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リュシアンお姉様(仮)
しおりを挟むジョルジュお姉様のおかげでお洗濯もすぐに終わってしまった私は、それならお掃除をすませてしまおうと、掃除道具置き場に行った。
物置を開けるとそこにはすでにリュシアンお兄様がいた。
リュシアンお姉様は今日も裾が短い青いワンピースに白いエプロンを身につけている。
「ラシェル、おはよう。どうしたの、朝から物置に用事?」
「リュシアンお姉様、おはようございます。掃除をしようと思いまして」
「掃除ならもう終わったよ。ラシェル、掃除は僕の仕事にしようと思う。僕は掃除や整理整頓が好きだからね」
「で、でも、掃除は私の仕事で……」
「今までずっと一人で頑張ってきたんだろう? 昼間は仕事があるけれど、朝と夜は時間があるから僕も家事の手伝いをするよ。僕たちは家族だからね」
リュシアンお姉様がにこやかに言った。
私は困り果てて、眉を寄せる。
「ファブリスお母様はお食事を作ってくださって、ジョルジュお姉様はお洗濯を、リュシアンお姉様はお掃除をして下さると言いました。それでは、私の仕事が何もなくなってしまいます……」
「ラシェルは、母が病に倒れた十五歳の頃から、十七歳の今までずっと一人で看病と家事を全てこなしてきたんだろう? 年頃の女の子らしく、好きなことをすれば良いのではないかな。そうだね、勉強をしたいなら、僕が教えてあげよう」
「それはとっても嬉しいですけれど、お仕事の邪魔になるのではないでしょうか……お姉様は、お仕事は何をしているのですか?」
「宮廷魔導士だよ。といっても、どちらかといえば学問がメインだけれどね」
「宮廷魔導士……!」
私はびっくりして、リュシアンお姉様の顔をまじまじと見つめた。
この国には、魔法が使える魔導士と呼ばれる方々がいる。けれど、その数はとても少ない。
その魔導士の中でも、お城務めができる宮廷魔導士というのは、指で数えられる程度の人数しかいない。
「安心して、ラシェル。僕の稼ぎは全てラシェルに渡すから。ここに住まわせてもらっている以上、迷惑はかけたくないからね。僕たちは、家族なのだから」
「そ、それは困ります……それなら私も働いて、お金を稼ぎます……!」
「ラシェルはそんなことはしなくて良いよ。僕たちがいるのだから」
「それはいけません。お姉様、次からは私も掃除を一緒に手伝いますね、それから、お姉様たちの新しいお洋服を作りますね……! お姉様たちのお洋服、とても素敵ですけれど、サイズが少しあっていない気がして……私、縫い物は得意なので……ご迷惑じゃなければ、ですけれど」
「迷惑などではないよ。ありがとう、ラシェル」
リュシアンお姉様は優しく微笑むと、私の頭を撫でてくれた。
それは大きくてしっかりした、とても安心できる手のひらだった。
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