リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

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セフィール家での休暇と想起の夏

庭園での交わり 1

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 縦横無尽にのびた植物たちが、お屋敷へと続く池の橋も、池も、それからお屋敷の姿も全て隠してしまっている。

 右を向いても左を向いても、そこにあるのは紫陽花の花や緑の葉だけで、青や紫色の紫陽花に囲まれた繭の中にいるようだった。

「まるで、檻だな。美しく神聖な。……お前によく似ている、私の、リリィ」

 小さな神殿のような形をした白い東屋の長椅子の上に、フィオルド様は座っている。

 東屋の柱の隙間から、紫陽花が顔を出している。
 空まで覆う植物の繭の中は、真昼なのに薄暗い。

 繭の中には丸い蛍火のような光が浮かび上がっている。フィオルド様が魔法で作り出した、光玉だ。
 光玉は、花々を幻想的に照らし出している。

「私が、フィオルド様を、先に……閉じ込めてしまった、みたいです、ね」

 私の魔力量はたいしたことがなかったはずで、魔力暴走なんて起こるはずもなかったのに。

 フィオルド様に満たしていただくようになってからだろうか。

 葡萄踏み祭りの時も、今も。
 感情とともに溢れた魔力が、植物たちに伝わっていく。

 ざわざわとざわめきながら成長を続ける植物たちの命は、生命力という輝きに満ちているように感じられる。

「私がお前を閉じ込めたいと思っていたのにな。……このままここで、永遠に繋がっていたいと思ってしまう」

「私も……っ」

 私はフィオルド様の膝の上に向かい合わせでまたがるようにしている。

 フィオルド様のご自身が私の蜜口から奥まで埋まって、先端が胎の奥、指では触れない程の深い部分を押し上げている。

 まるで、そうすることが当たり前のように、私はフィオルド様を受け入れていた。

 溢れる愛しさと激情のまま口付けて、東屋の中でお互いの体に触れ合った。

 いつも一方的に熱を高められるような長い前戯で、私は何度も果ててしまうけれど、今日はそれよりも早く欲しくて、繋がりたくて、その体に抱きついて「欲しい」と強請った。

 ここがどこかなんてもう、どうでもよくて。
 植物の繭の中にはきっと誰も、入ってこれないから。

 私はフィオルド様の首に腕を絡めて、膝立ちになって自分の腰を軽く揺らしている。

 一番気持ち良いところにフィオルド様の昂りの先端が擦れ、ちゅぷりと押し上げられるたびに、背中がゾクゾクして、甘い吐息が漏れた。

「ふぃお、さま……っ、きもちい……?」

 フィオルド様の形をすっかり覚えた私の中は、媚肉のひだが硬くて熱い欲望に絡みつくようにして、きゅうきゅうと収縮している。

 まるで吸い上げるみたいに、最奥の入り口がフィオルド様をもっと奥へと誘っている。


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