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聖女の魔力と豊穣の秋

アミティ・セントマリアの過去の話 1

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 アミティ様は、レランディア家の出身。

 アニスさんと同じ艶やかな黒髪を一つに結って、質の良い髪飾りをつけている。

 黒いドレスに、白い動物の毛に似たふわりとした肩掛けを羽織っている上品な姿で、私たちの来訪に気づくと、にこりと微笑んでくださった。

 私とアニスさんは挨拶をすると、促されるままに、アミティ様と同じ席に座った。

 侍女の方々が紅茶を用意してくれる。

 紅茶には、小さな花びらのように見える、花砂糖が浮いていた。


「二人とも、いらっしゃい。今日は、呼び出してしまってごめんなさいね。せっかくのドレス選びだったのに、私に呼ばれているとか、落ち着かなかったのではなくて?」


 アミティ様はゆったりした口調で言った。

 お母様は、アザレア様のことは好きではないけれど、アミティ様のことは好きだと言っていた。

 お母様が好きだと言うのだから、優しい方なのではないかと思う。

 それになにより、フィオルド様のお母様なのだから、私もできれば良い関係でありたい。


「それは、多少はそうですよ、叔母上様。お話というのはなんですか?」


 アニスさんがどこか挑むようにして、アミティ様をじっと見据えた。


「そんなに警戒しないで大丈夫よ、アニス。リリアンナ……フィオルドはリリィと呼んでいるのよね。私も呼んでも?」

「は、はい……」


 私は頷いた。アミティ様は目を細めて微笑んだ。その表情は、嬉しそうな時のフィオルド様に少し似ている。


「アニスの大切なリリィを、いじめたりはしないわ。私の可愛い息子たちが選んだあなたたちのことを、私も実の娘のように可愛いと思っているのよ。……それでね」


 アミティ様はどこか遠くを見つめるようにして、視線を薔薇園へと向ける。
 風が赤い薔薇を、さわさわと揺らしている。


「……できれば、仲良くしたいわ。みんなで、ね。だって、私たちはみんな、家族みたいなものだもの。……若いあなたたちに蟠りができてしまったのは、私たち大人のせいよね」


 私とアニスさんは顔を見合わせた。

 アニスさんとは、お母様たちについて何度か話したけれど、結局私たちには関係がないし、どうにもできないという結論に落ち着いている。

 真相は闇の中で、ただ、私の両親は仲が良く、アニスさんの両親の関係性はあまり良くない。

 アニスさんは「お父様は浮気をしているけれど、お母様は気にしていないように見える。でも、お母様は自尊心の塊のような方だから、気にしていない風に装っているだけかもしれない」と言っていた。


「アザレアとリアン様は当事者だから、色々と思うところがあるでしょう。私は、少し離れたところで皆の様子を見ていたから、……部外者といえば部外者。私の口から語るのが、一番良いのではないかと思って」

「今更……とは、思いますが。真相を知ったところで、アザレアお母様が変わるとは思えませんし……」


 アニスさんがため息をつく。


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