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聖女の魔力と豊穣の秋
生誕祭のためのドレス選び 2
しおりを挟む安堵する私を、フィオルド様が何か言いたげな表情でじっと見ている。
私は、はっとして、フィオルド様の手を両手で握った。
「わ、私も、頑張っているフィオルド様を、あとで褒めてさしあげますね……!」
「……ありがとう、リリィ。嬉しいよ」
フィオルド様が目を細めて微笑んでくださるので、私も嬉しくなってにこにこその顔を見上げた。
「兄上、膝枕などしてもらって頭を撫でてもらうと、ここは楽園なのでは? と思うぐらいに、心地よいですよ。後でね、アニス。ドレス、楽しみにしている。もちろん赤だよね。俺の目の色。ね、アニス。アニスと俺の婚約発表会でもあるのだから、もちろん俺の色を身に纏ってくれるんだよね?」
シリウス様がアニスさんの体に手を伸ばして触れようとしながら言う。
アニスさんは嫌そうな顔で逃げ回っている。
「うるさい。しつこい。行ってらっしゃい」
アニスさんはシリウス様を片手で追い払うようにした。
私も名残惜しかったけれど、フィオルド様の手を離した。
「私も、楽しみにしている。リリィ、好きなものを選んで。可愛らしいドレスも、リリィに似合うのではないかと思う」
「はい……!」
フィオルド様は私が可愛いものを好きだと、もう知っているのよね。
似合わないと思って避けてきたけれど、フィオルド様がそうおっしゃってくださるのなら、考えてみても良いのかもしれない。
私とアニスさんは侍女の方々に案内されて、仕立て屋さんの元へと向かった。
それぞれお部屋に案内されて、てきぱきと体の採寸をしてもらう。
以前よりも少しだけ、平坦だった胸が大きくなったような気がする。他はそんなには変わらないみたいだ。
それからアニスさんと一緒に、ドレスのデザインを選んだ。
レースの見本や、生地の見本がたくさんあって、綺麗に並べられているドレスの見本から形を選ぶ。色や形が決まれば、あとはリボンやレースやフリルの量を決めたりとか、アクセサリーと小物を選んだり。
これがなかなか、時間がかかる。
アニスさんはシリウス様の言う通りに、赤いドレスにしていた。
私は、フィオルド様の色を意識した水色のドレスにすることにした。
フリルが多い、ふわりと膨らんだスカートが好きな私だけれど、着たことはあんまりない。
どうしようと悩む私に、アニスさんが「装飾を減らせば、可愛いドレスもそこまで子供っぽくはならないし、リリアンナに似合うと思うわ」と言ってくれた。
アニスさんの意見を参考に、上半身はすっきりとしているけれどスカートは布がたっぷりと多い可愛らしいものを選んだ。
ドレス選びが終わると、私たちは王妃様が待っていらっしゃるというお庭へと向かった。
庭園には、赤と青の薔薇が華やかに咲いている。
冬の近づく気配を孕んだ冷たい風が、頬を撫でる。
春のあたたかさも好きだけれど、冬の冷たさも好きだ。頭がすっきりする感じがする。
庭園には魔導ストーブがいくつか置かれていて、魔法の炎を赤々と灯している。
王妃アミティ様がいらっしゃる広い東屋の中は、風の冷たさから守られていて、とてもあたたかかった。
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