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聖女の魔力と豊穣の秋
アニス・レランディアとの和解 2
しおりを挟むアニスさん、私と仲良くしてくれるのかしら。
一応、私とアニスさんも血縁はないけれど、親戚関係ではある。今まで関わりはなかったけれど。
仲良くできたら、それは嬉しい。
三大公爵家と皇家はみんな複雑な親戚関係ではあるのだけれど、同じ年の女性はアニスさんだけだ。
「アニスさん、……親しくしてくれるのですか……?」
「なんでちょっと嬉しそうなのよ。本当はもっと怒って良いところよ。だって、私はずっとあなたのことを悪く言っていたのだから」
「仕方ないと、思います……その、アニスさんのお母様と、私のお母様、私のお父様を奪い合った間柄、のようでしたし。アザレア公爵夫人がお母様を嫌っているのは、無理もないなって……だって、もし、フィオルド様が、別の女性を好きになってしまったら、……私も、悲しいです」
「お嬢様、大丈夫ですよ、お嬢様! 殿下の愛情はお嬢様だけに捧げられているのですから……!」
「うん……そうだと、いいけれど……」
「自信を持ちましょうよ、お嬢様。殿下は、お嬢様を沢山愛してくださっているのではないのですか? 体に散った所有の証が、何よりもそれを示していますけれど」
「……フィオルド様、……お部屋で、朝まで可愛がってくださることもあったし、それから、バルコニーや、お食事の時、も。お風呂とか、お庭でも……けれど、いつも遠慮されているような、気がして。フィオルド様は、そういったことに、積極的ではないのかもしれないし、……私に、魅力が、足りないのかな、って」
「そんないつでもどこでも襲われるような生活を送っているの、リリアンナ……! ちょっとは拒否なさい。庭や、バルコニーや、お風呂……え? お風呂? 一緒に入るの……?」
「は、はい、何度か……」
「何度も!?」
「アニス様、殿下をなんだと思っているんですか。健全な十八歳の青少年ですよ。それは入りますよ、風呂ぐらい。一緒に。ねぇ、お嬢様」
「その、私が、動けなくなってしまうことも、多くて……だから、お風呂に入れてくださって、でも、お風呂でもう一度、可愛がってくださることもあって……本当は、もっと私が、色々頑張れたら、良いのですけれど……」
「……それはもう、獣なのではないかしら。……良かった、婚約者に選ばれたのが、私じゃなくて……」
アニスさんは両手で顔を隠しながら、もごもごと何かを言った。
よく聞こえなかった。
「アニスさん、……でも、他の男性というのは、もっと、積極的では、ないでしょうか……? 私、フィオルド様に遠慮や、我慢をさせているのでは、ないかなって……心配で……!」
ドロレスはいつも私の味方をしてくれるので、客観的な意見を聞きたい。
アニスさんが私と親しくしてくれるのだとしたら、相談しても良いわよね。
そんなに悪い方に見えないもの。できれば私も、仲良くしたい。
お母様たちの過酷がどうであれ、私たちには関係がないって思うもの。
「庭やバルコニーでそういうことをしている時点で、遠慮や我慢とは無縁なのではないかしらね……!」
「甘いですよ、アニス様。庭やバルコニーなどは序の口です。多くの婚約者は、庭やバルコニーで愛を深めるものなのです」
「そ、そうなの? ……え? そうなの?」
「そうですよ。何をおっしゃっているのですか、アニス様。お嬢様をいじめるのに必死で、褥教育が足りないのでは?」
「そんなことはないわよ……! 年齢的に、私が第二皇子のシリウス様と結婚する可能性が高いって、お父様とお母様が言っていたもの。だから、エヴァが色々と教えてくれているわよ」
「どのようなことを?」
「その、……夜、ベッドで一緒に眠るのでしょう? そうしたら、五分ぐらいで終わるって」
「五分……?」
「そうでしょう、リリアンナ」
「五分で一体何ができるというのです。パスタが茹で上がるのだって七分かかるのですよ、アニス様。シリウス様はパスタよりも早いというのですか。パスタが茹で上がる時間で全部終わるとか、逆にすごい」
「意味がよくわからないわ……!」
アニスさんが、助けを求めるように私を見た。
私にもよくわからなかったので、とりあえず、わからなくて大丈夫だと頷いておいた。
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