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遺跡探索と雪解けの春
不機嫌な婚約者と行く古の遺跡探索 2
しおりを挟む足元を、ずるずると何かが這いまわっているような恐ろしい感覚がある。
視線を落とすと、小部屋の床がどういうわけか、透明ゼリーのようなぷるぷるしたスライムの海へ変わっていた。
「ひ……っ」
こんな時でも声が出ないとか、どれだけ声帯がお留守なのよ私。
私がするべきは、フィオルド様に助けを求めることである。
もしくは、自分でスライムを退治するか、二つに一つだ。
けれど悲しいかな、私の使える魔法というのは、とってもがっかりというか、しょんぼりというか。
私ができることとは、植物の発育を促すことぐらい。
スライムの発育を促したらどうなるのかしらね。大きく育つのかしら。
けれど、助けを求めるために大声を出すことができない私は、一か八か足元のスライムにむけて魔力を放ってみた。
「あわわわ……」
結果、全然駄目でした。
私の手の平から零れた水の雫のような魔力を吸収したスライムさんは、さきほどよりもずっと元気に育ち始めている。
完全に余計なことをしたわね。
足元を海のように満たしていた透明なスライムが、意思を持ったようにぐにゃりと鎌首を擡げる。
ぷるぷるとしたスライムの先端が、私を包み込むようにぬめっと覆いかぶさってきた。
「ひゃん!」
スライムに包まれて、バランスを崩して座り込む私は、全身スライム塗れである。
うまれてはじめてスライムにつつまれているけれど、ぷるぷるしたゼリーの海を泳いでいるようで、思ったよりは悪くない。
けれど――もしかして、この魔物は、私を溶かして捕食するつもりなのかしら。
溶解液にとかされて骸骨になる自分の姿を想像して、私は青ざめた。
「っ、ゃ、なに、これぇ……っ」
服の下に、じゅるじゅるとスライムが入り込んでくる。
服は溶かさないタイプのスライムなのかしら。布は食べられないし、効率を重視するタイプなのかもしれないわね。
私に覆いかぶさっていたスライムが形をかえていく。
何本もの腕のようなものが、本体からはえてくる。
太い物や長い物、様々だ。
そのぷるぷるした腕の先端が、器用に私の制服をめくり上げた。
ぺろんと、腹や胸が露わになる。
隠そうとしたけれど、両手も両足も押さえつけられているために身動きがとれない。
「やだ、やだ……っ、離して、離してください……っ」
久々に、声が出た。
人間、ピンチになると大きな声が出るのね。なんて感心してる場合じゃなかった。
スライムさんは私の肌の上を這いまわっている。溶かす前に味見をするタイプのスライムなのかしら。
私が若い女かどうか調べてるとか。捕食するべきかどうか、考えているとか。
スライムにも、美味しいとか美味しくないとかあるわよね、きっと。
だって、フィオルド様はあっさり通り過ぎたもの。男性は美味しくないのかもしれない。
「ゃぁ……っ」
ぴりりとした、なんとも言えない感覚が、体を走った。
スライムの腕のようなものが、私のあんまり大きくない胸を先端でぬるりと包み込んで、じゅ、と吸っている。
うう、気持ち悪い。気持ち悪いのに、腰のあたりがぞわぞわする。
フィオルド様に助けを求めなくて良かった。こんな姿はとても見せられない。
どうにか一人でなんとかしないと。逃げられるかしら。でも、どうやって。
「……っ、ふぅ、う」
じゅるじゅると、胸の飾りが吸われて、いる。
何本もの小さな柔らかい突起が、私の胸に絡みついているようだ。
薄い腹や腰、臍を、ぬるぬるのスライムがまるで慈しむように這いまわっている。
誰にも触られたことがないのに、気持ち悪いのに、気持ち良い。
「――――っ」
執拗に胸をいたぶられながら、スライムは私の足を大きく開かせた。
内腿を、ぬるぬると粘着質でぷるぷるしたものが這っていく。
それは――もっと奥を目指しているようだ。
「いやぁ……っ」
食べるなら一思いに食べて欲しいのよ。
どうして気持ち良くなっちゃうの、私の体。気持ち悪い筈よね。
気持ち悪くて逃げたいのに、全身を甘い痺れが走っていく。こんな感覚は初めてだ。
いったい、どうして。
「……永久に凍れ」
短い詠唱のあとスライムが一気に氷漬けにされて、ぱりんと軽い音を立てながら、崩壊していった。
制服を乱しに乱した私は、床の上で呆然としながら、それはもう不機嫌な表情のフィオルド様を唖然と見上げた。
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