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聖誕祭と希望の冬
聖女再臨 1
しおりを挟む私はドロレスに見送られて、フォルトナ様の案内でフィオルド様と共に大広間の奥の控えの間へと入った。
シリウス様とアニスさんと合流して、大広間に続く扉から壇上へと向かった。
白い鳥が二羽左右に羽を降ろしているような形をした玉座にはバルツス皇帝陛下が座っている。
陛下の隣にはアミティ様と、フォルトナ様のお父上であるハルヴァン・アセンド宰相の姿がある。
アミティ様の隣にシリウス様とアニスさんが並び、私とフィオルド様はハルヴァン宰相の隣に、フォルトナ様は私たちの背後へと控えた。
大広間のざわめきが、途端にしんと静まり返る。
貴族の方々の視線が、私たちに向いている。俯きそうになった私は、ドロレスの言葉を思い出して顔を上げた。
大広間には、お母様やお父様の姿もある。普段はお母様は生誕祭には参加されないけれど、今日は私やフィオルド様のために来てくださったのだろう。
アニスさんのお母様も来ていらっしゃるのだろうか。
アザレア様の姿を確認することはできなかった。いつもはいらっしゃっているバレンタイナ家の方々の姿もない。
バレンタイナ公爵家には謹慎を命じたとフィオルド様がおっしゃっていた。謹慎というからには、生誕祭にも参加できないのだろう。
「今日は皆、よく集まってくれた。母なる女神マリアテレシアの生誕を祝う今日この日、皆に嬉しい知らせが二つある」
皇帝陛下が玉座から立ち上がると、よく通る声で言った。
「一つは、我が息子であるシリウスと、レランディア公爵家の長女、アニス・レランディアの婚約が正式に決まった。シリウスはレランディア家の後継となる。オリバーよ、よろしく頼んだ」
貴族たちの中から一人の男性が進み出てきて、恭しく頭を下げる。
オリバー・レランディア様。アニスさんのお父様だ。
アニスさんとシリウス様が手を取り合って軽く会釈をすると、大広間から拍手が湧き上がる。
シリウス様はアニスさんの手を引くと、その手の甲に軽く口付けた。
アニスさんは恥ずかしそうにそれを受け入れていた。それから、大広間に視線を送ってどことなく不安げに表情を曇らせる。
アニスさんは誰かを探しているようだった。
やっぱり、アザレア様はいらっしゃっていないのかしら。
「そして、もう一つ。もう皆もすでに気づいているだろう。先日――この国に、奇跡の光が降り注いだ。それは、聖なる光。この国に潜むすべての魔物の暴虐を鎮めるもの」
陛下の言葉に、拍手が鎮まり、どことなく緊張感のある沈黙が訪れる。
「そう――聖女が、誕生したのだ」
広間のそこここから、ざわめきが起こる。
聖女、という言葉が、ざわめきの中の至る所から聞こえてくる。
私の手のひらに、あたたかいものが触れる。フィオルド様の手のひらだ。
私は、はっとして息を吸い込んだ。
気づかないうちに、呼吸を止めていたらしい。息苦しさが、フィオルド様に手を繋いでいただくだけで、嘘みたいにおさまっていく。
「聖女リリアンナ・セフィール。そして、フィオルド。こちらへ」
陛下に呼ばれて、私たちは陛下の前へと進んだ。
戸惑ったようなざわめきが、大広間から聞こえてくる。
どことなく懐疑的な視線が、私に突き刺さってくる。
けれど、私はできるだけ胸を張って、前を向いた。口元に、微笑みを浮かべることを忘れないように気を付ける。
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