様子を見渡す。
お城のどこかのように見えるけれど、よくわからない。
石造の壁に囲まれた、薄暗い部屋だ。
窓はなくて、小さな魔導ランプの心もとない灯りが周囲を照らしている。どことなく、牢獄のようにも見える。
「……リリアンナ・セフィール」
私の目の前には、少女が一人立っている。
銀の髪に空色の瞳をした、愛らしい少女だ。そして私よりも背が低いのに、胸が大きい。
「レイフィアさん……」
「気安く私の名前を呼ばないで。あなたなんて、大嫌いなんだから!」
レイフィア・バレンタイナさんが私を睨みつけている。
白いスカートがふわりと広がっているドレスは愛らしく、白い肌や髪とも相俟って、雪の妖精のように見える。
けれどその表情は、激しい憤りに歪んでいた。
「本当に、嫌い、大嫌い。あなたなんて、ずっとフィオルド様に嫌われていればよかったのに、捨てられてしまえば良かったのに……!」
「……レイフィアさんは、……フィオルド様のことが好きだったんですよね……」
私は黒い粘液のようなものに体を拘束されたまま、小さな声で言った。
分かりきっていたことだけれど、あらためて激しい感情をぶつけられると、胸が痛んだ。
「ずっと、好きだったのよ。あなたなんかよりも、ずっと、ずっと前から! だから……魔法を使って、あなたが不義を働いている証拠を作ってあげたのに、どうして気づかれてしまったの……? うまくいくはずだったのに」
「変身魔法を使えるのですね、レイフィアさん……」
「ええ。私はあなたよりもよほど優秀だもの。フィオルド様にふさわしい魔力を、私は持っていたのに。それなのに、ただ婚約者というだけで大切にされるなんて。何もせずにただめそめそ泣いているだけの、役立たずのくせに……!」
「……っ」
私は息を飲んだ。
その通りだと、一瞬思ってしまった。
いつも私はフィオルド様に甘えてばかりで、頼ってばかりで。
フィオルド様が私を大切にしてくださるから、守ろうとしてくださるから。
自分一人で、何かを成したことなど何もない。まるで、一人で立つことができない赤子のように。
「何もしないで泣いているだけで、フィオルド様はあなたを可愛がってくれるのでしょうね。良いわよね。婚約者に選ばれただけのくせに。挙句の果てに、聖女ですって? ふざけないで!」
レイフィアさんは、手にしていた黒い杖を私に向ける。
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