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遺跡探索と雪解けの春
帰郷の準備 2
しおりを挟む私はうとうとしながら、お風呂に入れてもらって、体を丁寧に拭いてもらった。
浄化魔法は楽で良いけれど、ふかふかのタオルで体を包まれるのも好き。私は可愛いものが好きなので、レースやリボンでたっぷり飾られたドレスや、やや少女趣味のベッドやドレッサー、ぬいぐるみや、小動物、小物やアクセサリーも好きだし、ふかふかのタオルや肌触りの良いネグリジェも大好きだったりする。
ふかふかのタオルは可愛い。動物のお母さんみたいで可愛い。
「服を、着替えようか。お前の部屋から運ばせた荷物の中から、私が適当に選んだものだが、良いか?」
「……ん」
浴室から寝室に戻って、フィオルド様は私を座り心地の良い一人掛け用の椅子に座らせた。
するりと、足に下着をとおされる。
フィオルド様に捕まりながら立ち上がって、ショーツを履かせていただく。
一人で着替えができるように作られている胸用のランジェリーは、胸の谷間の中央で紐をひいて結ぶ形になっている。胸を覆うだけの造りのものもあれば、コルセットと一体型になっていて、腰までを引き締めるものもある。
私は小さな胸を少しでも大きく見せるために、保持力の高いコルセットと一体型のものを着用している場合が多い。
寄せてあげるのである。けれど、貧弱な私は、寄せてあげるお肉があんまりない。
「……フィオルド様……!」
フィオルド様が選んでくださったのは、胸だけを覆うタイプのランジェリーだった。
コルセット一体型より安価で楽だという理由から、最近流行り出しているものだ。
実を言えば、ものすごく可愛い物が好きな私は、ランジェリーや靴下などといった外には見えない部分の衣服だけは、やたらと可愛いものを収集する癖がある。
半分眠っていた私は、全裸から下着姿になった途端に羞恥心を思い出して、はっきりと覚醒した。
「どうした、リリィ。私は何か、間違えたか?」
フィオルド様の名前を読んだ後、両手で自分の体を隠した私を、フィオルド様が不思議そうに見ている。
私は羞恥心から肌を染めた。
ばっちり見られている。私の趣味の、可愛いランジェリーが、ばっちり日の元へさらされている。
いえ、見られたのははじめてではないのよ。
遺跡で魔物に襲われた時だって、そのあとフィオルド様に助けて頂いた時だって、はじめての夜だって、それから、昨日だって――見られているのよ。下着も見られているし、素肌だって、それよりももっと恥ずかしいところだって、見られている。
けれど、あきらかに私に似合わない、レースとリボンで沢山飾られたランジェリーのみを身に纏った姿というのは、泣きそうになるぐらいに恥ずかしい。
薄ピンクの面積の少ない下着には、濃いめのピンク色のリボンと、白いレースが、ショートケーキみたいにたくさんあしらわれている。
きつめの顔立ちとは真逆の可愛い服の趣味を知られてしまった。どうしよう、似合わないって思われるわよね。私だって理解しているのよ。私のような顔の女は、真っ赤な下着とか、真っ黒な下着とかが似合うって、分かっているのよ。
でも、可愛いものが好きなのよ。どうせ誰にも見られないんだし、良いかと思って、安心していた。
こんな日がくるなんて、思っていなかったもの。
「フィオルド様、私、その、私……」
「リリィ、落ち着いて。……何か、嫌なことをしてしまっただろうか」
「あの、私……っ」
「ゆっくりで良い。……大丈夫、聞いている」
フィオルド様が優しい。
私は一度呼吸を落ち着かせると、椅子の上から立ち上がって、おそるおそる自分の体を隠していた手を退けて、私の姿をフィオルド様に良く見えるようにした。
「……私、昔から、可愛いものが好きで。……ランジェリーは見えないからって、思って、こんなものばかり、あつめていて。……に、似合いませんよね……?」
「…………リリィ」
長い沈黙の後に、押し殺したように名前を呼ばれた。
私は所在なく、自分の体をもう一度抱きしめる。
不意に、体の奥から何か、どろりとした液体が太腿に滴り落ちるのを感じた。
はじめての感覚に、私は目を見開いた。
見開いた瞳から、あまりのことに涙が零れる。
「っ……あ、あ……っ、フィオルド様ぁ……、ごめんなさい……っ、たすけて、……私、こぼし、ちゃ……」
昨夜たっぷりそそいでいただいた残滓が、滴り落ちている。
せっかく綺麗にしていただいたのに、片手で下腹部を押さえてみたけれど、どうしようもなかった。
「……ふぃお、さま」
「……大丈夫だ、リリィ。お前はどんな姿でも愛らしい。……すまない、清めるのを忘れていた。……というのは、嘘で、わざと残していた。……それは、私のせいだ。今、綺麗にする」
フィオルド様は私の手の上から、そっとご自分の手を添えた。
浄化魔法がかけられるのがわかる。
いつもは温かさだけ感じて、すぐに終わる浄化魔法なのに、今日は様子が変だった。
まるで、蛇のようなうねるものが、私の中に入り込んで、蜜をじゅるじゅると吸っているような感覚に襲われる。
「あ、あぅ……っ、ふぃおさま、おく、あついの……っ、あぁ、だめ、なか、まりょくで、いっぱいで……ゃ、あ、あ……っ」
私はフィオルド様の腕に縋りつくようにして、がくがくと腰を揺らした。
――魔力の奔流に、体の中を犯されているみたい。
息つく間もなく激しい快楽が体中を暴れまわって、ただ首を振って、震えることしかできない。
「……リリィ、すまない。先に、謝っておく」
限界だと、フィオルド様は唸るようにして呟いた。
そうして私は、再びベッドの上にやや乱暴に押し倒されたのだった。
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