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遺跡探索と雪解けの春

 陥落する心 2

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 悪女顔にうまれてしまった私だけれど、実を言えば可愛いものが大好きだ。

 可愛い服も好きだし、雑貨も好きだし、ぬいぐるみも大好きだし、動物も好き。リボンやフリルやピンク色が好き。似合わないけど。

 似合わないせいか余計に、可愛いに対して憧れのようなものがあった。

 けれど、一生誰にも言われないだろうなと思って、諦めていた。

 それなのに、フィオルド様が可愛いと、言ってくれた。
 嬉しい。こんな情けなくて淫らな姿を晒しているのに。

「美しい金の髪も、翡翠のような大きな瞳も、小さな唇も、触れると壊れてしまいそうなぐらいに細い体も、全て愛らしい。リリィ、……私のリリィ」

「フィオルド様ぁ……」

 愛の言葉の嵐に、私の心は簡単に陥落した。堅牢なはずだった心の檻なんて、そんなもの最初からなかったかのように、錆びて崩れ落ちてしまった。

 フィオルド様のものです。私の心も体も、全部、私のようなミジンコでよければ、どうぞお好きになさってください……! という気持ちでいっぱいだ。
 嬉しくて、切なくて、涙がこぼれ落ちる。私の目尻に、フィオルド様は口付けた。

 目尻に溜まった涙を啜り、そのままもう一度唇を合わせる。
 胸の頂を、指でつままれる。強弱をつけながらしごかれて、絡めた舌もこすられると、脳髄が痺れるような快楽が私の体を支配した。

「ん、んん、んぅぅ」

 口付けとはこんなに淫らなものだったのだろうか。
 想像したことはあるけれど、私の想像の中のそれとはまるで違う。

 口付けの狭間に聞こえるフィオルド様の吐息が艶やかで、深く唇が重なる度に私を求めて下さっている気がするのが嬉しい。
 
「ん……んん……っ」

 震える体を、フィオルド様がきつく抱きしめてくださる。
 酸欠のせいか、快楽のせいか、意識が白く濁る。

 私の舌を味わうようにして絡めていたフィオルド様のそれが、そっと離れていく。

 舌を唾液の糸がつないでいるのが、なんだかとてもはしたないように思える。

「リリィ、少し、落ち着いたか。……体温を上げて、欲望を発散すれば、媚薬の効果は薄れると言われている。実際試したことはないが……」

 僅かに頬を上気させて呼吸を乱しながら、フィオルド様が私に尋ねる。

 いつもきっちり整えられていて隙のない制服や髪が乱れているのが、見てはいけないものを見てしまっているような気がして、落ち着かない気持ちになる。

 体も、未だ落ちつかない。

 途中から色んなことがどうでも良くなってしまった気がするけれど、フィオルド様は私を助けようとしてくれているのよね。
 それなのに、気持ちよくなってしまっているのが申し訳なくて、死にたいぐらいに恥ずかしい。

「ごめん、なさい……フィオルド様、まだ、私……」

「リリィ、謝るな。大丈夫だ」

「気持ち良いのに、まだ足りなくて、私……っ」

 私は自分の膝頭を擦り合わせた。
 下着が何故だかどろどろになっている。足の間が、ずっと切ない。どうして良いのかわからない。

「……冷静になれ、私。あぁ、くそ、これも、血なのか?」

 フィオルド様は忌々しそうにそう言った後、ばさりと制服の上着を脱いで、床に敷いた。
 そこに私を横たえると、邪魔そうに制服のリボンを解いて床に落とした。

 しっかりと骨の浮き出た首筋と、鎖骨が露わになる。

 私は何が起こるのかわからずに、何を言っていいのかもわからずに、熱が暴虐に渦巻いている自分の体を抱きしめる。自分の体なのに、まるで、自分のものではないみたいだ。

 フィオルド様が私のスカートを捲り、足と下着を露わにさせる。あまりのことに私は俯いた。

「ぃや、見ない、でくださ……っ、ぬれて、るから……私、ごめんなさ……」

「これは、快楽を感じると滴る愛液というものだ、リリィ。気に病む必要はない。……むしろ、私はお前を悦ばせることができて嬉しい」

「あい、えき……?」

「もう少し、気持ち良くなろうか、リリィ。案ずるな、最後まではしない」

 最後まで、とは何かしら。
 わからないことばかりだ。

 フィオルド様は、私の趣味に走ったフリルの多い可愛らしい下着を、するりと脱がした。
 下着のクロッチが、溢れた液体で糸を引いている。

「っ、あ……ゃだぁ」

 誰にも見られたことのない場所を、フィオルド様が見ている。見られていると思うだけで体が沸騰するぐらいあつくて、とろりと体の奥から愛液がこぼれてあふれてくる。

 恥ずかしくて、どうしようもなくて、私はぎゅっと目を閉じた。



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