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聖女の魔力と豊穣の秋
生誕祭のためのドレス選び 1
しおりを挟むお城の門の前には、鎧を纏った兵士の方々が並んでいる。
馬車は門を通り過ぎて、謁見の間や、晩餐会などに使われる大広間のあるお城の横を抜けて、さらに奥に向かった。
皇帝陛下が普段お仕事をされているのは二の城と呼ばれている、一番手前にあるお城の奥。
王妃様たちが暮らしているのは、三の城と呼ばれているその更に奥で、皇族の関係者や身分の確かな侍女たちや兵士たち以外は誰も中に入ることができない。
聖都の中央にあるお城の周りには、高い塀が張り巡らされている。
小さな町なら一つぐらいは入ってしまうほどの広い円形の敷地に建っているお城は、歩いて一回りしようと思うと、一日かかりそうなほどだ。
馬車は三の城の城壁の前で一度停まった。三の城の門の前の兵士の方々が、馬車を確認するとすぐに門を開いてくれた。
門から三の城の中へと入った馬車は、お城の前庭で停まった。
少し遅れてアニスさんとシリウス様もやってきた。
シリウス様は観念したような表情で、アニスさんに手を引かれている。フィオルド様に嗜められて「俺は城が嫌いなんですよ、兄上」とうんざりしたように言っていた。
シリウス様も、フィオルド様と同じ光景を幼い頃から見ているのだから、きっと思うところはあるのだろう。
シリウス様は第二皇子。逃げられる立場ではある。フィオルド様に比べてしまえばーーいえ、わからないわね。苦しさなんて、比べることはできないもの。愛情と、同じで。
私たちは連れ立って、三の城へと入った。
「リリィ。シリウスと私は、父上と話が。仕立て屋を呼んでいる。リリィとアニスは、採寸とドレス選びをーーその後、母上から話があるそうだ」
広い回廊に入ると、三の城の侍女の方々が整列して待ってくれていた。
フィオルド様は私の手を両手で握って、気遣うように言った。
私はフィオルド様を見上げて、大丈夫だと頷く。
以前の私なら臆してしまっていただろうけれど、このおよそ一年で、私は少し変わったと思う。
一番大きいのは、フィオルド様に愛していただいて、お祭りで見知らぬ方々と関わりを持って、アニスさんと仲良くなって少しづつ世界が広がって、はじめましての相手を怖がらず、信頼できるようになったことだ。
気兼ねなく誰にでも話しかけるというのはまだ難しいけれど、怯えるということは少なくなった気がする。
「殿下、リリアンナのことは私に任せてください。シリウス様、殿下に迷惑をかけないように」
「いうことを聞いたら、後で俺を褒めてくれる、アニス?」
「はいはい」
いつも通りきびきびしているアニスさんに、シリウス様が甘えたように言った。
アニスさんは肩をすくめながら、適当な返事をしているけれど、満更でもなさそう。
仲が良くて良かった。婚約者に選ばれたばかりの頃は心配していたけれど。
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